国内起債市場を斬る 起債評価:5/20~5/24

3月決算の発表が峠を越え、起債が本格化している。社債に限っても、募集した業種は、ノンバンク、鉄鋼、電力、ガラス、銀行劣後、化学、陸運と幅広い。前週ほど、年限が超長期に偏っていないのは、こうした業種の特性によるものである。それでも、超長期債を募集したのは、中国電力20年債、東北電力16年債、北陸電力20年債と電力債が目立つものの、三菱ケミカルホールディングスも20年債及び30年債を募集している。東北電力の16年債は、時々見られる半端年限の起債である。もっとも、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債では、他の定例募集年限と重ならないように設定されるので、端数年限は珍しくない。そもそも15年債にしても、新発国債の年限でないことから、端数年限と言っても良いのであるが。

電力の20年債では0.6%クーポンといった利回りしか出ないのであるが、三菱ケミカルホールディングスの社債では、20年債で0.83%、30年債で1.214%といった高いクーポンになっている。電力債には依然として格付対比で厚めのスプレッドが乗る傾向にあるが、三菱ケミカルホールディングスの場合には、格付けがA(R&I)格及びA+(JCR)格といった水準で、超長期年限の与信に対する慎重な姿勢も確認される。その一方で、三菱ケミカルホールディングスの30年債は80億円に発行額が増額されており、絶対水準を求める投資家が多いことも否定できない。

ノンバンクやメーカーの起債では、3年債や5年債といった中期債の募集も見られる。同年限の国債がマイナス利回りになっている中では、目線の設定が難しいものの、イオンフィナンシャルサービスは3年債が0.23%、5年債が0.35%のクーポン設定となっている。JFEホールディングスの5年債0.17%クーポンと比べると、格付けが1~2ノッチ低いこともあって、高めの利回りになっている。

なお、財投機関債等公共セクターの募集も多く、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく11年債及び21年債や、中日本高速道路の5年債、日本高速道路保有・債務返済機構の30年債、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の5年債・10年債・15年債・30年債、日本学生支援機構の2年債といった顔触れである。中でも、4年限にわたった鉄道建設・運輸施設整備支援機構債は、CBIから認証(国内で初めて低炭素経済に向けた大規模投資を促進する国際NGOであるCBI:Climate Bonds Initiativeからの認証)を得たサステイナビリティボンド(調達された資金が環境改善及び社会課題の解決に資する事業に充当される債券)となっている。ESG投資を意識する投資家には、良いアピールポイントである。

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