国内起債市場を斬る 起債評価:6/10~6/14

週後半の木曜日と金曜日に債券の募集がほとんど集中している。しかも、今月に入ってから、金利の低下が顕著であり、社債等の一般債でも、10年債でクーポンが0.1%を下回る物があり、更には、0.333%クーポンで20年債か!といった水準の募集も見られている。

今月の10年債を見ると、福祉医療機構の0.075%クーポンが0.1%を下回った最初だろうか。なお、地方債では、4月から10年債の0.1%割れが散見されている。5月は、地方公共団体金融機構や住宅金融支援機構の10年債が、まだ、0.115%とか0.125%とかのクーポンで募集されていたのである。ところが、6月に入って、続く沖縄振興開発金融公庫は0.064%クーポン、地方公共団体金融機構は0.049%クーポン、住宅金融支援機構と国際協力機構は0.059%クーポンで募集されている。国債対比スプレッドは+17bpsとか+18bpsと説明されているのであるが、10年国債のマイナス利回りの定着が確認されるのである。

10年国債のマイナス利回りが定着したこともあって、10年物の債券募集で国債対比のプライシングではなく、絶対値ベースのプライシングの行われる例が見られる。日本特殊陶業はR&IのA+格及びJCRのAA-格を有するメーカーであるが、この週に募集した5年債200億円と10年債100億円は、揃って絶対値ベースでのプライシングとなっている。10年国債の利回りがマイナス水準を継続するならば、7月に起債市場が盛り上がった際に、10年債以上の年限で利回りの絶対水準に基づくプライシングが増えるのかもしれない。

もう一つの現象として、超長期の端数年限での募集が増加している。これは国債対比プライシングが行われなくなって絶対利回りでプライシングされるならば、国債の募集年限と、債券の募集年限を合わせなくても良いという発想からである。もっとも、超長期年限で時々見られる15年債では、対応する年限の新発国債がないために、既発の20年国債の残存15年ものの流通利回りを基にプライシングされている。実際に、この週に募集された相鉄ホールディングスの15年債は、国債対比+51bpsのスプレッドプライシングによって0.619%クーポンでの募集となっている。この週では、北陸電力が17年債100億円を募集している。前週には九州電力が18年債150億円を募集、前月も東北電力の16年債200億円が募集されている。地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債では、定例募集年限と重ならないようにするため、端数年限での募集が一般的である。国債利回りの水準次第では、こうした端数年限での募集に対する市場の見方に変化が出て来るかもしれない。

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