国内起債市場を斬る 起債評価:7/8~7/12

米FRBの利下げが必至とされる中、日本の国債利回りは10年がマイナス水準に定着しており、20年ですら0.2%台となっている。そのため、国債利回り対比でのスプレッドプライシングが、見られなくなっている。元来絶対値ベースでのプライシングを行って来た発行体ではなく、ほとんどの発行体が10年債の値決めに際して、国債利回りを用いなくなっているのである。この週に募集された10年債のうち、絶対値ベースでプライシングされたと見られるものが、日清製粉グループ、住宅金融支援機構、地方公共団体金融機構、芙蓉総合リース、オリエントコーポレーション、王子ホールディングス、大日本印刷、セイコーエプソン、長谷工コーポレーションとすべてが絶対値ベースであったようだ。

10年債は国債利回りがマイナス水準となっているために、スプレッドが大きくなってしまうのに対し、20年債は国債利回りがマイナスになっていないのだが、20年債の値決めでスプレッドプライシングが行われなくなりつつある懸念が感じられる。加えて、15年債も国債利回り対比でのプライシングが行われなっているようである。この週の募集状況を見ると、15年債はダイビルのみが募集されており、絶対値ベースでプライシングされたようである。20年債で、国債対比のスプレッドプライシングが行われたのは、住宅金融支援機構と地方公共団体金融支援機構の2つのみで、民間で社債を募集した日清製粉グループ、ダイビル、王子ホールディングス、東武鉄道とすべてが絶対値ベースでのプライシングであったようだ。

今後、金利が上昇しない場合、公共セクターが国債対比のスプレッドプライシングを維持するのか、地方債も含めて、動向を注目しておきたい。金利が低水準にいるため、超長期債の募集が続出する可能性はあるものの、起債観測で具体的に上がっているものは、10年債以下の年限が多い。電力や鉄道、ガスといった超長期債の募集が多いセクターの動きが注目されるところである。

足元では、グリーンボンドやサステイナビリティボンドの募集が相次いでいる。中でも、商船三井は機関投資家向けに4年債と6年債を募集し、個人向けに同じクーポンで6年債を条件決定しており、いずれもサステイナビリティボンドの認証を得ている。個人投資家の中でも、いわゆる“意識高い”系の人には、強くアピールするのではなかろうか。評価の理由には、SOx排出抑制等が挙げられているものの、そもそもが化石エネルギー燃料を用いて船舶を運行する海運業者である。排出抑制等の取組みは評価できるが、果たして適正なものなのだろうか。起債に際して信用格付けと同じ格付会社から認証を得ているのは、格付会社内部でウォールが設置されていると説明されるが、果たして適切なのだろうか。利益相反の可能性がないことを、明確に開示して欲しいものだ。

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