国内起債市場を斬る 起債評価:7/15~7/19

欧米先進国の金利低下が進んでいる。特に、注目されている米独のみならず、スペインやイタリアといったユーロ周辺国の金利低下が著しい。財政問題の懸念から金利にプレミアムが乗っていたのは、既に過去の話になりつつあるのかもしれない。日本の国債利回りも10年のマイナス水準が継続し、当面、先高感は発現しそうにない。結果として、引続き、10年債に関しては、絶対水準ベースでのプライシングが主流となっている。国債対比でプライシングされたのは、九州電力くらいなものである。

この週の起債では、ノンバンクとメーカーが目立ったか。一方で、金利水準の低下を受けて、BBB+格の社債募集が相次いでいる。明電舎は5年のグリーンボンドを60億円募集し、古河電工は10年債を100億円、日東紡績は5年債50億円及び10年債50億円の計100億円を募集している。BBB+格の社債は代表的な債券市場インデックスであるNOMURA BPI総合の対象外となるために、購入対象にする投資家は限られる可能性がある。もっとも金利水準が低いために、明電舎の5年債でクーポンは0.26%、日東紡績の5年債は0.24%といった水準であり、10年債を見ても、古河電工と日東紡績が同じ0.44%クーポンとなっている。そもそもBBB+格の社債で10年という年限を長いと感じる投資家も少なくないだろう。それでも、金利水準が低下する中では、年限を伸ばすか、クレジットリスクを取るか、その両方を狙うか、といった取組みが求められる。更には、円建て債券の投資を諦めるという選択肢すらあるのかもしれない。

サントリーホールディングスが募集した劣後債は、60年債であるが、5年経過以降から期限前償還が可能となる。しかも、当初5年のクーポンは、0.39%に固定されているが、期限前償還されなかった場合、その次の5年間は6ヶ月ユーロ円ライボー+47bps、次の15年間は6ヶ月ユーロ円ライボー+72bpsとステップアップし、残りの35年間は6ヶ月ユーロ円ライボー+147bpsと大幅にクーポンが上昇する仕組みとなっている。普通に考えれば、償還しない場合の利回り上昇を考えると、期限前償還を選択すると考えられるが、業況が変化して、スキップすることがあり得るかもしれない。発行体から見ると、期限前償還すれば5年債の調達で、格付け等の評価に際して資本性を認めてもらえる。劣後性プレミアムが乗る分、利回りが高いため、投資家にもメリットがあるとされるが、決して全ステークホルダーにとってwin-winな訳ではない。高い利回りということは、高い利息を支払っているのであるから、株主の利益を損なう可能性があるというのは、当然の理屈なのである。

コメントは受け付けていません。