国内起債市場を斬る 起債評価:9/30~10/4

下期入りした起債市場は、月初めの10年長期国債の入札を経て、3日(木)から社債等の条件決定と、募集が始まっている。その木曜日にいきなり、ジャックスが3本立て計400億円を募集し、東京電力パワーグリッドは同じ3本立てで計2,000億円と巨額の募集を行っている。決して金利の先高感はなく、むしろ先行きの金利について日銀によるマイナス金利の深掘りを見込む市場参加者が多い中では、発行体側に慌てて起債するインセンティブは乏しい。逆に、金利低下を見込んだ投資家側には購入ニーズがあると見るべきだろう。もっとも、近年の市場環境では、社債等の潰れたスプレッドと日銀による低金利政策から、社債等の購入意欲を減退させている投資家も少なくないだろう。下期入りした時点での運用資金の消化ニーズと見るべきかも知れない。

近年の社債等は金曜日に募集される案件が多い。週の初めを避けて、曜日の兼ね合いから結果的に金曜日に集中する傾向が顕著なのだが、もう少し曜日を分散した方が投資家にとっても引受証券にとってもメリットあると考えられる。実際には、既にクーポンや発行額等かなりの条件が前日までに決まっており、条件決定の当日は、単なる儀式に過ぎないために、案件が集中しても支障ないと見るのであろう。実際、金曜日に3本立て1,000億円の社債を募集したソニーについては、既に前日の段階でクーポンも募集金額も仮決めされており、当日は単なる確認でしかなかったのは事実だ。現実、募集当日の起債環境に大きな変化がなければ、このように前日までに、実際的な募集行為がほぼ終了していることは珍しくない。

この週は、上半期頭の起債ということで、やや高格付けの案件が集中したように見える。ソニーこそ現在の格付けはR&IのA格及びJCRのA+格と必ずしも高格付けではないが、かつて有力な引受証券群を傅かせていた強固さは、発行金額の大きさに表れている。その他に、7年債と10年債各150億円を募集したダイキン工業はAA-(R&I)格及びAA(JCR)格を取得しているし、3年債200億円及び5年債100億円を募集したリコーリースはJCRのAA-格と高水準の格付けを取得している。首都高速道路5年債400億円、日本政策投資銀行の3年債・5年債10年債・30年債の4本立て計900億円といった公共セクターも大型起債である。

電力債の格付けは必ずしも回復していないが、A(R&I)格の北海道電力は10年債100億円を募集し、A+(R&I)格及びAA(JCR)格の中国電力は10年債200億円を募集している。これら以外にも、A(R&I)格のニッコンホールディングスが10年債100億円、A-(R&I)格のセガサミーホールディングスが10年債100億円、同じくA-(R&I)格の新生銀行が3年債100億円及び5年債200億円を募集している。この後も様々な業態の起債観測が数多くつ上がってきており、下期の起債市場は、当面、活況な展開になりそうである。

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