国内起債市場を斬る 起債評価:1/6~1/10

2020年最初の週の起債市場は、個人投資家向けの鉄道社債と、財投機関債で幕開けとなった。個人投資家向けの社債発行体は、東武鉄道と小田急電鉄でいずれも3年債を条件決定している。東武鉄道債には「東武スカイツリーボンド」という愛称が付され、小田急電鉄債には「小田急箱根ゆけむりボンド」という愛称が付されている。いずれも抽選で購入者に景品が当たる仕組みとなっており、投資家の購入意欲を促進する働きがある。もっとも東武鉄道債のクーポンが0.15%で、小田急電鉄債のクーポンが0.1%と、両銘柄ともマイナス金利を大きく上回る水準になっており、利率の面では十分投資妙味があるとも言える。何れも申込期間は1月30日までであり、購入単位の100万円が障害にならない資産家にとっては。絶好の投資機会であろう。

残りの財投機関債は二つの発行体が条件決定している。一つは住宅金融支援機構であり、10年債と20年債各100億円ずつを募集している。R&IのAA+格とS&PのA+格という、いずれも日本国債と同水準の格付けを取得しており、トヨタ自動車等を除けば、日本国内で最高の格付けを取得している発行体と言って良いだろう。10年債は0.155%クーポンで国債対比+15.5bpsのスプレッドであった。つまり、参照国債の利回りは0%だったという計算になる。20年債の利回りは0.35%クーポンで、国債対比のスプレッドは+5.5bpsであった。

もう一つの財投機関は、日本政策投資銀行である。株式会社形態であるために、投資家側の自己資本比率規制によって劣位する可能性があり、格付会社の評価も、JCRのAAA格とムーディーズのA1格は日本国債と同等であるが、住宅金融支援機構が格付けを取得しているR&IではAA格、S&PではA格と1ノッチずつ低い水準となっている。今回募集したのは、3年債100億円、5年債200億円、10年債200億円の計500億円である。3年債は0.001%クーポンで発行単価が100.003円のオーバーパーであり、単利利回りは0%となる。5年債のクーポンは、0.005%である。10年債は0.155%クーポンで国債対比+15.5bpsのスプレッドであった。つまり、一部の格付会社による評価では1ノッチ下回るが、同日に募集された住宅金融支援機構の10年債と同じ利回りになっている。

なお、昨年末に公表された令和2年度の財投機関債発行計画では、久しぶりに中日本・東日本・西日本の高速道路会社3社が財投機関債を発行する計画であり、一方、新関西国際空港と中部国際空港が財投機関債の発行体から外れる計画であることが公表されている。来年度は、財投機関債の顔触れに変化が見られることになりそうだ。

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