国内起債市場を斬る 起債評価:2/10~2/14

相変わらず社債等の募集は少ない。決算発表に絡む時期であるという季節的な要因に加えて、火曜日が建国記念の祝日であったため、募集に動ける営業日が多くない。週末の金曜日に多数の条件決定と募集に動くのは、次の週以降になりそうだ。この週に募集された民間企業の社債は、日本土地建物の5年債と10年債計150億円のみであった。

今年度中に社債等を募集できる期間は、後1か月ばかりである。そのため、条件決定に向けた動きは多数確認されている。募集の直前に動き出す銘柄も少なからずあると考えられるが、既に起債観測の上がっている銘柄は少なくない。大まかに見ると、幾つかの傾向があるようだ。一つには、グリーンボンドやソーシャルボンド、サステナビリティボンド等のいわゆるSDGs債である。東北電力、三井倉庫ホールディングス、学研ホールディングス、鹿島、国際協力機構などの募集に向けた動きが観測される。SDGs債の多くが5年債で募集される傾向にあるが、決して5年債でなくてはならないというものでもない。発行体の業種特性に応じて、長めの年限ということも考えられるだろう。本来的に、SDGsのサステイナビリティ要素を考慮すれば、長期債の方が望ましく、中短期債は必ずしも趣旨にそぐわない可能性が高い。

もう一つの動きが、劣後債である。ハイブリッド債と馴染みやすい命名で呼んでいるものの、基本的には、通常の社債券に回収等の局面で劣位する債券である。期限前償還がほぼ確実視される金融機関の発行するものと、純粋に経済的な観点から期限前償還が行われるかどうかが決められる一般事業会社の発行する劣後債とでは、償還に対する発行体の考え方が大きく異なる可能性が高い。加えて、会計上は負債に分類されるものが格付会社によって部分的に資本性を認定されるという証券の位置づけは、格付会社による評価基準が変更された場合、一瞬で状況が変わってしまいかねない。ハイブリッド債といった美名で、制度変更リスクを糊塗(こと)するのはやめておいた方が良い。

最後の動きとして挙げておきたいのが、大型起債である。歴史的にも、ソフトバンクのような例外はあるものの、年度末近くのタイミングで、まとまった金額の社債募集が散見されている。今回もアイシン精機とオリックスの劣後債の他に、パナソニックや三菱ケミカルホールディングス、富士フィルムホールディングス、日立製作所、ホンダといった企業の大型起債に向けた動きが見られる。500億円を上回る金額が想定されており、これら大型起債のほとんどがメーカーによるものであることに留意しておきたい。他にも、銀行や証券による大型起債の可能性もあり、年度末に向けてこれから約1か月の動きが注目されるところである。

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