国内起債市場を斬る 起債評価:2/24~2/28

前週は起債市場が盛り上がりを見せたものの、この週は、また、28日の金曜日にほぼ一極集中した。27日、木曜日に募集されたのは国際協力機構のソーシャルボンドのみであり、残り2週間となった年度内の起債市場の募集に向けた動きは、多くが3月に持ち越されている。この週の動きとしては、日立製作所の募集延期を挙げることができる。最大2,000億円程度の大型起債が予定されており、この週の候補案にでも募集する予定であったが、M&A関連の動きが遅延したことで、1週間程度遅らせることになったようである。年度内には募集されるのではないかと思われる。

2月28日の金曜日に募集された社債等の中では、まず、以前に指摘した大型起債が目に付く。パナソニックは6年債300億円と10年債700億円の計1,000億円を募集している。R&IのA格と必ずしも高水準の格付けではないが、知名度の高さは投資家に受け入れ易い発行体である。また、富士フィルムホールディングスは3年債1,000億円と5年債500億円の計1,500億円を募集している。R&Iの格付けはAA格と日本国債を1ノッチ下回るだけであり、3年債と5年債という短めの年限もあって、この日最大の起債となった。更に、本田技研工業は3年債400億円・5年債400億円・7年債200億円の計1,000億円の社債を募集している。格付けは、富士フィルムホールディングスと同じくAA(R&I)格である。同年限のクーポンを比べると、3年債では富士フィルムホールディングスの0.06%に対し本田技研工業は0.05%と発行額によって差が生じ、5年債では富士フィルムホールディングスと本田技研工業は同じ0.12%クーポンとなっている。発行額に100億円しか差がなかったためであろう。

世界的には新型コロナウイルスによる肺炎が蔓延したことを受けて、実体経済や金融市場への影響が懸念されることから、欧米の資本市場では社債募集の動きが乏しくなりつつある。株価の大きな下落と反騰、更には中央銀行による金融政策の匂わせ(におわせ)などから、週明けには米国の10年国債が最低水準の利回りを更新しており、安定した金融市場の状況にあるとは見えない。このような状況でも、日本の金利水準は低下したものの、日本銀行による統制下にあるため、大きく金利が変動しないために、当初は日本の起債市場は新型コロナウイルスの影響をあまり受けないやに見えた。しかし、27日に安倍晋三首相から、全国の学校に対し春休み迄の休校要請があった。これによって、市町村立小学校は全体の98.8%、市町村立中学校と都道府県立高校はそれぞれ99.0%が休校に入った。国立の小中高校は100%が休校、私立学校、その他教育機関もそれにならった措置を行っている(3月4日朝現在)。もはや、金融史上に残る非常事態である。日本はイタリアを除く欧米よりも多くのウイルス患者を出しており、中期的に経済の受ける影響は甚大であると想定される。起債市場に於ける影響に関しては、年度末に向けた動きに大きな変化が起こるようだ。

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