国内起債市場を斬る 起債評価:3/2~3/6

いよいよ年度内の最終月に入ったが、起債市場の盛り上がりは感じられない。何しろ新型コロナウイルス問題で、経済が正常の状況にはないのである。日本のみならず世界的に株価下落が進んでいることに加え、アメリカの予防的利下げからの金融緩和は世界的な金利低下の再燃となっている。特に、Brexitの余震が冷めやらぬイギリスでは、2年物と5年物国債の利回りがマイナス圏に突入するという事態に至っている。世界的な経済活動の停滞が見込まれることもあって、原油価格の大幅な下落とともに、リスクオフの円高も確認されている。当初は日本を新型コロナウイルスの感染国とする見方から、円安に振れる可能性も残されていたが、イタリアを筆頭とする欧州やアメリカ本土での感染が日本以上に拡大するにつれて、円安の可能性は消失しつつある。

このような経済情勢の大きな悪化の中では、クレジット市場も低信用力のゾーンを中心に大きな影響が生じることは必至である。欧米でいえばハイイールド債であるし、原油価格の低下による直接の影響を受けるのは、シェール関連企業である。これらの先行きには大きな懸念を持つべきである。また、新型コロナウイルスの直接的な影響が懸念され、実際に破綻やレイオフ等の実例が見られ始めているのは、空運、サービス、レジャー、宿泊等の業種である。

金利の低下とクレジットスプレッドの拡大という平時には見られない展開が予想される状況にある。発行体は慎重に動くようになるだろうし、投資家も慎重に見るべき時間帯である。しかし、東日本大震災の9周年を迎えて、つくづく3月は鬼門であるという思いが強い。学校の卒業式・入学式やスポーツ、イベント等に与えるネガティブな影響は、経済的にも心理的にも甚大なものが予想される。近年の金融緩和に下支えされた微温経済と呼ばれる状況は、ウイルスの蔓延によって崩壊を迎えることになるだろう。なお、異常気象下で大発生したバッタによる被害がアフリカからインド亜大陸に拡大しており、中国方面に展開した場合には、黙示録に描かれたような惨状となるリスクが懸念され始めている。その場合には、食糧不足による物価上昇というパスの示現する可能性もあるのだが、その前に世界的な政治・経済の混乱が生じる可能性も否定できない。

こういった状況での起債市場は、年度末に向けての追い込みである。日立製作所の計2,000億円の大型起債やオリックスによる1,000億円の劣後債の募集といった動きもみられるが、メーカー、不動産などの起債も幾つか行われているし、グリーンボンドやソーシャルボンドの募集も見られている。世界的には金利水準が低下しているものの、日本の場合には元から低金利となっていたためにあまり顕著な低下は見られない。3月9日の週がほぼ年度内最終の条件決定可能期間であり、その後は3週間程度の起債市場は様子見となることだろう。

コメントは受け付けていません。