国内起債市場を斬る 起債評価:5/25~5/29

新型コロナウイルス感染症の拡大に対応した緊急事態宣言が徐々に解除され、少しずつ日常が戻りつつある。と言っても、ウイルス自体が完全に根絶されるものではなく、第二波以降の感染拡大を懸念すると、単純に以前の状態に戻るのではなく、新しい態勢を築くしかないのだろう。それをウィズコロナと呼ぶのかどうかは別にしても、以前のように皆が一か所に集まるといった方式は見直さざるを得ない。人と会うことについても、オンラインで代替することが増えるだろう。ただし、どんなにインターネット技術が進んでも、直接に対面することがすべてなくなるとは思えない。これからは、新しいスタンダードを模索する時間帯だろう。

起債市場の運営も色々と変わって行くのではないか。発行体や主幹事証券による投資家訪問は考え難くなっている。また、発行体が投資家や市場関係者を一か所に集めて、決算の状況や起債計画を説明するといったイベントも、徐々にネットを活用によるロードショー開催が、一般的になるのではないだろうか。参加者が都合の良い日時に随時アクセスできるのであれば、いずれの市場関係者にとっても利便性は高い。募集のスケジュールも見直すことが出来るだろう。

起債市場は、必ずしもフル回転といった状況ではない。決算発表のピークを越え、徐々に社債等の募集がはじまっているものの、関係者がフルに出勤しているものではなく、手探りで進んでいるといった感じは否めない。それでも、29日の金曜日には、メーカー、ノンバンク、鉄道など幅広い業態による社債の募集が行われた。前週にも見られたが、4月末に日本銀行が社債の買入れ対象年限を残存5年以内としたことで、従来からの3年債に加え5年債を併せての起債が増加している。この週でも、キリンホールディングス、SBIホールディングス、南海電気鉄道、オリックスが、3年債と5年債をともに募集している。残る電源開発も5年債を募集しており、まさに日銀買入れによる5年債の復権と呼んでよいだろう。

その一方で、超長期年限の国債利回りが上昇していることもあって、超長期年限の社債が募集されていないことにも注目しておきたい。この週の発行体の中でも、電源開発や南海電気鉄道は、超長期債を募集してもおかしくない業種の発行体である。両社がともに10年債までに年限を留めていることは注目しておきたい。もし超長期年限の国債利回りが当面下がらないのであれば、現状水準での超長期債に投資妙味が高いと考える投資家も少なくないだろう。かつて10回台の20年超長期が入札されていた時代に、米系のヘッジファンドから10bp以上も下の利回りで大量買い注文を店頭市場で受けた時代を思い出させる。発行体と投資家の間での、鬩ぎ合いは見物である。

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