国内起債市場を斬る 起債評価:6/8~6/12

緊急事態宣言が解除されたものの、大都市を中心とした感染は完全にはなくなっていない。徐々に街の生活は日常に戻りつつあるが、株価の動きを見ても、必ずしも旧来には戻り得ない。ウィズコロナの時代における新しい生活や経済のあり方を模索しているかのように見える。油断すれば、何時でも、何処でも新宿歌舞伎町の「夜の街」のように大規模感染が起きるだろう(歌舞伎町だけが注目されるのも気の毒だが)。今月下旬に都道府県を跨ぐ移動が解禁されると、大都市から地方への感染者移動が生じ今までに感染者が多く出ていなかった地方でクラスターはが発生するかもしれない。海外の動向を見ても、まだまだ決して安心できる状態にはない。なまじ金融緩和で株価水準を高めに維持していることもあって、不安定な株価も、こうした脆弱な状況を象徴しているかのようである。

コロナショック後の社債市場の注目年限としては、5年債を挙げることができる。日銀による買入れオペの対象となったことで、一気に発行量が増加している。これまで、利回りを求める投資家が10年債からそれ以上に長い超長期債へシフトする一方。短期的に利益を得る対象として日銀オペ見合いの3年債購入が行われてきた。近年は3年債と10年債もしくは超長期債という組み合わせが見られていたのが、オペ対象の拡大以降、3年債及び5年債に10年債以上を組み合わせたり、5年債と10年債以上といった組み合わせの起債がよく見かけられるようになった。かつて5年債は、中期年限の中核と位置づけられ、投資家層も厚いとされていたのが、マイナス金利政策によって利回りが低下したこともあって、感覚的に発行量が減少していたように見られた。それが、日銀オペの対象となったことで、見事に復権を果たしたのである。

この週においても、5年債を募集した発行体としては、ノンバンクで芙蓉総合リース・ホンダファイナンス、その他に大成建設、日本通運、日本製鉄、丸紅、旭化成、三井住友信託銀行と業種も幅広く分散している。この中でも、3年債とともに5年債を募集したのが、ホンダファイナンス・日本製鉄・三井住友信託銀行・旭化成と4社ある。必ずしもすべてが日銀オペ見合いのみとは言えないかもしれないが、5年債の募集は一つの顕著なトレンドとなっているようである。

5年債の復権による反動なのか、この週に超長期債を募集した民間企業は見られない。野村ホールディングスの永久劣後債は、5年経過時に期限前償還が可能であり、金融庁による監督の下でほぼ間違いなく償還されることが期待できるため、投資家は実質的に5年債として扱うだろう。他の超長期債としては、都市再生機構が40年債200億円、日本高速道路保有・債務返済機構が利子一括払いの20年債及び40年債の計100億円を募集したのみに留まる。コロナショックを受け大きく水準の変動した超長期ゾーンに対して、投資家がやや慎重な姿勢を示している可能性もあるが、単に民間企業が超長期年限を発行対象として選択肢にしなかっただけなのかもしれない。もう少し市場の動きを確認すべきだろう。

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