国内起債市場を斬る 起債評価:6/15~6/19

3月期決算企業の株主総会シーズンである。COVID-19への対応で、総会の開催も例年とは異なる形態が可能となっているものの、基本的には例年通りのスケジュールを維持している上場企業は少なくない。もっとも株主自身が「三密」を避けようとするため、必ずしも大規模な人数の株主総会の開催とはならないようだ。起債市場も株主総会を意識して暫時動きが大人しくなり、7月に入ってからのラッシュに備える展開である。既にメーカーや銀行、鉄道、通信等で大規模の起債観測が見られており、7月はやはり例年のような起債市場の展開になるようだ。

今年度は、新年度入りしてすぐに緊急事態宣言に伴う自粛が行われたため、学校や企業の夏季休暇スケジュールがよく読めない。そもそも東京オリンピック対応で祝日を移動したものが存置されているが、海外への渡航は困難であり、国内でも県外への移動がようやく解禁されたばかりの状況であるから、多くの国民にとって夏の予定がまだ立っていないというのが実情だろう。当面、新型コロナウイルスに脅えながら、春先の遅れをしっかり消化しようとするしかなく、夏場の起債市場が例年のように実質的な休みとなるのかは、まだ判然としない。

この週の起債では、金額面で目立ったのがみずほフィナンシャルグループの期限付き劣後債である。バーゼルⅢの規制に対応してTier2にカウントできるものであり、劣後事由等に該当した場合、元本が毀損する可能性はある。そのため、通常のシニア社債に対して劣後プレミアムが乗ることで、10年固定債の利回りは0.895%と高水準である。劣後性を考慮した格付けはR&I及びJCRのA+格であり、前週の10年債での起債で言えば、エアウォーターや日本製鉄(何れもシニア)と同程度の評価である。エアウォーターのクーポンは0.38%で、日本製鉄は0.42%であるから、みずほフィナンシャルグループの劣後債だと倍以上の利回りが得られる。400億円と決して大き過ぎる規模ではない。同時に募集された5年で早期償還が可能な10年債300億円は、当初クーポンが0.56%である。調達額は、計700億円に過ぎない。

一方で、クーポンが目立ったのは、NTTファイナンスとサントリーホールディングスの3年債である。前者はJCRのAAA格及びS&PのA-格を取得した400億円の募集で、後者はJCRのAA-格で300億円の募集である。いずれも日本銀行による買入れオペの対象年限であり、投資家による一次購入が期待できるだけでなく、発行体としては実質的に最低利回り(オーバーパー発行とすることで、更に利回りを低くすることは可能であるが)での資金調達が可能である。金融緩和の効果として、高格付けの発行体が低利で資金調達できることに必ずしも違和感はないが、むしろ需要の消失や固定費負担の大きさで喘ぐ中小企業等の資金調達に資する政策の方が、より金融支援としての意味があるのではないか。

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