国内起債市場を斬る 起債評価:6/29~7/3

3月期決算企業の株主総会が終わると、7月の起債シーズンに突入する。年度の第2四半期入りしたことに加え、6月下旬の起債抑制期を越えており、その一方で8月中旬には市場参加者の多くが夏休みとなるから、例年7月は濃縮された起債シーズンとなる。過去の歴史を振り返っても、期末が意識される9月・12月・3月以外で起債ラッシュが見られるのは、7月と11月の可能性が高い。実際に市場がどうなるかは、金利の先高感の有無やその年の祝日カレンダーにもよる。今年は東京オリンピック対応のために祝日が7月下旬に並べられており、延期になっても祝日を動かすことはできなかったため、例年にはない四連休が7月に設定されている。起債活動には影響が少ないと思われるものの、それまでに起債が集中する可能性もあるため、7月10日以降の起債観測の盛り上がりには注意が必要であろう。

四半期初旬、起債に向けてすぐに動く業態としては、いつも電力、ノンバンク、銀行、鉄道といった傾向が見られる。それに、公共機関も加わることがあるが、週の途中で月が替わったため、ややいつもの典型的な顔触れ以外も見られる。もっとも、中部と中国の電力2社、ノンバンクのクレディセゾン、銀行からは新生銀行、公的セクターからは中日本高速道路と、期待に違わない銘柄が社債を募集している。

それ以外の起債の一つの特徴は、相変わらずの日銀による社債買入れオペ対応の3年債と5年債である。豊田自動織機製作所の3年債に加えて、アシックスの3年債及び5年債は、この分類に含めて良いだろう。両社ともれっきとしたメーカーであり、前者は自動車部品や車体、産業車両、繊維機械の製作会社であり、トヨタ自動車グループの源流にも当たる。募集された社債は、0.001%クーポンの3年債で100.002円のオーバーパー発行であるから、辛うじてプラス利回りの発行条件である。アシックスはスポーツ用品メーカーであって、今回の公募普通社債の募集は第3回債及び第4回債と希少価値が高い。

これらとまったく異なる起債という意味では、電通グループの5年債500億円・7年債100億円・10年債600億円の計1,200億円という大規模な起債が注目される。R&IでAA-格を取得する高格付企業であるが、何しろ近年の政治スキャンダルで叩かれている広告代理店の持株会社である。安倍政権との癒着により不当利得を得ているのではないかという指摘は強い。加えて、電通は2016年のブラック企業対象を受賞しただけに留まらず、2019年も同特別賞を受賞している。どう考えても、SDG(Sustainable Development Goals)のうちsocialの観点で懸念される投資先と言わざるを得ない。電通グループの社債を購入した投資家がESG投資(Environment、Social、Governance)を意識していると言うなら、その投資姿勢が眉唾であることを容易に指摘できる試金石のような起債であった。

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