国内起債市場を斬る 起債評価:7/27~7/31

この週は、ついに民間企業による公募普通社債の募集を見ることができなかった。公共機関の中では、埼玉県が25年債(0.522%クーポン150億円)を条件決定し、その他に西日本高速道路による5年債(0.07%クーポン800億円)、日本政策金融公庫による2年債(0.001%クーポン1,100億円)及び4年債(0.01%クーポン800億円)の募集が見られた。

埼玉県債の25年というのは、地方債としては募集されることが決して多くない年限である。国債も地方債も募集される年限の基本が10年債というのは同様なのであるが、マイナス金利環境下では、10年債より短い年限であると国債の利回りがマイナスになっているため、国債対比スプレッドが大きくなってしまう。その結果、中期債の募集は地方公共団体には、あまり好まれない。一方で、投資家も利回りを求めるニーズを有しており、年限の長期化で需給が合致する。地方債の場合には、国債のような発行年限の制約は厳しくないため、15年債や25年債、更には定時償還債といった各種の債券募集が見られる。定時償還は歴史的には古い地方債に多く見られ、一時期は満期一括償還ばかりとなっていたが、投資家が適切にキャッシュフローを評価できるようになって、再び脚光を浴びるようになったものである。

西日本高速道路の発行する債券は、前年度までは厳密な意味での財投機関債ではなかった。財政投融資計画に付属する財投機関債の発行計画に記載されていなかったのである。ところが、令和2年度の財投機関債の発行予定には、当初の段階から西日本高速道路の4,200億円が明記されている(中日本の他に東日本及び西日本高速道路の計3社の発行する債券が財投機関債の予定に含まれている)。元来、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的引受条項や併存的債務引受条項の存在によって、実質的に財投機関債発行体である同機構の債務と同様のものとみなされており、債券の区分が変化しても必ずしも信用力に影響はないと考えられる。それでも、財政投融資計画に明記されたことで、より安全性が高まったと考えて良いのかもしれない。

日本政策金融公庫は、政府系金融機関の特性からも、経済的な困難時には民間からの依存度が高まるため、国民一般向けの融資事業用に募集された2年債は1,100億円と巨額であり、中小企業向け融資証券化の支援保証用の4年債も800億円の募集となった。新型コロナウイルス感染症によって中小企業等が資金繰りに苦しむ中では、政策金融機関が機能を発揮する機会もあると考えられ、合計1,900億円の起債も必要なものと見ることが出来よう。

昨年度の起債市場の実績を見ると、8月前半は公的セクターによる起債のみしか見られない。当面、同様の展開が続くものと考えておくしかない。

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