国内起債市場を斬る 起債評価:8/24~8/28

上期の起債募集は例年9月の中旬までであり、もう残り一か月を切っている。まだ起債ラッシュという感じではなかいが、徐々に盛り上がりが見えはじめている。この週に最初に募集されたのは、奇しくも鉄道関連からであった。名古屋鉄道の3年債200億円は、日銀オペ見合いと考えれば、実態を伴ったものではないかもしれない。しかし、同日に京成電鉄が募集したのは、3年債100億円以外に、10年債100億円と20年債100億円である。鉄道事業の時間軸から考えると、JR東日本や西日本で見られるような10年刻みの超長期債というのが馴染むものの、純粋の民間鉄道会社の場合には、周辺の経済情勢と見通しを考えた場合に、必ずしも30年や40年といった超長期の与信に躊躇させられることもある。京成電鉄の場合には、東京東部から千葉方面の安定した運送を担う一方、成田国際空港へのアクセス提供者でもある、前者には根強い需要があると考えられるが、後者に関しては今回の新型コロナウイルス感染症の拡大で脆弱な需要に則ったものであることが露呈した。特効薬やワクチンの開発によってある程度の国際線需要は戻ると期待されるものの、以前のようには戻らないと想定されるし、より都心に近い羽田空港の増便を考慮すると、LCC依存を高めた成田空港の将来は決して明るくない。結果として、京成電鉄の超長期債には、一抹の不安が残ると言わざるを得ない。その後、近鉄グループホールディングスも3年債と5年債の中期債を募集しており、鉄道関連だけで計800億円の起債となる。

次に動いたのが、銀行持株会社の劣後債である。と言っても、メガバンクではないし、事業会社の劣後債は9月に入ってから複数の動きが予定されているようだ。募集されたのは、三井住友トラストホールディングスと地銀の雄であるコンコルディアホールディングスの期限付き10年劣後債である。いずれも5年で期限前償還が可能となる伝統的な形であるが、変動利付となった後のステップアップ幅は大きくない。三井住友トラストホールディングスが条件決定した計400億円のうち300億円は個人投資家向けである。よもや金融機関の債券が個人投資家に実損を及ぼすことはないと期待されるのであるが、果たして5年後時点での未来像はどうだろうか。金利水準に変化がなければ、5年ものスワップレート+0.45%という変動金利は十分に魅力的であり、個人投資家は期限前償還しない方が良いと感じるだろう。

最後に、レノバとプレミアムウォーターホールディングスの二社が初の公募普通社債を募集している。格付けは前者がJCRのBBB格で、後者がR&IのBBB-格である。いわば、投資適格ギリギリの初顔と言って良いだろう。その結果、前者の5年債が1%クーポン、7年債が1.39%クーポン、後者の3年債が1.8%クーポンと他の銘柄であれば見ることのできないような高利回り債券となっている。募集金額も50億円から70億円と小額であるが、慣れない投資家にはなかなか受け入れ難い銘柄だったのではなかろうか。

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