国内起債市場を斬る 起債評価:8/31~9/4

いよいよ上期末の起債ラッシュを迎える。特に、金曜日となった9月4日に募集が集中するのは近年の顕著な傾向であり、市場関係者の大変さは想像に難くないが、上期を計画通りに消化しようとする努力が、発行体からも投資家からも引受証券からも伝わって来る。この2週間強のラッシュ期間を過ぎれば、短いながら閑散期となるはずである。

この週の起債の特徴を幾つか挙げてみよう。まずは、銀行セクターの起債である。あおぞら銀行の3年債、三井住友フィナンシャルグループの永久劣後債と、短期と超長期の両極が募集されている。もっとも永久劣後債は、10年4か月経過時の期限前償還が可能である。歴史的には、日本の銀行持株会社が国内発行した劣後債で、期限前償還しなかった例はない。実質的に10年4か月債と見ても良く、当初10年4か月のクーポンは1.109%と高い水準である。万一期限前償還されなくても、5年国債利回り+105bpsの変動利付クーポンは十分に魅力的と映る。よもやメガバンクの一角が期限前償還をスキップしたり、劣後事由に該当するような事態は生じないと期待されるのであるが。

次は、やはり電力及びガスの公益セクターによる社債だろう。北海道電力の3年債と25年債、中部電力の10年債、中国電力の20年債、北陸電力の10年債に15年債といった多くの電力債に加えて、東京ガスが10年債・30年債・40年債・50年債で計400億円を募集し、大阪ガスは60年劣後債を期限前償還可能期の異なる2本で計750億円募集している。電気もガスも小売りの自由化がされているとは言え、日常生活に欠かせないインフラのプロバイダーであって、いずれも長期的な事業の安定性は高いものと期待される。

劣後債という意味では、他に、大日本住友製薬も30年で期限前償還が7年と10年でかのうになる債券を、各600億円募集している。劣後債の格付けはBBB+(R&I)格であり、必ずしも高水準ではないが、当初のクーポンは1.39%ないし1.55%と魅力的な利率になっている。BBB+格の通常の長期債に投資するかと尋ねられれば、鉄道とか安定業種ならば考えるといったところだろう。変動の大きな製薬で期限前償還ですら7年や10年といった期間が設定されており、ましてや30年債となった場合にはどうであろうか。

その他に目立つのは、芙蓉総合リース、ホンダファイナンス、住友三井オートサービスといったノンバンクによる社債、また、戸田建設、清水建設、前田建設工業といった建設会社による起債も相次いでいる。戸田建設の10年債はグリーンボンドであり、他にも、都市再生機構の20年債・30年債・40年債がソーシャルボンドとなっている。なお、ホンダファイナンスと住友三井オートサービスは、両社とも3年債及び5年債を募集しており、5年債のみがいずれもグリーンボンドの認定を受けている。金に色が付けられず厳密な区分が出来ない以上、ノンバンクの起債で一部だけグリーンボンドというのは、眉唾物と考えて良いだろう。

コメントは受け付けていません。