国内起債市場を斬る 起債評価:9/7~9/11

2020年度上期末の起債ラッシュは、11日(金)がピークであったと言うことになるだろう。既に8日の火曜日以降、条件決定を迎える銘柄は多く、公共セクターにグリーンボンドや劣後債といったテーマ型の起債も含め、「百花繚乱」と言ったところだろう。

この週の起債の一つの特徴は、鉄道銘柄だろう。まず、8日にJR東海が3年債1,000億円を募集している。定番の3年債で金額を稼ぐというところであるが、リニア新幹線の建設難航や南海トラフ等の震災懸念を考えると、3年という短めの起債が適しているのかもしれない。つづいて、京阪ホールディングスが3年債と5年債及び10年債を各100億円募集している。関西の私鉄の中では、イメージ負けしている発行体であるが、現在の本線運行の両端駅を見ても出町柳(1925年開業)や中之島(旧玉江橋駅)といった昔と異なる駅名が見られるように、路線の拡大と変化が見られ、七条京阪とJR京都駅の間にシャトルバスを運行するなど、経営努力を怠っていない。中韓等アジア圏からの旅客にあまり依存していたとは思えないこともあって、堅実な経営を続けてもらいたいものである。横浜高速鉄道は10年債を80億円募集している。いわゆるMM21線の運営会社であり、東急東横線が乗り入れる横浜駅から元町・中華街駅までの路線である。基本的に東横線と一体運営されているために、乗り入れているという感覚は乏しい。同社はみなとみらい線の他に、こどもの国線も保有している。最後に、登場するのが東京地下鉄である。最近のJRやガスの起債でしばしば見られる10年刻みの複数年限募集であり、今回は10年債・30年債・40年債・50年債が各100億円募集された。超長期の安定した経営が期待できる公共セクターでは、こういった起債運営も悪くないだろう。

相変わらずグリーンボンドやソーシャルボンドとして投資家を誘引する起債も少なからず見られるが、今週のもう一つの特徴としては、レア物の続出を挙げておきたい。いわゆるフリークエントイシュアーではなく、稀にしか募集しない社債発行体が複数見られたのである。朝日放送グループホールディングスは第2回7年債50億円を募集している。センコーグループホールディングスは第5回5年債(グリーンボンド)及び第6回10年債を各100億円募集している。キッツは第5回10年債100億円を募集し、ニッコンホールディングスは第8回4年債及び第9回10年債を各100億円募集している。ここまでの銘柄は、格付けが国内会社のA-格からA格といった水準である。R&IからAA格を取得しているきたい花王の第6回5年債250億円も珍しいと言って良いだろう。案件が多く募集される時は、フリークエントイシュアーは投資家に良く知られていて有利な面もあるが、起債頻度の多さに敬遠される可能性もあって、こうしたレア物こそが注目を集めることも期待できる。

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