国内起債市場を斬る 起債評価:9/14~9/18

上半期の社債募集は、実質的に秋分の日と敬老の日が連なった4連休の前までとなる。既に起債ラッシュのピークは11日の金曜日に迎えていたが、その後も、この半期の実質最後となる社債等が募集されている。

本数という意味では、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が多く、それらは金額の総計でも440億円であるから決して金額面でも小さくない。単体でもっとも金額が大きかったのは、ニプロによる35年劣後債の500億円である。技術の高さに定評のある医療機器等のメーカーであるが、5年後に期限前償還が可能となる劣後債であり、取得した格付けはR&IのBBB-格とJCRのBBB格で、いわゆる投資適格の下限近くに位置付けられる。ソーシャルボンドの認定も得ているのだが、投資家が投げ売りをはじめるまでの格下げの残り幅が1ノッチしかなく、投資家としてはなかなか手が出し難い水準にある。医療機器と医薬品という同社事業の主力セクターは、新型コロナウイルス等感染症への対応も含む重要な機能を担っているのであるが、医療関連は信用リスクの振れ幅が大きく、医療過誤や巨額の開発投資負担等を賄えるかどうかが懸念される。今回の劣後債にしても、当初クーポンの1.6%という水準に象徴されるように、当初5年で確実に償還されるのであれば、面白い投資対象であるが、早期償還されず残りの30年を6か月ユーロ円ライボーレート+265bpsの変動利付で与信を継続することになった場合、果たしてそれは魅力的な投資になるのだろうか。

イオンモールが募集した5年債200億円及び7年債100億円は、サステナビリティボンドの認定を得ている。資金使途は、新型コロナウイルス対策・東日本震災復興支援・海外モール建設・国内モール建設とされている。サステナビリティボンドを認定したセカンドオピニオンは、社債に格付けを付したR&Iから同じく得ており、R&Iの内部において信用格付けと分離した評価になっているが、外部から見た両者の付与に対する疑念は残る。サステナビリティボンド等のセカンドオピニオンは、信用格付けと異なるエンティティから取得するのが望ましいだろう。サステナビリティボンドを認定したプロジェクト等がガイドラインに適合していると認定しているが、ショッピングモールの建設に際して環境に配慮するのは既に当然のこととなりつつあり、東日本震災復興支援といっても被災地域に出店するというだけであって、あくまでも経済合理性の観点から行われている。実質的に普通の社債と何ら異ならないようにも見え、サステナビリティボンドとして投資表明を行っている投資家のスタンスが疑われかねない。所詮は、言った者勝ちのように見られてしまうのが、現在の残念な取組みの状況である。

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