国内起債市場を斬る 起債評価:10/12~10/16

下半期入りしたとたんに賑わった起債市場は徐々に落ち着きを見せはじめている。それでも16日の金曜を中心とした週後半には、条件決定が相次いでいる。この週の特徴としては、銀行持株会社の劣後債と、新顔の登場といったところだろうか。

銀行持株会社の劣後債としては、まず、火曜日の13日に三菱UFJフィナンシャルグループが永久劣後債を2本募集している。早期償還可能なタイミングが、5年3か月後のものを230億円で、10年3か月後のものは370億円と、計600億円の募集である。格付けはR&I及びJCRのA-格で決して高格付けとは言えないが、将来的にメガバンクが破綻するとは考え難く、早期償還を確実だと考えるならば、前者で0.851%、後者で1.038%クーポンという水準は十分に魅力的である。
次に、翌14日の水曜日に条件決定したのは、みずほフィナンシャルグループの10年物個人向け期限付き劣後債である。シンプルな10年債は0.875%クーポンで630億円、当初5年で期限前償還可能なものは当初0.56%クーポンで740億円の計1,370億円が条件決定されている。期限付き劣後債であるため永久劣後債ほど格付けは引き下げられず、R&I及びJCRからA+格を取得している。期限前償還を前提とした5年債と考えるならば、ブレットの10年債ともども機関投資家でも手を出したい水準なのではないか。

新顔の登場としては、まず三井住友建設の5年債である。三井建設と住友建設が2003年に統合して設立されたゼネコンであるが、位置づけは準大手に過ぎない。JCRでA-格という評価からも積極的な投資対象とはし難いかもしれない。
続いて、東京臨海高速鉄道が10年債100億円を募集している。お台場地区に繋がる「りんかい線」の運営会社である。東京都が9割以上の株式を保有してる第三セクター会社であるが、鉄道の運営は実質的にJR東日本と一体化され埼京線の電車が乗り入れている。もっとも運賃は別計算であるために、割高感は否めない。コミケ等お台場でのイベントや通勤時には、多くの人が蛇行して時間を要するゆりかもめでなく、りんかい線を選択する可能性は高いが。
最後の新顔はJERAで、中部電力と東京電力フュエル&パワーが半分ずつ出資する火力発電等の会社である。既存電力債と異なり一般担保付の社債を発行できないが、5年債と10年債各200億円を募集している。結局のところ、中部電力及び東京電力と事業を切離すことができないため、両社の信用力の影響を受けざるを得ないと考えられる。JERAの格付けはR&IのA+格及びJCRのAA-格を取得しており、東京電力ホールディングスの格付けがR&IでBBB+格、JCRでA格であり、中部電力の格付けがR&IでA+格、JCRでAA格という水準から見ると、必ずしも高い方に寄せているものではない。なお、JERAは2020年のプロ野球セントラルリーグに特別協賛し冠スポンサーとなっており、知名度の向上に役立ったものと思われる。

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