国内起債市場を斬る  ステイホーム特別号➂:いわゆるコロナ関連業種の信用リスク

欧米を中心に、再び北半球における新型コロナ感染者の数が増加しはじめている。日本においても、GoToトラベル等経済支援策の影響もあるのか、各地で再び感染者に増加の兆しが見られる。札幌を中心とした北海道における感染者の増加は、気温低下に伴うものか、それとも窓を閉め暖房を使用する影響なのか、今後の本州や他の地域への拡散は予断を許さない。日本においては第三波のように見える感染者数の増加であるが、欧米では第二波の到来と見られているようである。

こうした感染者再拡大の状況を考えると、クレジット投資に対する影響を改めて検討しておくべきではなかろうか。特に、コロナ関連業種と呼ばれる、感染拡大の影響が売り上げや収益へ直接に影響すると考えられる業種について、検討しておくべきだろう。まず、小売に関してはネット通販等で売上を代替できる可能性もあり、個別企業の地域展開やマーケティング手法によって影響は区々であり、一概には判断できないが、慎重に臨む必要はありそうだ。

一方、まず、直接のダメージが大きいのは、旅行や宿泊といったところであろうか。幸いなことに、ホテル関連企業による社債発行はほとんど見られていないが、投資法人債においては、影響の生じる可能性があろう。旅行関連では、旅行取扱業者による社債は顕著な影響がこれからも継続するだろうし、旅客運送業者に関しては、中長期的な影響が必至である。もっとも大きな影響を受けるのは航空各社であり、次に、鉄道業者ということになろう。バス事業者に関しても、営業地域によっては業績への影響が大きくなる懸念がある。

サービス関連では感染拡大で業績に影響のある企業も少なくないが、社債への影響という意味では、個々に吟味する必要があろう。テレワーク等在宅勤務や外出の抑制からビジネスチャンスが拡大するものがある一方、訪問型のビジネスは敬遠されがちとなる。雇用形態や労働実態の変化から、強みを発揮できる人材派遣関連サービスもあれば、逆に、厳しくなる企業もあるだろう。なかなか一括りには行かない。

中長期的にもっとも注意しておかねばならないのが不動産関連かもしれない。J-REITを含めて考えると、まず大きな影響を受けた宿泊関連の次に、中長期的にはテレワークの増加によってオフィス需要の低迷が不可避であろう。当面、新規竣工物件へのニーズは維持されようが、陳腐化したレガシー物件に対するニーズは低迷する可能性がある。更には、景気の低迷から住宅に対するニーズも影響を受ける可能性があるし、そもそも人口減少トレンドの中にあることを考えると、不動産全般の先行きは厳しく、個々に長所短所を見極めて行く必要があろう。

新型コロナウイルス感染症の再拡大によって、政府は新たな財政出動を強いられる可能性もあり、民間企業のみでなく、各国の国債に対する信用リスクも懸念される展開が考えられる。民間の手が及ばぬところに公的サービスの出動が求められる中で、所得の低迷から税収が減少するだけでなく、経済活動の沈滞によって消費税収も低迷するだろう。ラストリゾートではなく、最後に影響を受けるのがソブリンであることを忘れてはならないけ。

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