国内起債市場を斬る 起債評価:1/4~1/8

年末年始休みの明けとなっても、すぐには債券の募集がされることにはならない。主要な海外市場と異なって、正月三が日は休んでしまうのが日本市場である。もっとも、2021年は1月2日が土曜、3日が日曜というカレンダーであったため、例年のやたら長い東京市場の休場はさほど目立たなかったようだ。クリスマスから数日間の市場変化を織り込んだ上で、起債準備は週初から動き出しているが、実際の募集は週後半からとなる。今年は株高を背景にし、日本証券業協会の提示した新しい債券募集ルールが適用される中で、金曜日の8日に日本政策投資銀行と住宅金融支援機構の財投機関債が募集されている。

日本政策投資銀行は3年債・5年債・10年債を各200億円募集している。3年債は0.001%クーポンのオーバーパーであり、5年債は0.03%クーポン、10年債は0.145%クーポンとなった。R&Iが昨年5月に日本政策投資銀行の格付けをAA格からAA+格に引き上げており、住宅金融支援機構と格付符号が同一になっている。R&Iは日本政策投資銀行の役割が民間に移行される可能性や預金受け入れが許されていない銀行の特殊性等を考慮して格付けを下げていたと考えられるが、東日本大震災等危急時の政策金融支援に日本政策投資銀行の役割が不可欠とされていることや政府による株式保有義務期間が延長されたことが再評価され、日本国債と同一水準としたものである。現時点では、S&Pが依然として日本国債より1ノッチ下となるA格と評価しているが、少なくとも日本国内の投資家でS&Pの格付けを根拠にして国内の債券発行体の信用力評価を行うものはないと考えられることから、実務上の支障はないだろう。

住宅金融支援機構の財投機関債は日本政策投資銀行と同じく3本立てであるが、5年債200億円の他に、10年債及び20年債を各100億円募集している。5年債と10年債は、R&Iの格付けが同一である日本政策投資銀行の財投機関債の同年限と同じクーポンである。日本政策投資銀行債は株式会社形態を採用しており、自己資本比率規制におけるリスクウェイトでは劣位となる場合があるものの、基本的に日本国債と同水準の格付けであり、信用力に対する大きな懸念はない。とは言っても、日本国債と同程度の信用力という評価は揺るがないものの、新型コロナ感染症の拡大継続によって住宅ローンの延滞やデフォルトが増加する可能性を考えると、一般担保債より貸付債権担保債のローンプールに対する懸念が高まるだろう。もっとも、貸付債券担保債も暗黙の政府保証は一般担保債と同様にあるものと考えられており、決してデフォルトするとは考えられないと云うのがコンセンサスではあるが、償還タイミングが後倒しとなる可能性や風評リスクを念頭に入れておく必要があるかもしれない。

これから2021年の起債市場に民間企業の社債が登場して来る。例年なら、ノンバンクや電力債といったところがトップバッターになるのであるが、今年はどうだろうか。確かに、複数のノンバンクによる起債観測が確認されている。

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