国内起債市場を斬る 起債評価:1/26~1/29

相変わらず、起債市場はノンバンクと劣後債が、募集の多くを占めている。ノンバンクで募集されたのは、日立キャピタルの3年債とイオンフィナンシャルサービスの3年債及び5年債である。いずれも日銀買入れの適格年限のみの募集であって、前者は日立の名前を残しているものの、既に三菱UFJフィナンシャルグループの傘下であり、後者はイオングループに属している。結局のところ、オリックス等幾つかの例外を除いて、ほとんどのノンバンクは何らかの母体企業もしくはグループに所属していないと、安定したビジネス基盤を確保できないようである。もっとも、新型コロナウイルス感染症の影響による業績低下の影響が、母体企業やグループ企業の所属業種に大きく及ぶ場合には、関連ノンバンクも無傷ではいられない。そういう観点からも、中期年限の社債しか募集できないのかもしれない。

劣後債を募集したのは、三菱地所とソフトバンクグループである。どちらも過去に発行した劣後債をリプレイスする目的の起債で、新顔の発行体ではない。三菱地所が募集したのは、最終償還60年債が2本で、800億円の一つは5年経過時点以降に期限前償還が可能になり、350億円の方は12年経過時点以降に期限前償還が可能になる。変動利付になってからのクーポンはいずれもステップアップが予定されており、期限前償還のインセンティブが担保されている。しかし、期限前償還を前提にすることと、劣後債に資本性を認めることは、矛盾を孕んでいる。そのため、今回のように同様の劣後性調達によってリプレースすることが求められるのである。

ソフトバンクグループの劣後債は、1,770億円と巨額の募集である。最終償還35年債で、5年経過時点以降に期限前償還が可能になる。変動利付になってからは、財務省の公表する国債金利情報に連動して上乗せが決められることになっており、Libor金利廃止へに向けた一つの対応策を示している。前述の三菱地所債の変動金利は、Liborへの上乗せで規定されており、Libor廃止に対応したクーポン決定に関する詳細な規定が付随している。果たしてどちらが投資家にとって理解し易いだろうか。必ず期限前償還するのであれば、適用されずに終わってしまうものなのだが。

ノンバンクと劣後債以外の社債では、光通信が5年債・10年債・15年債の3本立てを募集した他、いすゞ自動車が5年債と7年債とを募集している。光通信は、以前より随分と格付けを回復しており、R&IのA-格及びJCRのA格という評価である。果たして15年後の光通信という会社がどうなっているかイメージできるだろうか。15年債のクーポンは1.38%であり、三菱地所の期限前償還12年債の当初クーポン0.97%を大きく上回る。利回りの高さは投資対象として魅力的に映るが、発行体の将来性に疑問がない訳ではない。格付けの有効期間を3~5年と考えるならば、投資家の持つ業界及び個社に対する鑑識眼が問われることになる。

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