国内起債市場を斬る 起債評価:2/8~2/12

この週も引続き、民間企業による通常の社債募集は見られない。募集されたのは、いわゆる公共債ばかりである。まず、地方公共団体金融機構が10年債を募集している。定例の毎月行われる募集という感はあるが、他の月は20年債や時に5年債などと同時に募集されることが多いため、10年債が単独で募集されるのを珍しく感じる。1月に募集された第140回の10年債が0.125%クーポンであったのと比べると、今月の第141回債は0.15%クーポンとわずかながら利回りが上昇している。地方公共団体金融機構債は、厳密な意味での財投機関債ではなく、むしろ地方公共団体が共同で設立した機構の発行するスーパー地方債ともいうべき存在である。共同発行地方債と異なるのは、全都道府県及び市町村が関与した機構による募集であるというくらいか。地方公共団体金融機構は、定例の債券募集の他に、外債やFLIPに基づく随時の債券発行、地方公務員共済組合関連の投資家向け縁故債と幅広い債券発行のバリエーションを有しているのも強みである。

残りの公共債は、道路関係の債券ばかりである。高速道路運営会社で債券を募集したのは、阪神高速道路の4年債300億円と、首都高速道路の5年債200億円である。いずれも日本高速道路保有・債務返済機構による併存的債務返済条項が付されており、結局のところは、財投機関である日本高速道路保有・債務返済機構が連帯して債務を負担するために、同機構の信用力に帰するものである。なお、いずれも大都市圏での高速道路運営会社であるが、阪神高速道路はR&IのAA+格しか取得していないのに、首都高速道路はR&IのAA+格の他、ムーディースのA1格とJCRのAAA格を取得している。東日本高速道路や、中日本高速道路、西日本高速道路と同じような格付取得形態であり、特にJCRからのAAA格取得は、一部の投資家にとって意味がある。

高速道路の保有主体である日本高速道路保有・債務返済機構は、31年物の財投機関債を募集している。利子一括払いという同機構では、おなじみの債券形態である。期間損益を認識する企業会計を採用している投資家には意味ある利息収入であるが、償還と同時の利息支払時点までは未収利息であるため、現実のインカムをキャッシュで受け取りたい投資家にとっては、不向きな債券である。31年債と言っても、クーポンは0.934%と決して高水準でなく、通常の利払いを受けたとしても決して大きな金額にはならないが。こうした債券も、発行体が現金主義を意識していれば、償還と利払時点まで資金流出がないのであり、投資家と発行体との重視する会計方針の違いをうまく利用した起債と言えなくもない。1千万円という投資単位からも当然であるが、個人投資家が購入することはできず、投資家は指定金融機関等に限定されている。

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