国内起債市場を斬る 起債評価:2/22~2/26

今年は、恒例の「年度末起債ラッシュ」がないのかもしれない。例年であれば、3月中旬に向けて最後の資金調達の動きがあるのだが、10年以上の年限について金利の先高感が生じており、日銀の金融政策決定会合で金融緩和の見直しが行われる可能性もあって、3月の社債募集は少なめになる可能性がある。起債観測は色々と上がっているが、大型案件と言えるものはオリックスの劣後債くらいなものだろう。近年の大型起債はM&A関連のものが多く、新型コロナ感染症の影響で、M&Aの動きはあまり見られなくなっている。そのため、年度末の大型起債は期待し難い状況である。

この週に募集された社債等は決して多くない。丸紅の劣後債は750億円と大型案件の部類に入る。60年債であるが、5年経過以降の早期償還が可能で、クーポンがステップアップする典型的な仕組みである。5年債として考えると、0.82%クーポンは高い利回りである。しかし、R&IのBBB+格という劣後債評価を考えると、十分に高い利回りとも言えない。総合商社の変動性が高いビジネスを考えると、早期償還してくれないと困る債券でもあろう。

条件決定したクレディセゾンの6年債は、個人投資家向けの社債である。ボーナスシーズンでもないのに、個人投資家向けの社債が募集されることは珍しいが、投資単位を10万円と設定していることで個人の小額資金をも対象にしている。0.24%というクーポンは、銀行預金等一般的な貯蓄手段より遥かに高い利回りが獲得できる。問題は、クレディセゾンという発行体の信用力評価だろう。格付けはR&IのA+格と高いが、ノンバンクビジネスの将来性はどうか。特に、みずほフィナンシャルグループとの提携を解消して、「セゾンカード」はどこに向かおうとしているのか。6年のタイムスパンは、悩ましいところである。

三井金属鉱業は5年債100億円を募集した。JCRのA-格とやや低めの格付けであり、0.16%クーポンは必ずしも高い利回りではない。レア銘柄でなかったら、消化は容易でなかった可能性が高い。もっとも三井グループの中でも古株の企業であり、デフォルトとの距離は遠い可能性が高い。

中国電力は23年債という端数年限での社債を募集している。国債のイールドカーブが引けていれば、新発国債の発行年限でなくても、スプレッド評価は可能である。そもそも国債利回りの低下を受けて利回りの絶対値でプライシングされることが多くなっており、投資家側も国債対比での評価を自らで行うことに習熟していることだろう。

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