国内起債市場を斬る 起債評価:3/15~3/19

毎年のことではあるが、起債市場の動きが終焉するタイミングは何とも寂しい。カレンダーを見て物理的にそろそろ終わりだろうと思いつつも、細々ながら条件決定の動きがあると安堵するし、一方で、4月以降の起債観測が多く聞こえてて来るようになると、年度内の動きが終結に向かっていることを実感させられる。そもそも、3月末の区切りは、発行体や投資家の会計サイクルの切れ目であるだけで、法人としての事業は継続しているのだから、年度末が近づいたら社債等を募集しないというのは単なるカレンダー要因でしかない。毎年同じような状況を繰り返しているのだから進歩がないと言うこともできるが、変わることを要しないと言うことも出来よう。将来的に債券発行の手続きが更に電子化されても、会計サイクルといったテクニカルな要因によって起債に向けた動きが休止する期間は、なくならないものなのだろう。

年度末に向けた起債のピークは前の週までであったかもしれないが、この週も細々と募集は行われている。日本銀行は、この週に開催される金融政策決定会合までに金融緩和政策の手段に関する点検を行うとしていたが、市場参加者は社債買入れオペに関して全面的な見直しを想定していなかった。日銀が5年以内の社債を購入することで、オペ見合いの歪んだ起債慣行があることは認知されているものの、企業の資金調達を容易にし信用リスクの拡大を抑制するという目標からは、金額面で見直しがあるとしても、枠組みの見直しはないと予想していたのである。実際に、オペの上限について金額面での変更はあったものの、社債買入れオペの位置づけは、他の政策手段のように見直しを強く求められるものではなかった。今回の金融政策決定が社債発行市場に与える影響は軽微なものに留まろう。

この週に実際に募集された案件としては、名古屋鉄道の5年債、王子ホールディングスの5年債及び10年債、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく6年債、野村総合研究所の期限前償還条項付12年債といった程度の散発的な動きであった。金額面では、王子ホールディングの2本立て計350億円の募集が最大となった。また、野村総合研究所の12年債は、サステナビリティ・リンク・ボンドを選択している。

先週号でも少し触れたが、国内の起債市場では乏しい中で、グローバルドル債市場で、トヨタ自動車が前週の国内債券市場での募集に続き、Woven Planet債と称するサステナビリティ・ボンドを募集している。3年債12.5億ドル、5年債10億ドル、10年債5億ドルの3本立てで計27.5億ドル(1ドル=108円換算で約3,000億円)と決して巨額ではないが、総額では5千億円を越える大型の調達となっている。

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