国内起債市場を斬る 起債評価:4/26~5/7

GWを挟む時期は、3月期決算企業の決算発表もあって、起債市場の動きは鈍い。そもそも飛び石休暇であると、今年のカレンダーで行けば4月30日とか5月6日・7日といった証券会社の営業日程では、社債等の募集は容易でない。前日が休日であると募集しづらいし、募集から払込までの日程を大きく開けることは好まれないからである。結局のところ、この期間に社債が募集されたのは、本格的な休みに突入する前の4月27日及び28日に限られた。しかし、いずれの日も1銘柄ずつの募集であって、決して市場が盛り上がっているという訳でもない。

4月27日に募集されたのは、中日本高速道路の5年債950億円である。日本高速道路保有・債務返済機構の併存的債務引受条項が付されているため、信用力の面では実質的に財投機関と同等と考えられる存在である。発行体が株式会社形態という面での不安感は多少あるかもしれないが、国と実質的に一体である財投機関が併存して債務を引受ける仕組みである。格付けも引続き、R&IのAA+格・JCRのAAA格・ムーディーズのA1格と、いずれも日本国債と同じ符号を得ている。5年債でクーポンは0.05%であった。利回り水準としては、同月に募集された東日本高速道路の5年債と同じであった。日本政策投資銀行や住宅金融支援機構の0.02%クーポンは上回るものの、JR東日本やJR西日本も5年債は同じ0.05%で募集しており、決して割高感はない。

続く28日に募集されたのは、住友不動産の10年債300億円であった。バブル経済の崩壊後に格付けが投資適格と呼ばれる水準を下回っていた時期には、個人投資家向けの社債募集で凌いだり、その後も、流通市場の実勢から大きく乖離した水準での社債募集を強行したりと、社債市場において”いわくつき”の発行体の一つと目されて来た。しかし、現在の格付けは、R&IのA+格及びJCRのAA-格と、高格付けと表現してもおかしくないような信用水準になっている。不動産市場の全般的な回復もあるが、特に、大都市圏のオフィスや物流施設等多様なニーズに対応したことで、人口減少社会においても、大手不動産各社は根強い需要を確保しているのである。クーポンは0.31%に設定されており、野村證券が単独で全額を引受けた。今月に募集された起債市場で同じく歴史的にいわくつきの発行体の一つとされる東京電力パワーグリッドの10年債は、0.8%クーポンであるから、格付けが大きく異なるとは言え、住友不動産の評価が大きく回復していることを感じさせる。同月に募集された他の10年債を見ても、0.31%クーポンは、他の電力債とほぼ同じくらいの水準であり、丸紅やオリックスよりも低い水準である。住友不動産が普通の発行体になったことを強く意識させられた起債であった。

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