国内起債市場を斬る 起債評価:6/14~6/18

起債市場は、3月期決算企業の株主総会シーズンが迫り、急に下火になった観がある。もっとも7月に入れば、次の四半期になることもあって起債量は自ずと復活してくるのは必至であり、現在は単なる準備期間と考えて良いだろう。この週は、募集案件の数が多くなかったものの、いずれも個性的な物が集まったようである。

まず、三菱地所は、7年債200億円・10年債300億円・20年債200億円と計700億円を募集している。格付けがAA-(R&I)・A+(S&P)・A2(ムーディーズ)と高いこともあって、クーポンは7年債で0.16%、10年債で0.26%、20年債で0.61%と決して高水準にならないが、信用力の安定性を評価されていることは間違いない。新型コロナ首都圏集中感染によって、都内オフィスビルの位置づけの激変は否めないが、高格付けの超長期債を含む大型募集案件と題して良いだろう。

西日本鉄道は、劣後債を計300億円募集している。5年経過時点以降で償還可能な35年債200億円と、7年経過時点以降で償還可能な37年債100億円という内訳である。鉄道会社の劣後債については、劣後事由が発生するようなことは考え難いと思われるが、地域限定のイベントが生じる事態も頭の片隅には置いておくべきだろう。地震や台風、火山の噴火等による被害の長期化や、海外からの影響等もあり得ないこととは断言できない。また、超長期的には人口動態の影響も、営業地域を変えることが難しいため、リスクとして認識しておく必要がある。

一方で、東武鉄道が募集したのは、0.001%クーポンの3年債であり、オーバーパー発行で実質利回りは0%である。年限から見ても、明らかに日銀オペに吸収されることを前提とした起債であると思われる。日銀は社債買入れオペを継続する姿勢を表明しているが、金額面では抑制的に取り組まれる可能性が高く、日銀による買入れを前提にすることは、やや将来に対する懸念を持っておいた方が良いだろう。

レア物として括って(くくって)よいと思われるのが、マクロミルの3年債50億円及び5年債100億円、東海カーボンの5年債100億円、GMOインターネットに3年債100億円及び5年債150億円である。マクロミルの5年債で第4回債と回号がもっとも大きく、GMOインターネットの3年債は第1回債と回号が最小である。格付けは、東海カーボンがA-(R&I)格であるものの、マクロミルとGMOインターネットはBBB+(R&I)格である。東海カーボンが炭素製品のメーカーであるのに対し、マクロミルはネット等によるマーケット調査会社、GMOインターネットはネットを利用した金融を含む様々なサービス提供者といった違いがある。GMOインターネットは。グループ内の上場会社が多いだけでなく、海外展開も広いので、やや実態の把握が難しいだろう。そういう意味では、レア物で募集された社債は、長くても5年債までという年限設定には、違和感が少ない。

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