国内起債市場を斬る 起債評価:6/28~7/2

結局、3月期決算企業の株主総会が終了するまで社債の募集はなく、第一四半期の終わりを迎える中では、財投機関債等も動くタイミングではなかった。そのため、社債等の募集があったのは、金曜日に募集されたサントリー食品インターナショナルと近鉄エクスプレスのみであった。

サントリー食品インターナショナルが募集したのは3年債200億円で、クーポンは0.001%と最低水準で設定された。発行単価は100.003円のオーバーパーであり、応募者利回りは0%となる。JCRからAA-格と高評価を受けた3年債であり、日銀オペによって買い取られる期待もあって、問題なく消化された模様である。日銀による社債買入れオペは、やや消極的な姿勢に変化しているものの、拡大した年限である5年債まででなく、元からの購入対象とされていた3年債までならば、オペ対象として継続される可能性は高いだろう。事務方としては信用リスクを過度に負いたくないと考えているだろうが、日本にハイイールド債の新発市場が存在しないことを考えると、このような高格付け債を購入することは、社債買入れ実績の積み上げにこそ貢献すれ、企業に対する資金繰り支援の観点からは、何らの意味がないものになっている。信用危急時を除いて存在意義の乏しい日銀による社債買入れオペであるが、真剣に役割と継続することの意義を見直すべきだろう。単に、現執行部による金融緩和政策を継続するというだけの観点では、金融資本市場を歪める取組みでしかない。結局、誰も喜ばない取組みを無駄に続けているようにしか見えない。

一方、近鉄エクスプレスの10年債100億円は、R&IのBBB+格という評価を得て募集されている。近鉄グループに属する運送会社であり、高い競争力を有しているとされるが、格付けは決して高くない。10年債は格付け対比だとやや長い印象を受けるが、事業特性やグループ母体企業の存在を考えると、決して格付けがBBBレベルだからと言って、投資を躊躇する必要はないようにも思える。希少性のある業種と発行体であり、社債募集のタイミングも良かったのではなかろうか。6月に同じR&IのBBB+格で募集された社債(劣後債除く)を見ると、マクロミルル (本社:東京都港区、代表執行役 グローバル CEO:佐々木 徹)はの5年債が0.56%クーポンでほぼ同程度の利回り、また、GMOインターネット(本社:東京都渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー、表取締役会長兼社長・グループ代表熊谷 正寿)は3年債で0.58%クーポンと近い水準の利回りになっている。同じ格付けでも、業種と企業の双方の観点から、同程度の利回りとなる年限が大きく異なっているのは面白い。近鉄エクスプレスの信用力に対する信頼が強いことを、端的に示す結果となっている。

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