国内起債市場を斬る 起債評価:7/12~7/16

2021年7月の起債市場は、東京オリンピック開催によるカレンダー変更の影響を受けている。四半期頭の起債市場では、そろそろ多様な業種の起債が見られ、一気に起債市場が盛り上がる時期なのだが、例年にはない4連休があり、都心部の交通規制等による物量及び人流への影響、無観客での競技開催の影響を世の中全般が受けており、盛り上がるだけの一方向でないオリンピック関連イベントを見ると、起債市場でもやや変質した雰囲気が醸し(かもし)出されている。この週に起債市場で社債を募集した業態も、複数のノンバンクが動いた他、商社や不動産、メーカーなどが出て来ているが、やや小粒の案件が多いイメージを受ける。

ノンバンクの起債を見ると、トヨタファイナンスの3年債200億円が利回り0%で募集され、東京センチュリーは7年債及び10年債各150億円を募集し、オリエントコーポレーションは2年7か月債と10年債各100億円を募集している。特に、グリーンファイナンス等の資金使途ではなく借換え等の対応が中心であって、あまり話題になるような材料が見られない。トヨタファイナンスの格付けは、R&IによるAAA格が日本国債より上であり、S&PによるA+格とムーディーズのよるA1格は日本国債と同水準である。投資家による支持は強く、オーバーパー発行で応募者利回りが0%となっても消化に支障はない。

強いてこの週の起債市場の特徴を挙げるならば、トヨタファイナンス債の高格付けと異なり、いわゆる投資適格の下限に近いBBB格ゾーンの社債募集が複数見られたことであろう。永谷園ホールディングスの5年債200億円は、JCRからBBB+格を取得している。もっとも、食品メーカーという業種特性から、健康問題に関連したヘッドラインリスクが現れない限り、信用力の安定が期待できる。一方、SBIホールディングスはR&IからBBB+格を取得して、3年債及び5年債各400億円を募集している。以前からネット経由で銀行や保険への進出を図り、複数の地銀と連携するなど業容の拡大に勤し(いそし)んでいて、今回の起債は募集金額も大きい。5年までの中期年限であれば業容に大きな変化はないものと期待されるが、知己金融機関を中心に合従連衡がますます増えると考えられる中、必ずしも5年間の安定性の維持できない可能性も否定できない。

帝人の募集した期限前償還可能な30年劣後債600億円も、格付けはR&Iから取得したBBB格となっている。同時に募集した3年債及び5年債はA-格であり、劣後債の構造的な評価(ノッチダウン)である。

第1回債を募集したオープンハウスの3年債100億円が興味をそそる。取得した格付けは、R&IからのBBB-格であり、クーポンは0.95%と極めて高い水準である。1997年創業と必ずしも社歴は長くなく(多くのIT系新興企業よりは長いが)、首都圏を中心とした大都市圏での不動産分譲及び住宅建築等を行う。テレビでの積極的なCM展開や、東京ヤクルトスワローズのトップスポンサーの一角を占めるなど、知名度は決して低くない。住宅に対する評価も取り立てて悪いものは見られないようであり、人口減少の日本において大都市圏に特化した地域戦略は、適切なものと考えられる。90年代に低格付けの複数の不動産会社が破綻し、社債がデフォルトした事例があった。オープンハウスに関しては、同様の展開となるリスクは低いように見えるが、どうだろうか。

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