国内起債市場を斬る 起債評価:9/13~9/17

おそらく上期末の起債は、この前の週がピークだったのだろう。カレンダーを見ても、翌週は敬老の日と春分の日によるシルバーウィークとなっており、募集から払込までの期間を考えると、9月中の募集はほとんど残っていないと考えられる。

こういった状況では、フリークエントイシュアーよりも、レア物の起債が目立って来る。日本発条(ニッパツ)の第9回5年債100億円、中央日本土地建物グループの第3回5年債50億円、KYBの第1回5年債70億円、DOWAホールディングスの第6回5年債100億円といったところが、シニア債として募集されている。また、劣後債を見ると、ツバキ・ナカシマが100億円、三菱HCキャピタルが1,000億円、横浜冷凍が100億円とそれぞれ第1回の劣後債を募集している。注意したいのは格付水準であり、幾ら劣後債がシニア債と比べて1ノッチ程度下回った符号になるものではあるが、ツバキ・ナカシマの劣後債はR&IのBBB-格であり、横浜冷凍の劣後債はJCRのBBB格である。予定通り期限前償還されるとすれば、両者とも7年債であるが、期限前償還されなかった場合、最大で前者は30年債となり、後者は37年債である。この水準の格付けの銘柄に、そこまで長期の与信を行う投資家は、正気と思えない。劣後債によるプレミアムの上乗せによる利回りの高さと、期限前償還への期待だけに捕らわれているのではないか。

翻って日本国内の円債市場以外に目を向けると、9月に入ってドル建てやユーロ建てなど、海外での調達を行う国内企業が増えている。募集される市場もユーロ市場あり、米国SEC登録のRule144A債ありと様々であるが、主な銘柄を挙げても、メーカーではデンソーが5年債5億ドル、商社では丸紅が5年債5億ドル、鉄道ではJR東日本が7年債3億ポンド・13年債5億ユーロ・18年債7億ユーロとある。更に、もっとも目立ったのが金融セクターである。千葉銀行の5年債3億ドル、みずほFGは8年NC7年債10億ユーロに加えて、10年劣後債を10億ドル、三井住友信託銀行は3年債7.5億ドル・3年変動利付債7.5億ドル・5年債7.5億ドルと、様々な年限・通貨での募集が見られる。また、農林中央金庫が今世紀に入って初めて5年債と10年債を各5億ドル募集している。

外貨建ての起債に関しては、メーカー等では買収などに伴う実需があり、金融機関等では外貨ニーズへの対応という側面もあり、また、グローバルな幅広く多様な投資家に対してニーズに即した社債を訴求するという面もあるが、為替レートの変動や見通しによって機動的に募集していることも考えられる。中でも、デンソーがサステナビリティボンド、農林中金がグリーンボンドとしての認証を取得しており、世界的な投資家のSDGs債に対するニーズに対応しているように見える。決してSDGs債に対する国内機関投資家のニーズが小さいとは思えないが、国内では金融債があるため社債を発行しない農林中金が、久しぶりにドル債の起債へと動いたことには注目しておきたい。

コメントは受け付けていません。