国内起債市場を斬る 起債評価:10/4~10/8

下期の起債市場は、例年よりも動きが速いようだ。背景にあるのは、そこはかとなく感じられるようになった日米の金利先高感だろう。米国の場合には、連邦政府債務の上限問題をクリアしたものの、新型コロナ感染症による経済への影響から徐々に脱却しつつあり、11月にもテーパリングが開始されるという観測が高まっている。日本についても、必ずしも米国金利の動向に連動しないものではあるが、自民党総裁選で各候補が打ち上げたバラマキやプライマリーバランス公約の一時凍結などの発言から金利上昇懸念が生じている。財務事務次官が月刊誌で財政悪化に向かう傾向に対して反論するといった前代未聞の状況であり、金利押下げによってメリットを得ている日本政府のスタンスが顕著である。家計も企業も資金余剰にあり、最大の資金不足セクターは政府なのであって、当然、低金利によって最大の恩恵を得ている主体は政府なのである。

10月に入って早速動き出した起債市場ではあるが、すぐに債券等を募集した案件の特徴を、幾つかの単語で表現すると、高速道路、大型起債、電力債、SDGs債、劣後債といったことになるだろう。既に10月1日から首都高速と阪神高速が社債募集を開始しており、8日には西日本高速道路も追随している。3社合計では1,400億円を募集しているが、この額が小さく見えるほどの大型起債が相次いでいる。ソフトバンクの3本立て起債計800億円ですら大型起債には感じなくなってしまう。日本航空の劣後債は1回号で1,500億円を募集し、武田薬品工業は10年債2,500億円を同じく1回号で募集している。また、パナソニックの劣後債は、3本立てで計4,000億円という大規模の募集であった。

電力債では、東北14年債100億円、四国20年債100億円、九州10年債200億円及び27年債150億円、中部10年債141億円及び20年債90億円、関西3年債500億円・5年債300億円・10年債100億円と様々な年限と金額とで募集されている。半端な年限が複数見られているとともに、関西電力の3年債はオーバーパー発行によって0%の利回りを実現している。なお、中部電力の発行金額が141億と奇妙な数値となったのは、公正取引委員会による立ち入り検査を受けて投資家の購入ニーズが減退したことへの対応と考えられる。

SDGs債の募集も多く、東急不動産ホールディングスの10年債はサステナビリティリンク債であり、SPT未達の場合は、環境団体等への寄付を公約している。INPEXの10年債はグリーンボンドであり、東京地下鉄は10年債・30年債・40年債・50年債の各100億円を募集したうち、10年債のみサステナビリティボンドの認証を得ている。なお、前週の阪神高速道路債がソーシャルボンドの認定を得ていたのに続き、西日本高速道路債もソーシャルボンドとしての認定を得ている。SDGs債も引続き、投資家に対するアピール材料となっているようだ。

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