国内起債市場を斬る 起債評価:10/25~10/29

日本の上場企業の多くは3月期決算を採用(例外として、繁閑期の異なる小売・流通業や海外等を意識して12月決算を採用する企業がある)しており、第2四半期末分の決算発表のタイミングを意識し社債等の募集が閑散となるシーズンである。こういった状況でも、月初であれば公的セクターの動きが多く見られるのが常なのだが、月末近くでは「公的」の動きもあまり多くない。想定し易い日銀の金融政策決定会合の結果発表を待つまでもなく、一部のやや異なる行動を取る発行体が、債券を募集する動きとなった。

計1,000億円の大型起債を行ったのが、三菱UFJフィナンシャルグループと中日本高速道路の二つであった。前者はTLAC対応債であり、3つの年限のいずれもに期限前償還条項が付されている。償還可能になるのが満期償還の1年前であり、固定利付期間が終了した後のクーポンはユーロ円Tibor変動(「Tokyo Interbank Offered Rate」の略で、TIBORには無担保コール市場の実勢を反映した「日本円TIBOR」とオフショア市場の実勢を反映した「ユーロ円TIBOR」)になる)とされているが、期限前償還の行われる蓋然性は高い。投資家の多くは期限前償還を前提として購入判断を行ったものと考えられる。4年債250億円・6年債460億円・11年債290億円というレアな年限設定の組み合わせも、期限前償還を前提にすると、3年債・5年債・10年債という馴染んだ年限に見えるのであった。もう一つの1,000億円大型起債は、中日本高速道路の5年債である。日本高速道路保有・債務返済機構の併存的引受条項が付いていることから、実質的な財投機関債と位置づけられるために、格付け評価も高い。三菱UFJフィナンシャルグループの6年債(実質5年債)の当初5年間クーポン0.25%に対して、中日本高速道路の5年債は0.04%と大きく下回る。格付けや規制面での取扱いの差が大きくクーポン水準に影響しているのである。

こういった閑散期に社債を募集する典型企業の一つが光通信である。他の企業とほとんどバッティングしない時期に債券を募集するのは、消化促進の観点からも適正な行動であろう。同社の決算は3月末であるが、第2四半期分の決算発表予定は11月12日となっており、今回募集した社債の払込日である11月4日より遅く設定されている。光通信が募集したのは、5年債100億円・10年債300億円・15年債250億円の計650億円とまとまった金額であり、8月にR&Iが格付けをA-格から1ノッチ格上げしたこともあって、投資家からは好感を持って評価されたようである。

これらの他には、三井住友信託銀行の5年債200億円と日本政策金融公庫の2年債300億円などが募集されている。日本政策金融公庫の2年債は、オーバーパーで応募者利回りが0%となっている。高格付けの財投機関やノンバンク等の2年債及び3年債で見られる設定だが、長期から超長期の金利水準が上昇しても、日銀によるイールドカーブコントロールがしっかりと効いている短めの年限の金利水準は動きそうにもない。

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