国内起債市場を斬る 起債評価:11/22~11/26

民間企業の社債発行が増えて来たように見えたものの、火曜日に勤労感謝の日として休日が入ると、実質的に社債等を募集できるのは、木曜と金曜の2営業日に限られてしまう。木曜の25日に社債を募集されたのは、三菱HCキャピタルの3本立て計800億円、日産フィナンシャルサービスの2本立て計900億円に、NECキャピタルソリューションの100億円とノンバンクによる起債ばかりとなったが、金曜の26日は大型起債も含めて、様々な業種の案件が多種多様に登場した。

金曜日の起債の中では、TDKによる3本立ての中の7年債とアシックスの5年債はSPT未達の場合に寄付を行うタイプのサステナビリティリンクボンドであり、大東建託の10年債と北海道電力の起債のうち10年債はグリーンボンドの認定を得ての募集となった。引続きSDGs債券の募集が続いており、起債市場でも完全に定着しているように見える。一般の社債対比での割高感を測定し難いが、こういった起債が増えて来ること自体は、否定的に考えなくて良いだろう。どのような形であっても、多様な新発債が増えることは市場の活性化に通じるし、募集された利回りが適切かどうかを意識し吟味することで、クレジット投資のセンスも養うことが出来るだろう。

この週の起債の中では、前述したTDKが、7年債の他に5年債と10年債を募集して、計1,000億円の大型起債となっており、また、昭和電工も3年債・5年債・7年債・10年債の4本立て計1,000億円の募集で追随した。これらを更に大きく上回る金額を募集したのが、楽天グループによる6本立ての起債であった。年限構成は、3年債750億円・5年債450億円・7年債100億円・10年債850億円・12年債400億円・15年債450億円で、総計3,000億円と稀に見る超大型起債となった。

楽天グループの取得した格付けはJCRのA格であって、必ずしも高格付けとは言い難い。グループで営むビジネスはEC事業の楽天市場に限られず、トラベル、証券、生命保険、損害保険、銀行、カード、野球とネット利用を中核にして多様化している。ECビジネスだけであれば小売業と考えるのが適切であるが、現在では、金融関連を含めインターネットをプラットフォームとしたコングロマリット企業グループであり、今回の起債によって調達した資金の使途は、楽天モバイルによる5G対応に向けた設備投資資金である。

グループの先行きを占うポイントは、楽天モバイルが第4の携帯キャリアーとして定着出来るかどうかであろう。中でも、1年間の基本料金無料をキャンペーンとして提供して来たRakuten UN-LIMITプランは、2020年4月から2021年4月頭までに申込んだ顧客に適用されて来ており、基本無料だから許容されて来た繋がりの悪さも、契約を継続するかどうかに大きく影響することになろう。また、au回線を利用してのローミングサービス提供を、2023年3月末までに順次終了する計画となっている地域も多く、これも契約の継続可否に影響するだろう。

まさに、楽天グループにとっては、モバイル事業で三大キャリアと比肩できるようになるかどうかの瀬戸際にあり、失敗すれば、送料無料基準の強制化で強い反発を受け元々薄利の楽天市場、特典改悪の著しい楽天カードなど、決して好意的な受け止められ方をしていない他事業への影響を無視し得ない。果たして、10年以上の超長期の今回の起債が適切なのかどうか。超長期年限になると、三木谷社長の後継問題も考えねばならない時間帯に入る。格付け対比での利回りは厚いように見えるが、一般的認識よりさらに慎重なスタンスで構えるのが適切ではなかろうか。1%を越える高い利回りは、何らかの棘(とげ)を含んでいると考えておいた方が良いだろう。

コメントは受け付けていません。