国内起債市場を斬る 起債評価:1/31~2/4

引続き起債市場の動きは鈍い。SDGs債の募集が多いのはここ数年では珍しくないが、この週はグリーンボンドでなくソーシャルボンドの募集が相次いだというのは珍しいだろう。債券の特性を考えると、ソーシャルボンドの発行体として相応しいのが、公共セクターであることは間違いない。

2月に入って最初に社債等を募集したのは、成田国際空港であった。5年債100億円・10年債100億円・19年債60億円の3本立てを募集している。新型コロナ感染症下で国際的な人流は減少しているものの、国策会社であって破綻することは考え難い。特に、羽田空港が再度国際化して来た中で、特にLCC運航と国際貨物に差別化し注力して来た成田国際空港の姿勢は新型コロナ下でも、独自の意味合いを持っている。ソーシャルボンドとしての認証を得ていなくても、十分にソーシャルな発行体である。また、金曜日に中部国際空港は10年債100億円を募集しており、こちらはソーシャルボンドとしての認証を得ている。R&Iの格付けが1ノッチ劣ることで、クーポンは成田国際空港より0.2%高く設定されている。必ずしも両社の優劣を付けられるものではないが、格付符号の差が物語るものはある。

都市再生機構は40年債100億円をソーシャルボンドとして募集した。米国や欧州での利上げに向けた動きを受けて日本の長期金利も上昇しており、この40年債のクーポンは0.949%と1%近い水準となった。今後に金利水準がもっと高まると考えるのならば、デュレーションの長い超長期債を購入するのを躊躇する投資家もいるだろう。しかし、こういった絶対水準の高い利回りの債券はそう多くない。ソフトバンクグループの社債や事業会社の劣後債のように、高いリスクを負った社債ならば高い利回りを得られるかもしれないが、信用リスク等による元本毀損の可能性を考えると、超長期の公的発行体による債券というのは一部の機関投資家にとって絶好の投資対象となる。

もう一つソーシャルボンドを募集したのが西日本高速道路で、5年債800億円を募集している。長期金利が上昇しても、日銀のコントロールはまだ短い年限に作用している。R&IのAA+格・JCRのAAA格・ムーディーズのA1格といずれも日本国債と同水準の格付符号を得ている発行体の5年債は、0.1%クーポンに留まる。それでも2か月前に募集した5年債のクーポンは0.04%であったから、倍以上の水準となっているのであるが。

このようにソーシャルボンドは多発されている。しかし、具体的な個別債券の資金使途を見ると、新規のプロジェクトに明確に紐付けられているのならまだ納得できるが、既存の借入金等の借換えといった説明が行われているものも少なからず見られる。果たして、資金使途の開示やトレースは適切に行われるのだろうか。本来的にこれら公共セクターに関しては、文句なくソーシャル性を有しているのだから、厳密な資金区分を行うことなく発行される全てをソーシャルボンドとする等、民間企業の社債と異なる扱いをすべきではなかろうか。これでは、認定機関が漁夫の利を得るだけのように思える。

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