国内起債市場を斬る 起債評価:4/25~5/6

GWを挟む時期は、金利の動き易い時期であるが、起債市場は動きが鈍くなる時期でもある。一つには、日本以外にも、メーデーを祝日として休む国が少なくない。良く知られるのは、新型コロナ感染拡大以前に訪日客の多かったことで知られる中国であるが、他の先進国でもヨーロッパの多くの国が5月1日を祝日としている。その結果、為替だけでなく金利も大きく変動することが少なくない。また、米FRBや日銀の政策判断が行われる時期となっていることもあって、金利水準の動きが大きくなりがちである。更には、3月決算の発表日をゴールデンウィークの前後に予定する企業も少なくない。そのため、金利の変動だけでなく、ヘッドラインリスクも考慮すると、社債等の条件決定や募集を行う発行体は躊躇しがちになる。投資家側も、募集日から払込日まで日数が開くことが考えられるため、投資判断を消極的にする傾向が見受けられる。こうして、発行体と投資家との双方の理由から、この期間の起債市場の動きはあまり見られなくなってしまう。

実際に、4月最終週から5月の頭までに行われた社債等の募集は、4月27日に募集された光通信の2本立てくらいのものである。光通信は、近年、格付けがR&I・JCRともA格にまで高まっていることもあり、長めの年限での起債も少なからず行っている。今回の起債も、5年債150億円および10年債100億円の計250億円とまとまった金額である。しかも、事務主幹事として継続して野村證券が担当しており、日本国内最強の販売網がサポートする形になっている。長期から超長期の金利水準が上昇していることもあって、光通信の10年債に付されたクーポンは1.17%と1%を超える。4月全体を見回しても、1%を越えるクーポンを付された社債等は、東京電力パワーグリッドの15年債、四国電力と九州電力の30年債、日本政策投資銀行と大阪大学の40年債、JR東日本の50年債といった顔触れだけである。10年債で1%を越えるクーポンが付された意義は極めて大きく、光通信の10年債を投資可能と判断するなら、妙味はあろう。

米国の更なる利上げを受けて、為替も株も変動幅が大きくなっており、日銀のコントロール外となっている超長期年限の金利水準も上昇している。このため、社債等の発行コストの増大を懸念する発行体に対して、投資家は従来より高い利回り水準を期待することが可能な状況にある。日本銀行は10年国債に対する指値オペを継続する姿勢を示しているが、何処まで市場介入が有効かは疑問視されており、特に、日米金利差の拡大によって為替が円安方向に動くことの影響が強く懸念されている。円安による輸入物価の上昇が日銀の目標とする2%の物価上昇を数値的には実現可能とするかもしれないが、輸出推進効果の発現がほとんど期待できず、賃金上昇を実現できるような状況にもないことから、スタグフレーションに近い状況の発生が懸念されはじめている。人為的な低金利から日本の金利市場は離脱することが出来るのだろうか。起債市場が活性化するのは、まだ先のことのように思えてしまう状況である。

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