国内起債市場を斬る 起債評価:6/6~6/10

この週の社債等の募集は、6月9日、木曜日にピークが来るという珍しい展開となった。それでも週の後半に募集が多く行われていることには変わりがない。まず、個別に目を引いた起債を幾つか挙げてみたい。中国電力の30年債120億円は野村證券による単独引受案件であり、クーポンは1.25%と高水準になった。円安が進み超長期金利が相対的には高い水準となっているが、決して歴史的に高い水準とまでは言えない。あくまでも、異次元の金融緩和以降の人為的低金利政策下において抑制された水準から、少し上がったという程度である。それでも1.25%が高いクーポンに見えてしまうのは、目線の慣れでしかないのだろう。

次に、アイフルが2年債300億円を募集している。クーポンは0.97%とわずかに1%を割れる水準である。中国電力30年債のクーポンにまでは届かないが、2年債としては明らかに高いクーポンである。かつてアイフルはR&I格付けがBBB-格に満たず、いわゆるハイイールド債の発行体として知られていたが、格上げ後の今回の債券発行に際して取得した格付けはJCRのBBB格である。決して安定性の高い業態とは言い難いが、2年債なら取得可能と考える投資家も少なくないだろう。

アイフルとほぼ似たような年限で起債したのが沖縄電力である。募集したのは3年債200億円で、クーポンは0.18%とアイフルの1/5以下になっている。格付けがR&IのAA格・S&PのA+格・ムーディーズのA1格と高いことに加えて、原子力発電所を有していないアドバンテージも有していることから、電力会社の中では相対的な勝ち組と見られている。もっとも同社の発電所は、水力発電が可能な大規模河川が県内に存在しないため、ほとんどが重油やLNG、石炭の燃焼による火力発電である。風力発電は離島にのみ設置されており、認可最大出力の0.1%のみしか占めない。

この週の起債は、相変わらずSDGs債が中心になっている。グリーンボンドの一つは、相鉄ホールディングスの5年債150億円であるが、資金使途を見ると、新型車両の購入はグリーンであるが、ホームドアの設置はソーシャルとされており、サステナビリティボンドの認定を得ても良かったのではなかろうか。もう一つのグリーンボンドは、サンケン電気の5年債50億円で、資金使途はEV投資とのことである。ソーシャルボンドは、日本高速道路保有・債務返済機構の4年債300億円・15年債100億円・20年債150億円の計550億円と福祉医療機構の10年債100億円といった公的セクターの財投機関債が占めている。

サステナビリティボンドの認定を得たのは、ゼンショーホールディングスの5年債100億円、三井住友建設の5年債50億円の二つで、サステナビリティリンクボンドは、オカムラの5年債50億円がSPT(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)未達成の場合に寄付する形式であった。なお、ENEOSホールディングスの10年債850億円と20年債150億円の計1,000億円はトランジションリンクボンドという目新しいラベルを付されているが、実態はサステナビリティリンクボンドであって、SPTs未達成の場合は、寄付し排出権を購入する仕組みである。引続き、様々なラベルを有した社債等によって、SDGs債発行市場の賑わいが続きそうである。

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