国内起債市場を斬る 起債評価:7/25~7/29

日銀の金融政策決定会合が終わり、米国FOMCを週央に跨ぐ週で、金融政策の変更判断を意識しながら市場をにらむ展開となった。日本では物価の見通しなどに変更があったものの金融政策そのものに変更はなく、米国は市場の予想通りに0.75%の大幅利上げとなった。主に物価上昇へ対応する観点からの利上げであったが、先行きの景気に対するマイナスの影響を懸念する声もあり、金融政策の変更に慎重な日本とは大きく様相が異なる。市場では円安の更なる進行が予想されたものの、米国経済の先行きに対する不安感などもあって、逆に、円高に戻るという展開となった。1米ドル137円程度から次は140円かと皆が予想する中で、急速に132円と逆方向に進んだのだから、為替についての予断は禁物である。

起債市場の動きは鈍い。内外の金融政策の動向を見守るという説明は可能かもしれないが、むしろ第七波と言われる新規感染者数の急増が過去最大のペースであり、一週間当たりでは日本の新規感染者数が世界最多とも言われると、やや市場の動きが停滞するのも無理がないかもしれない。特に、月末というタイミングもあって、公共債の募集もなく(住宅金融支援機構による貸付債権担保財投機関債は前週の金曜日に募集されたため)、ほぼ静かな起債市場となった。次の週は8月第一週となり長期国債の入札などもあって、多少の動きはあるだろうと予想される。

唯一募集されたのが、光通信による7年物社債である。といっても、個人投資家向けに募集されており、火曜日に条件決定され水曜から募集期間がはじまったという展開である。社債の金額は100万円で、比較的投資しやすい設定であろう。取得した格付けは、R&I及びJCRの両方からA格であり、必ずしも高格付けではないかもしれないが、低格付けというほどでもない。

光通信に対する投資判断で難しいのは、業種や信用度への理解だろう。同社は業種として情報通信業に分類されるが、元々は携帯電話の販売代理店として一世を風靡し、その後、ITバブルの崩壊を経て業種転換を行う中、ソフトバンクのように通信業へ自ら参入することはないものの、買収などを通じてインターネット関連を含め様々な事業を複数展開している。主要な事業展開を見ると、個人や中小企業向けの通信回線サービス提供、宅配水の販売、保険商品の仲介などと実に多様である。同社のHPで事業内容として記載されている表現を見ると、「商品・サービスの販売後に使用料などに応じた継続的な収入が見込まれるストック事業を中核事業とし、個人および法人のお客様向けに様々な商品・サービスを広く普及させることを通じて、お客様、取引先様、株主様、従業員、社会などステークホルダーに貢献することを目指す」とあり、ほとんど特定されていない内容である。社債の購入を検討する個人投資家としては、格付け以外にあまり依拠できる材料がないだろう。それでも、7年債で1%というクーポンの高さは魅力的に見える。同社の7年後の姿を予想するのは、専門のクレジットアナリストでも難しいと思われるのだが、利回りの高さに飛びつくこともあるだろう。

コメントは受け付けていません。