国内起債市場を斬る 起債評価:8/8~8/12

新型コロナ感染症第7波の真っ最中であり、「山の日」の祝日が週内の木曜日にあると、起債市場に賑わいは見られない。そもそも旧盆の休み直前でもあり、休日と週末に挟まれた12日の金曜日は、社債等の募集に不向きとなる。そのため、実質的には、社債等を募集する動きは週前半までで終わらざるを得ず、ほぼ9日の火曜日と10日の水曜日の2日間のみに限られることとなる。それでも少ないながら社債等を募集する動きが見られたことが、むしろ驚きをもたらしたかもしれない。

火曜日に募集されたのは、地方公共団体金融機構の10年債250億円である。同機構は10年債を原則毎月募集し、その他の月にも5年債や20年債等を募集しているが、10年債のみという月は大人しく見える。10年債については、利付国債の利回りが月初の入札で決まった後、新発10年物地方債の発行条件によって概ねの水準が定まるため、大きな波乱が起きることはまずない。特に、全地方公共団体からの出資によって設立された同機構は政府保証債の発行体でもあり、政府保証を受けずに発行される債券も、もっとも信用力の高い地方債と同等の信用力を有しているとされることもあって、「スーパー地方債」と見られることが一般的である。今月の10年債は国債対比+13bpsのスプレッドでプライシングされ、出来上がりは0.295%クーポンとなった。実質的に国債と遜色ない信用力を期待できるという判断から、投資家から根強いニーズが集まっている。

水曜日に募集されたのは、電源開発の7年債180億円及び20年債137億円と、中日本高速道路の5年債600億円であった。電源開発の起債は、20年債が137億円と細かく刻んだ金額になっているが、一般担保ではないものの社債管理者を設置した社債であるため、1億円単位の募集金額にすら拘る必要はない。これまでの市場慣行としては、ほとんどの募集額は10億円単位となっていたが、足元の数週間では、細かく1億円単位での募集が幾つか行われていることに注目しておきたい。投資家のニーズにきめ細かく対応しているためと見るか、購入ニーズが減退しているのか、理由は様々のようであるが、市場慣行が変化してきているようだ、という見方が強いようだ。

中日本高速道路の5年債は、日本高速道路保有・債務返済機構による併存的債務引受条項が付されているため、実質的には財投機関債と同等の信用力があるとみなされており、格付けもR&IのAA+格・JCRのAAA格・ムーディーズのA1格といずれも日本国債と同水準の符号である。同社は、米ドル建ての社債に関してグリーンボンドの認定を得て発行している例はあるが、円建て社債ではソーシャルボンドの認定も取得していない。米ドル以外にも、ユーロ建てや豪ドル建て、NZドル建て、更には人民元建ての起債も行っており、色々な取り組みに積極的な発行体である。

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