国内起債市場を斬る 起債評価:2/27~3/3

ようやく2022年度の起債市場の最終局面に入った。もっとも例年にはない不確実要因が3月第2週に予定されている。黒田総裁の下での最後の金融政策決定会合が、3月9日(木)と10日(金)に開催されるのである。本来であれば、年度末に向けて起債市場が盛り上がる時期なのであるが、金融緩和が修正されるかどうか予測が難しい中で、発行体も投資家も、今は慌てては動きにくい。そのため、起債市場で社債等の条件決定を行われるピークが翌週頭にずれ込む可能性もあると考えられる。春分の日の休日を考慮すると、14日(火)や15日(水)あたりまでは、社債等の募集が行われてもおかしくない。

2月末から3月頭にかかる週の起債市場で目立ったのが、一つはメガバンク関連の社債である。三菱UFJフィナンシャルグループはTLAC対応債を4本計2,325億円募集しており、三井住友フィナンシャルグループは個人投資家向けの劣後債2本計1,000億円を条件決定し募集を始めている。三井住友フィナンシャルグループの劣後債は、ブレット10年債以外に期限前償還条項が付されたものもあり、実質5年債として個人に募集されていることだろう。機関投資家は期限前償還の仕組みを十分に理解しているだろうが、個人投資家は期限前償還がスキップされたら、さぞ驚くことだろう。金融庁の指導・監督の下でメガバンクの持株会社がコールをスキップすることは考え難いが、期限前償還条項を付した社債も、いわゆる仕組み債の範疇に入ると考えることが可能である。特に、コールオプションの売りポジションを含めることでクーポンのかさ上げを図っているのだから、デリバティブを活用した仕組み債という金融庁の指摘事項には十分に合致しているのであるが。

もう一つ目立ったのが、SDGs債である。アサヒグループホールディングスは3本立ての内5年債250億円のみがグリーンボンドであり、東北電力の10年債100億円および20年債50億円はトランジションボンド、南海電鉄の5年債100億円はサステナビリティボンド、東洋紡の5年債200億円はサステナビリティリンクボンド、日本製鉄の5年債300億円および10年債200億円はグリーンボンド、大栄不動産の5年債25億円はグリーンボンド、国際協力機構の2年債205億円はソーシャルボンドと、ずらずらと主要な類型がすべて列挙されるように登場している。投資家とすればESG等への配慮を表明することが可能であり、発行体としても資金調達の名分が立つのであるから、双方ともに損はない。債券の残存期間に求められる情報開示は手間かもしれないが、クーポンの押下げ効果が期待できるのであり、引き受ける証券会社も販売に苦労せずに済むなら、三方一両得となることが期待できる。引き続き、起債観測の上がっている社債等には、グリーンボンドなどが多く見られており、年度末に向けた起債ラッシュはSDGs債が主役の一つになるものと予想される。

コメントは受け付けていません。