国内起債市場を斬る 3月期決算シーズン特集:日本で信用危機は起きるか

日本の直接金融を担う資本市場は、株式と債券とで成り立っている。しかし、欧米と大きく異なる要素としては、債券に関しては、間接金融の形態である金融機関による融資が過半を代替していることがある。こういった基本構造以外にも、債権など資産の証券化といった派生的な金融手段も存在するが、大きくは融資及び債券と株式という構造だと理解していれば良い。証券会社は債券と株式の仲介を行い、資本市場と投資家との間を繋ぐ。金融機関は預金等の形態で資金余剰主体から集めた資金を、貸付によって資金不足主体に繋ぐ存在である。現在の日本の資金循環を見ると、家計と企業が資金余剰主体になって、政府と海外とが資金不足であるという歪な構造になっているのが、残念である。日本の優良企業では無借金経営を誇る例が少なくないが、コーポレートファイナンスにおける負債によるレバレッジ効果を考えると、調達した資金でより高い収益を上げ株主に還元する努力を行わない企業経営者側に問題があると言わざるを得ない。これこそ一種のエージェンシー問題である(依頼人Principalと代理人Agentの間に生じる利害対立問題のこと。代理人が依頼人の意向通りに業務を遂行するとは限らないことから生じる非効率性を、エージェンシーコスト。)。

日本株が高値を更新し、新年度入りしてからやや上値は重くなりつつあるが、3月期決算企業の決算発表を乗越え、来期の収益予想が出揃って来たところで、新しい発射台に乗り込んだものと見て良いのではなかろうか。日経平均株価が1989年末のバブル経済当時の最高値を更新しているが、日経平均株価はNYダウ工業株30種平均ほどではないものの、業種構成を考慮した上での優良企業の株価の特殊平均である。合併・統合のみならず、企業業績が優秀でなくなると組み入れ銘柄からは外れる。1989年末と現在の日経平均株価で共に組入れられている銘柄ばかりではない。日経平均株価は、その時々の優良企業の株価指数なのだから上がって当然であり、PER等で見るとバブル経済期のような異常な水準の高値とまでは至っていない。

株価が大きく下落するような状態になると、株価との連動性が高い低格付け銘柄の信用スプレッドが拡大することがある。また、社債発行残高の大きな低格付銘柄が破綻するような事態があれば、信用スプレッドが全般的に大きく拡大することもなる。かつてのリーマンショック直後のように流動性が低下する事態が現出すると、高格付け銘柄の信用スプレッドも拡大するといった展開があり得ないことではないが、基本的に金融緩和が継続されマネーが市場に潤沢に提供されている現状では流動性に対する懸念は小さい。信用スプレッドの拡大を懸念するのは、低格付け銘柄についてだけで良いのではないか。日本国債の格付けについての懸念が全くないとは言えないが、既に海外系の格付会社による格下げがあっても、社債市場のスプレッドに影響することはないと思われる。また、国内系格付会社による評価も、野放図な財政出動といった事態にならない限り、変化はないことが期待される。

結局のところ、一部の発行体や先行きに対する懸念のある特定業種において、信用不安が拡大する局面(98年のジャパンプレミアムの再来)はあるかもしれないが、行き過ぎた信用スプレッドのタイトニングに対する反動以上のものは生じ難いと思われるし、そもそも信用スプレッドが拡大する方向の兆しを見つけること自体が難しい。当面、日本において信用危機が生じる可能性は小さいのではないか。一部の負債比率の高い社債発行企業に対する懸念が囁かれているが、万一の場合には、貸し込んでいる金融機関の経営問題に拡大することが想定され、到底、too big to fail(TBTF:大きすぎて潰せない)であると考えざるを得ない。したがって、信用スプレッドが大きく拡大するような局面があれば、まずは絶好の買い場を提供することになると考えて良いだろう。もしバブル経済の崩壊や中国の不動産危機のような事態になれば、中長期的な経済全体の崩壊危機といったことになるのだが、そういった兆候はまだ見られていないものと信じておきたい。

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