国内起債市場を斬る 起債評価:6/10~6/14

起債市場の季節的爬行性(はこうせい)には、毎年のことであっても驚かされる。前週まで金曜日を中心に社債等の募集が集中していたものが、突然、募集等がほとんど見られなくなった。日本の上場企業の多くが3月期決算を採用しているため、四半期の決算短信を公表する時期や株主総会の時期は集中する。そのため、6月の中旬以降になると、社債等の募集が減ってしまうのである。一部の12月期決算の企業や小売セクター等で2月等の異なる決算期の企業もあり、他にも財投機関債等の異なるサイクルの発行体があるので、全く募集がなくなる週は珍しい。この週も、地方公共団体金融機構が5年債210億円・10年債350億円・20年債200億円とまとまった額の債券を募集しており、その他にも北海道電力が10年債60億円を募集している。なお、地方公共団体金融機構の5年債はグリーンボンドの認定を得ている。

今年の6月のこの週の特殊事情としては、13日および14日に開催された日銀の金融政策決定会合において利上げもしくは国債買入れの減額方針が決定されると見られていたことがある。発行体が金利上昇前の募集を希望しても、投資家の購入意欲を減退している時間帯であったことは間違いない。結果的には、具体的な減額計画の決定が7月に行われることになった。そのため、例年であれば6月末までの3月期決算企業の株主総会シーズンを越え7月に入ってから起債ラッシュになるが、次回の決定会合が7月末に設定されていることを考えると、今年の7月は発行体と投資家の間で微妙な駆け引きが行われることになりそうだ。

この微妙な時期に影を差すのが、三菱UFJモルガンスタンレー証券を主幹事から外す動きである。日本の現在の起債市場においては、ほとんどの案件が野村證券・SMBC日興証券・大和証券・みずほ証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券の5社のいずれかによる事務主幹事で募集されている。共同主幹事や引受シ団に入る証券会社はもっと多いが、発行体と交渉を行いプライシングの中核となる証券会社は、実質的にこれら5社に限られているのである。その一角に対して、M&Aに関する非公開情報を顧客の同意を得ぬままグループ内の他社と情報共有したことで、証券取引等監視委員会は金融庁への処分勧告を発出している(三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社は、ファイアーウォール規制違反の容疑で金融庁は勧告を受け、業務改善命令などの行政処分を出される方向)。具体的な処分についてはこれからになるが、金融庁からの処分が通知され、それを受けて業務改善計画書を受領してもらえるまで、投資家は処分期間中の取引会社との取引を見合わせる可能性が高い。コンプライアンスや説明責任が強く意識される現在の資本市場においては当然であろう。

そのため、募集される社債等の消化に支障を来す可能性があり、既に公的な発行体や一部の社債募集を予定する事業会社において、三菱UFJモルガンスタンレー証券を主幹事から外す動きが見られている。おそらく7月の起債シーズンには、ほとんどの案件が同様な展開になるのではなかろうか。逆に、三菱UFJモルガンスタンレー証券を主幹事に残す発行体は、当該証券との癒着した関係など、投資家から痛くもない腹を探られかねない。7月の起債市場は金利水準の動向だけではなく、色々な意味で微妙な展開になる可能性があるものと考えておいた方が良いだろう。

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