国内起債市場を斬る 起債評価:12/5~12/9

さすがに12月の起債市場は、案件が多いだけではなく、募集される社債等の業種も幅広く別世界の盛り上がりである。500億円以上の大型案件だけを見ても、三井住友フィナンシャルグループの永久劣後債が2本立てで計1,070億円、中日本高速道路の5年債750億円、地方公共団体金融機構の5年債・10年債・20年債の計610億円、JERAの三本立て劣後債計965億円と、劣後債を中心に錚々たる顔触れになっている。その一方で、R&IのBBB格であるプレミアムウォーターホールディングスは3年債と5年債の計46億円と小額の募集になっているのが目を引く。

業種としては、ノンバンクや電力関連、鉄道といったところが目立っているし、メーカーによる起債も少なくない。また、財投機関債を中心とした公共セクターでも活発な起債が見られている。中でも、9日の金曜日に募集された中で、10年物の財投機関債3本は比較してみると面白い。具体的には、国際協力機構、福祉医療機構、沖縄振興開発金融公庫という発行体である。国際協力機構と福祉医療機構がソーシャルボンドで、沖縄振興開発金融公庫はサステナビリティボンドになっている。いずれもR&Iによる格付けは、日本国債と同等のAA+格であるが、相対的に起債頻度の多い国際協力機構のみが国債対比+31bpsと他の二つよりタイトなスプレッドで、0.559%クーポンでの起債となっている。残りは、同対比+32.5%bpsの0.574%クーポンである。確かに国策との距離感やS&PからもA+格の評価を得ているなど、国際協力機構には発行体として一日の長があるのだろう。

なお、同日に募集された日本高速道路保有・債務返済機構の4年債及び19年債の計250億円の財投機関債もソーシャルボンドの認定を得ており、以前から指摘して来たように、財投機関債は基本的にソーシャルボンドとしての適格性を有することが広く認められつつある。ソーシャルボンドに加えてグリーンボンドの特性も有すると、沖縄振興開発金融公庫のようにサステナビリティボンドとなる構造である。また、東京工業大学の募集した40年債(東京工業大学つばめ債)は財投機関債ではないが公共セクターによる起債であり、サステナビリティボンドの認定を取得しての募集となっている。

募集された社債等のクーポンの絶対水準を意識してみると、低格付けのプレミアムウォーターホールディングスの5年債が10億円とほぼ実質的な最小額の募集であるが、2.1%クーポンとなっている。また、JERAの募集した劣後債は、電力関連のプレミアムが乗ったこともあって、早期償還が5年で可能となる35年債ですら2.144%クーポンとなっている。他の37年債と40年債(いずれも早期償還によって実質的には7年債及び10年債となることが期待される)も、2%を越えるクーポンが付されていることも興味を引く。前週に募集された沖縄電力の劣後債では、7年後に早期償還の可能となる30年債は2%を下回るクーポンであったことを考えると、格付けや募集金額の差だけでなく、実質的には火力発電専業に近いJERAがESGの観点から投資家に敬遠されている可能性は否定できない。沖縄電力が原発を保有していないために、他の電力関連の発行体とは明らかに異なる位置づけにあると理解すべきであろう。

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