国内起債市場を斬る 起債評価:5/14~5/18

ようやく起債市場の動きが活発になってきた。公的セクター以外に、電力、運輸といった定番の他、メーカーの起債も見られるようになっている。しかし、何と言っても、運輸セクターの20年債が乱れ飛んだのが特徴だろう。運輸セクター以外の20年債は、中国電力の7年債との2本立て、九州電力の10年債との2本立て、日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債が募集されている。ただし、電力と道路機構であるから、運輸とは極めて近いセクターである。

運輸の20年債を含めた起債は、以下の通り募集されている。名古屋鉄道の100億円、南海電鉄の100億円、東武鉄道の100億円と、単体での募集が行われている。それ以外に、東京地下鉄は10年債・20年債・30年債・40年債を各100億円募集しているし、ANAホールディングスも100億円募集している。格付けで並べると、もっとも高いのが東京地下鉄のAA(R&I)及びAAA(JCR)格で、次がA(JCR)格の名古屋鉄道、続いて、A-(R&I)格の東武鉄道とANAホールディングス(ANAホールディングスはA(JCR)格も取得)があり、もっとも低いのがA-(JCR)格の南海電鉄となる。国債対比のスプレッドは、東京地下鉄が+10bpsで、名古屋鉄道が+21bps、東武鉄道が+22bps、ANAホールディングスが+28bps程度、南海電鉄が+34bpsとなる。概ね格付けの序列に沿った形になっているが、名古屋鉄道と比べると、東武鉄道がややタイトなように見える。

しかし、社債の売行きは格付けやスプレッドとは必ずしもリンクしなかったようである。運輸の20年債の中で順調に消化されたのは、名古屋鉄道、南海電鉄、東武鉄道で、やや苦戦したのが東京地下鉄とANAホールディングスである。売行きを左右したのは、信用力に見合ったスプレッドが付されていたかどうかであり、格付けは必ずしも信用力そのものを指し示す指標ではない。また、投資家も自らの発行体しの信用分析に自信を有しているとは限らない。格付会社が数年程度しか見通せない中で、投資家が20年もの信用度を評価することには当然限界が生じる。したがって、投資に際してのもう一つの判断基軸は、既発債の流通市場の実勢対比となる。東京地下鉄やANAホールディングスの20年債が、消化に苦戦したのは、明らかにセカンダリー対比で割高な募集を強行したからである。

それでも、運輸や電力といった業種は20年債の募集に適していると考えて良いのである。これが、一般的なメーカーの場合や、ビジネスの時間軸がより短いノンバンクである場合には、目先の利回りだけを考えて超長期の与信を行うのは怖い。途中で売却するのであれば良いが、信用力の変化や金利水準の変動を考えると、超長期の与信行為には慎重になるべきである。十分な覚悟を持たずして、超長期の与信を行うことは許されないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:5/7~5/11

引続き、起債市場の動きは鈍い。1年前を振り返っても、ゴールデンウィーク明けの木曜と金曜になって、ようやく四国電力の10年債及び20年債、電源開発の10年債、地方公共団体金融機構の10年債、日本高速道路保有・債務返済機構の20年債、それに住宅金融支援機構の5年債及び10年債が募集されただけである。今年の場合も同じタイミングになって、前年と同じ顔触れが、四国電力の10年債及び20年債、地方公共団体金融機構の10年債、住宅金融支援機構の5年債及び10年債と揃っている。それら以外にも、住宅金融支援機構は30年債を募集し、森ビルの20年債に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債及び15年債が募集されている。

結局のところ、前年と同じ年限を募集した銘柄は、住宅金融支援機構の5年債を除くと、いずれも10年債か20年債であり、2018年のみに募集された銘柄も、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債以外は、すべて超長期債であった。日本銀行執行部が新体制になっても、イールドカーブコントロールの継続が明示されている。そもそもオーバーシュート型コミットメントにおいても、2%の物価安定の目標が安定的に持続するまで、強力な金融緩和を継続することが示されており、金利が上がらないのであれば、利回り確保を超長期債で狙うのは妥当な投資である。金利上昇が確実視されるならば、デュレーションの大きな超長期債は、例えクーポンが高くても、価格変動性の高さから忌避されるだろう。超長期債が売れるのは、投資家が金利上昇リスクを強く感じていないことの表れと考える。

超長期債の抱えるリスクは、単にデュレーションの大きさから来る価格変動リスクのみではない。発行体の信用力が毀損される信用リスクも、償還までのエクスポージャーが長ければ、それだけ大きなものになる。倒産確率の推移からは、信用力の低い銘柄は早期に消滅するために、超長期のリスクが低いと考えられることもあるが、それが誤りであることは自明であろう。信用リスクに晒される期間は短い方が良いに決まっている。超長期債の信用リスクは、償還年限の長さと連動しないが、むしろエクスポージャーという意味で、期間概念を伴うのである。多くの投資家は単なる理屈からだけでなく、信用リスクの構造を本質的に理解しているために、無闇な超長期債投資を行わないのである。

この週に募集された超長期債のうち、財投機関債については信用リスクを懸念する必要性は決して大きくない。通中に業務遂行されているならば何らの問題もないし、仮に収支構造が悪化したとしても、公的サービスとして必要な業務であるならば、国からのサポートが期待できる。つまり、国と一体視できるかどうかなのである。民間企業の場合にも、業務の重要性や国からのサポートなどが、超長期債投資に際しての重要な要素となる。そういう意味では、電力会社は不動産会社に勝るだろう。それでも、同じ20年債で四国電力の0.738%クーポンと森ビルの0.97%クーポンを並べると、決して後者が割安とは思うべきではないのではないか。

国内起債市場を斬る 大型連休特別号:4月の起債を前年と比較する

長く起債市場を見続けていると、起債のパターンがいつの間にか身についている。年度の初めには、どういった起債パターンアが多いものか。例年似たような状況が演出され、そう異なるものではない。2017年と2018年の4月の起債を比較してみよう。

業種という意味では、電力、ノンバンク、財投機関を含む公共セクターといったところが定番である。2018年度の最初に募集されたのは、4月5日の中国・北海道・北陸と電力会社であった。一方、2017年度も最初の4月7日は、中国・北海道の電力2社に、電源開発、さらには、JR東海と西日本鉄道の鉄道2社、日本政策投資銀行の財投機関債が募集されている。2018年度も、日本政策投資銀行と西日本鉄道は4月6日に債券を募集しているのだから、スタート銘柄の顔触れは、大きく異なるものではない。

しかも、2017年度の4月11日に社債を募集した東京センチュリーは、2018年度の4月6日に社債を募集している。2017年4月10日の週に機関投資家向けの社債を募集した残りの企業としては、日立キャピタル・関西電力・三菱UFJリース・トヨタファイナンス・東北電力・JR西日本・高砂熱学工業・DIC・ブリヂストン・北陸電力といったものがあったが、既に触れたように北陸電力は2018年4月5日に電力債を募集しているし、その他でも、2018年4月10日にDIC、4月11日に三菱UFJリース、4月13日にトヨタファイナンス・関西電力が、4月17日に日立キャピタルが、4月18日にJR西日本とほとんどの発行体が今年も4月中に社債を募集している。

メーカーの起債も、変に似通っているかもしれない。既に両年度に顔を出した銘柄として、DICを挙げたが、2017年4月に社債を募集した銘柄は、上述のDIC・ブリヂストンの他に、岡村製作所(現オカムラ)、宝ホールディングス、テルモ、豊田自動織機といった顔触れであった。2018年4月はDIC以外に、住友化学・デンカ・クラレ・サントリーホールディングス・デンソーが社債を募集している。共通するのは、業種である。両年に出てくるのは、豊田自動織機及びデンソーの輸送用機器、宝ホールディングス及びサントリーホールディングスの食料品、それに、DIC・住友化学・デンカ・クラレと化学である。年度の初めに化学メーカーが起債するのか、単なる偶然なのだろうか。鉄鋼とか機械とかが出てこないのも面白い。2017年は5月に入ると、鉄鋼メーカーであるJFEホールディングスと新日鐵住金の社債が16日に募集されている。今年も同様の展開になるような気もする。

国内起債市場を斬る 起債評価:4/23~4/27

起債市場はGWが近付く頃になると、3月期決算の発表を受けて、動きが鈍くなる。これは例年のパターンであって、特に違和感はない。前週までは、財投機関債や電力、ノンバンクといった起債が目立ち、本数だけなら四半期毎の地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が幅を利かせていたのである。ところが、4月最終週ともなると、債券の募集は激減である。条件決定から払込までの期間を考えると、どうしてもGWの存在が邪魔してしまうのである。営業日ベースでは数日でも、カレンダーベースだと1週間を越えるといったことになりかねないのである。GWの日本以外にも、レーバーデイの休暇が入る国はあるが、海外の多くの国ではこのタイミングでの大型連休はあり得ない。その間の市場変動を怖れると、カレンダーの面でも債券の募集と投資は、両サイドからためらわれるのである。

わずかに募集された社債の中では、単独引受となった三井不動産の10年債が売行き難航したことが知られている。近年はイールドカーブ全体の水準低下もあって、利回りを求める投資家がクレジットリスクを負って投資年限を長くすることが見られる。しかし、そもそも不動産の10年という年限は、不動産価格のみならず経済の変動サイクルを考えると、アップサイドとダウンサイドとを経験する可能性が高い。よもや三井不動産のデフォルトを意識しなければならないようなことは考え難く、社債の時価評価に目を瞑り(つむり)元利金の支払だけを考えるならば、よっぽどの日本経済の変動や三井不動産のもので想定できないような不祥事の発生しない限り、このリスクを負うことに心配はないと見るのであろう。それでも、時価評価を考えるならば、現状で、R&IでA+格とJCRでAA格という格付けが上限に変動する可能性がないとは言えないのである。特に、東京オリンピック等を控えて、建設のみならず日本経済全般が上昇基調にある中では、ダウンサイドの意識を持たざるを得ない。

今回の起債は国債対比+24bpsでプライシングされ、クーポンは0.305%の水準で1000億が募集された。翌日に募集された格付けがA(R&I・JCR)格のニフコの10年債が国債対比+33bpsでプライシングされ、また、前週末に募集されたデンソーの10年債が国債対比+27bpsであったことを考えると、明らかにタイトという評価になる。デンソーの格付けは、R&IでAA+格である。幾ら3年限併せて900億円の大型起債だったとは言え、格付けが3ノッチも上の社債よりタイトなスプレッドというのでは、投資家も手がなかなか出ないだろう。100億円の小額起債だから可能になったプライシングなのではないか。

国内起債市場を斬る 起債評価:4/16~4/20

いよいよ起債市場がフル稼働を開始した。と言っても、もう1週間でGWになるし、3月期決算の発表を迎えるタイミングであるために、起債がどんどん出て来るということはない。本数という意味では、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債が17本もあったために、大きくなっている。一方で、発行体の顔ぶれとしては、相変わらず公共セクター、ノンバンク、電力が目立っているが、前週に引続き、メーカーの社債も少なからず募集されている。

この週の起債で一つ注目すべきなのが、25年債の募集であろう。新発国債の年限が10年、20年、30年という刻みになっているため、間の年限の募集は多くない。まだ、15年債の募集は時に見られるが、25年債というのはレアであろう。そもそもイールドカーブのフラットニングが日銀による金融緩和で促されていなくても、超長期年限のカーブはコンベキシティ(Convexity:コンベクシティは、デュレーションの直線に対して、凸状の曲線となる)の影響を受けて、なかなか立ち難い。その中で、25年債は20年債に対して利回り面での投資家にとってのアドバンテージが出にくいのである。一方で、発行体側からすると、なぜ25年債なのかというのが、内部的には説明が容易でない。そもそも20年を超える超長期債の募集をできる業態が限られることに加えて、30年債を募集すれば足る可能性が高いのである。状況によっては、25年債を設定することで、利回りが特定のハードルレートを超える可能性もあろう。しかし、この週に募集された25年債は、日本政策投資銀行と四国電力である。前者は0.723%クーポンと、意識されたかもしれない0.75%に満たないし、同様に、後者も0.962%クーポンと1%の絶対水準を確保できていない。結局のところ、中途半端な起債にしか見えないのである。いずれの起債もみずほ証券による単独募集であり、今後、25年債が市場に定着するかどうかに注目しておきたい。

もう一つの注目銘柄は、サントリーホールディングスのハイブリッド債である。60年債であるが、期限前償還条項の付された劣後債であり、5年経過以降、複数回のクーポンステップアップがスケジュールされている。当初5年の0.39%から、6ヶ月円Libor対比+57bps、同対比+82bps、同対比+157bpsとクーポンのスプレッドが拡大することで、期限前償還を誘導するのであるが、果たして長期間経過した時のサントリーホールディングスの信用力はどうだろうか。なまじ食品という人間のもっとも基礎的な生活財を取扱っているために、風評被害等のヘッドラインに晒(さら)されがちである。昨今の健康ブームの中で、アルコール飲料からサプリ等の健康食品へのシフトは顕著に見られるが、海外展開の遅れに懸念は強い。もっとも、全般的に日本のビール、食品メーカーの立ち遅れは、日本の人口減少を考えると、現状維持ですら容易でないと見ざるを得ない。果たして無事に早期償還されるのだろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:4/9~4/13

前週に募集された銘柄は、財投機関、電力、ノンバンクに商社と鉄道という顔触れであったが、この週は、ノンバンクに電力、地方公共団体金融機構に化学メーカーとなった。前週からの再登場がノンバンクに電力で、目新しいのが化学メーカーである。

 

前週に募集された電力債は、中国電力、北海道電力に北陸電力であったが、この週に東京電力パワーグリッドと関西電力が募集した結果、残りは中部電力、東北電力、四国電力、九州電力、沖縄電力となった。前年の4月は、中国電力・北海道電力→関西電力→東北電力→北陸電力→九州電力といった募集順であった。東京電力パワーグリッドの募集は昨年度前半が安定していなかったために外すとすれば、順当に電力債の募集が進んでいると言って良いだろう。

 

今週は、東京電力パワーグリッドと関西電力がともに10年債を募集している。前者のクーポンが0.77%で、後者のクーポンが0.435%と水準が大きく異なっている。関西電力の20年債はクーポンが0.759%と、東京電力パワーグリッドの10年債を下回っている。投資家がどの銘柄・年限を好むかは、自明であろう。ただし、東京電力パワーグリッドの格付けは、BBB+(R&I)格及びA(JCR)格と、関西電力のA(R&I)格及びAA-(JCR)格と各々2ノッチの差がある。この差が利回りの違いにどう反映しているかを考える必要があるだろう。

 

化学メーカーとしては、住友化学が10年債200億円及び20年債300億円、DICが5年債100億円を募集している。年限の面で無理のないのは5年債だろうし、利回りで魅力的なのは20年債であろう。住友化学の20年債は0.9%クーポンであり、同日に募集された地方公共団体金融機構の30年債の0.85%クーポンを上回る水準である。20年債は当初200億円程度の募集予定から、募集金額が300億円に増額されたが、10年債は200億円に留められた。引続き、年限によっては、慎重な発行条件の決定が必要であるということだろう。

 

ノンバンクの社債は年限が中短期、超長期と分散しているが、いずれも消化状況は良好なようである。特に、クレディセゾンの20年債は、ノンバンクとしては長過ぎると思える20年債であるが、0.99%クーポンとすることで、投資家の需要を集めたようである。3年債については、もはや日銀オペ見合いの強いニーズがあることは否定する必要もないだろう。株式ETFの購入もそうだが、日銀による強力な金融緩和の副作用が随所に現れている。金融政策で掲げた目標を達成できるのであれば良いが、副作用ばかりが顕在化しており、これが長期に続いていることをどう考えるべきか、そろそろ真剣に議論すべきと考える。

国内起債市場を斬る 起債評価:4/2~4/6

2018年度の起債市場の幕開けである。当然のように、10年長期国債の入札から10年物市場公募地方債と進んで、それから財投機関債や民間の社債の募集となる。もっとも現在では、市場公募地方債も個別に条件が決定されるために、10年債だけを取っても、募集は2週間程度で分散して行われる。社債や財投機関債は、さらに、日程が区々である。もっとも、近年は休み明け直ぐを避け、追い詰められたかのような金曜日の募集が多く見られている。実際のところ、募集に関しては当日の午前中にはほぼ終わっているだろうから、すっきりして週末を迎えられるということだろう。

今年度の頭は、いつもの顔触れと言って良いだろう。財投機関、電力、ノンバンクに商社と鉄道が加わって、業種としてはお馴染みのところである。財投機関債は、日本政策投資銀行の3年・5年・10年の三本立てに、住宅金融支援機構の5年・10年・20年の三本立てが募集されている。前者は合計900億円、後者は合計700億円で、二つの発行体だけで系1,600億円を募集したのである。もっとも日本政策投資銀行は3年債200億円と5年債400億円、住宅金融支援機構は5年債500億円で、中短起債のウェイトが大きく、市場を荒らすような展開とはならなかった。

電力債は、中国電力10年、北海道電力10年・20年、北陸電力20年と発行体3社が募集したものの、金額は合計でも700億円に留まっている。月央にも東京電力パワーグリッドの起債観測があるようで、投資家は無理して購入していないようだ。結果的に、割高感のあるタイトなスプレッドとなった中国電力の10年債は苦戦したようである。どうも10年債が苦戦する傾向にあるのは、住友商事の売行きでも同様である。住友商事は今回の起債が第55回債と決してフリークエントイシュアーではないのでレアモノ、グッドネームを期待するところだが、利回りが思わしくないと年度初めだからといって、投資家が飛びつくようなことにならない。

相変わらず売行きの良いのが、20年債であることは言うまでもない。北海道電力のクーポンが0.754%、西日本鉄道が0.753%と、10年債0.3~0.4%程度のクーポン対比では倍近い。年間の利息収入を確保するという目的からは、早いタイミングで高いクーポンの債券を買うのが手っ取り早い。しかも、電力や鉄道といった信用リスクが低く安定していると考えられる業種の債券は、より魅力的である。どうやら今年度も、日銀オペ見合いの3年債と超長期債が良好な売行きとなる「ダンベル市場」の可能性が高そうだ。

国内起債市場を斬る 年度初特別号:2018年度の起債環境は

平成30年度である。しかし、予定ではその次の年度は途中で平成31年度から新元号の元年度に変わるために、頭の切替えが求められることになる。官庁では元号の使用が一般的であるが、民間での使用は強制されるものでもない。有名な元号法の文言を見ても、条文は「元号は、政令で定める。元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」の二つしかない。若者を中心に元号離れが進むのではないか。特に、新しい元号は、次代の天皇陛下がよほど長く公務を取られない限り、平成を大きく越えることにならないのではないか。30年程度の元号が数代続くならば、元号の使用は敬遠されるだろう。

とりあえず、日銀の新執行部を現政権が指名し国会の承認を経たため、金融政策は当面変更がないものと期待される。米FRBは利上げを実施しているものの、長期金利への大きな影響はない。仮に米長期金利が上昇して円安が進めば、日本も金利上昇へと誘導する可能性がわずかにある。しかし、円安は輸入物価上昇を通じて、物価全般の水準を押し上げる可能性がある。そういう意味では、輸出の低迷から企業業績を圧迫しない限り、金融緩和は継続されるだろう。つまり、中東や極東の政治的な混乱による金融市場の変動がない限り、金利の上昇は期待し難いのではないか。

加えて、信用スプレッドの変化もなかなか難しそうである。企業業績は一般的に良好であり、賃金の上昇は限界的であり、その他の物価も不動産路線価格の一部を除いては安定的である。企業収益を押し下げる要素はなかなか見当たらない。東京オリンピック前に建設や不動産がボトルネックに陥る可能性がないとは言えないが、中国マネーの撤退などがあったとしても、信用スプレッドの大幅な拡大に繋がるインパクトがあるとは思えない。規制の変更や資源の枯渇といった外部環境の変化も想定される範囲にはない。

当面、金利先高感がないので、起債が殺到することもないだろうし、投資家も淡々としたスタンスでの社債購入を続けるのではないか。無理して買い急ぐ構造にはないし、タイトなスプレッドの社債を敢えて購入する必要もないだろう。もっとも安倍政権が崩壊した場合に、政府からの支援を失った日銀執行部がどのように判断するかは見物であるが。景気が回復しても失速しても、金利や信用スプレッドの変化を期待できないというところに、日本経済の根深い病根があるようにも思える。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/19~3/23

前週、某紙に報じられたように、今年最後の社債募集は20日のSBIホールディングスによる3年債と5年債の2本立てとなった。近年の年度末最後の社債募集を見ると、2017年3月は15日の大王製紙・東京建物・名古屋銀行(劣後)であったし、2016年3月は11日のサッポロホールディングス・三井不動産・SBIホールディングスといった顔触れであった。SBIホールディングスは、2年前も年度内最後の起債を行っていたのだが、11日と20日ではまったく日程が異なる。ちなみに、2015年3月は13日のオリエンタルランド、2014年3月は19日の光通信・タカタと今年と同じくらいのギリギリ起債であった。しかし、後に破綻したタカタの名前がこのようなところで上がって来るのは、意味深であるのかもしれない。

2016年3月にSBIホールディングスが募集したのは、第7回3年債150億円であった。今回は第13回3年債180億円と第14回5年債180億円である。格付けは、2016年当時からR&IのBBB格であったが、クーポンがまったく異なることに驚かされる。第7回3年債は1.1%クーポンと、現在ではまったく考えがたいような水準である。今年募集された社債のクーポンは、3年債が0.45%と半分以下で、5年債ですら0.7%である。既にマイナス金利政策による影響があった時期であるから、ベースとなる金利水準自体の変化ではなく、SBIホールディングスに対する投資家の信頼度アップや利回りを求める姿勢の強さ等が反映されたものであると考えられる。今回の起債に際しても、両年限100億円程度の募集予定が各180億円まで積み上がっており、投資家の購入ニーズの強さを反映しているのである。

年度内の起債は終わりを告げた。引き続き株価は不安定さを見せているものの、リスクオフ展開の影響から10年国債利回りは低下気味にある。期間収益を意識する投資家は新年度入りして早々の社債購入を希望する可能性もあるが、低過ぎる利回り水準を嫌気して、国内クレジット投資から手を引いてしまう可能性もある。金利水準次第では、新年度の投資家の社債購入姿勢は、大きく変化するだろう。特に、米国の利上げ見通しと株価の状況次第で、日本の社債か米国の社債かを選択する可能性があり、為替や周辺市場からも目が話せない展開になるものと考えられる。既に幾つかの銘柄の起債観測が確認されており、ブラック企業や事業会社の劣後債とかも名前が上がっているようだ。4月の10年長期国債の入札は3日の火曜日に予定されており、早ければ第一週から起債に向けた動きが高まることだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/12~3/16

どうやら今年末は、いつまでも社債の募集は終息しないようだ。16日が最後の募集日になるかと思われたが、この日に募集された社債の払込日は23日か26日であり、月内払い込みの「駆け込み起債」という意味では、まだ数日の余裕は残っている。20日に募集するという起債観測も上がっており、なかなか年度末とならない。既に某起債評価の年度内ノミネートは締切られており、これらの起債は対象外になってしまうものと思われる。

12日からはじまる週の債券募集はサムライ債等があり、16日の金曜日になって、社債の募集が行われる展開となった。しかも、野村総合研究所は、円建ての10年債と同時に、オーストラリアドル建ての5年債も募集している。短中期の募集は日産フィナンシャルサービスの3年債250億円及び5年債150億円、光通信の5年債といった顔触れが並んだ。長期債では、野村総合研究所の10年債200億円に住友倉庫の7年債50億円があった。そして、超長期債が、光通信の15年債400億円及び住友倉庫の20年債100億円である。

これらの中でもっとも売行きの良かったのが、光通信の15年債だっただろう。100億円程度の発行予定で募集が開始された後で、最終的には400億円の発行となったのである。そもそも光通信の格付けは、R&IのBBB+格及びJCRのA-格であり、過去の買入償却事件や業績の大幅な変動もあって、超長期の与信に耐えられる銘柄とは考え難い。それでも投資家の人気が集まったのは、1.79%という高いクーポンである。8日に募集された三菱地所の40年債のクーポンは1.313%であり、それよりも40bps以上高い利回りだったのである。三菱地所の40年債でさえ、不動産に対する40年の与信が懸念されるところであるが、光通信への15年の与信も決して安全とは思えない。投資家の尺度は、目先の絶対水準に惑わされて、「背に腹」の判断を下さざるを得ない状況に変わりつつあるのかもしれない。

その他の起債についても、総じて順調な販売状況であった。投資家も年度内の募集が残り少ないことを認識しており、資金消化と利回り確保とのバランスを考えざるを得ない。金利の先高感がない中では慎重に案件を見極めて行くしかないが、債券の保有期間というタイムホライズンを意識して発行体や業種を評価しないと、現状がいつまでも続くことはない。物価は、日銀が引上げようとしても上がっていないし、金利は日銀の強いコントロール下にある。これらの動きが変われば、物価が上がって、日銀が金利操作を放棄することも予想できる。それが、何年後に来るか誰も計ることはできないが、投資家の保有する債券の価値が激変することは、間違いないのである。