国内起債市場を斬る 起債評価:7/9~7/13

関東甲信の例年にない早い梅雨明けから、西日本を中心とした広い範囲の豪雨被害と、7月に入って季節感は夏が強まっている。多くの公立学校は、三連休明けの1週間が終わると夏休みに突入する。一方で、起債市場は夏休み感がないどころか、夏休みに入る前にしっかり起債をしておきたいという動きで賑やかである。起債市場の夏休みは、例年だと8月の第2週あたりからであり、7月は四半期頭の起債も多く見られ、華々しい展開になるところである。

相変わらず日銀の強力な金融緩和が、社債の起債条件をも支配している。代表的な一つが、3年債の募集である。この年限は、現在の国債イールドカーブではマイナス利回りに沈んでいるものの、一般債のマイナス利回りは持ちきりの投資家には不向きである。ところが、日銀の社債買入れオペに適格な起債は、0.01%や0.001%といったギリギリの低クーポン(必要な場合には、オーバーパー発行)で募集し、セカンダリーはマイナス利回りで日銀に持ち込むのである。前週の日立キャピタル3年債250億円に加え、豊田自動織機の3年債300億円も、同様の起債である。100億円単位でなく、少しまとまった額で募集されるのが特徴である。信用スプレッドを潰(つぶ)(つぶ)し、発行体の起債条件を有利にするのが目的の社債買入れであるが、既に市場のゆがみをもたらすモノでしかなくなっている。ところが、政策目標である2%の物価上昇を実現できてないために、緩和手段の縮小ができない矛盾に晒(さら)(さら)されているのである。

もう一つの金融緩和による影響が超長期債の募集である。イールドカーブを寝かせ、信用スプレッドをタイトにした結果、投資家が利回り水準を求めるためには、より年限を長期に伸ばすしかなくなったのである。前代未聞の低金利であるから、発行体側には超長期の資金ニーズが存在する。しかし、その中には、この企業に超長期の与信をして大丈夫か、投資家は十分な信用評価を行ったのか、超長期の信用評価をどのように行ったら購入判断を導き出せるのか判断さえしきれないというものも、珍しくない。この週の超長期での社債募集は、永久劣後債を除くと、京阪神ビルディングの15年債、東レの20年債、京阪ホールディングスの20年債、関西電力の20年債、東京ガスの20年・30年・40年債といった顔触れになる。

伝統的には、超長期の起債が相応しいとされる業種は、鉄道や電力・ガスといった公益企業であり、特に、料金に対して公的機関の介入があるものが安全とされて来た。しかし、近年の金融環境では、そういった状況が崩れている。投資家が利回りを求めるために、業種に関してある程度の柔軟性が高まっている。メーカーや不動産の超長期債が募集される背景には、投資家からの利回りニーズがある。だが、将来に金融環境が変化した際に、デュレーションが大きく、価格変動性の高い超長期社債は脆弱である。東日本大震災の後、東京電力の超長期債は単価を大きく下げたために、取得コストによっては減損の対象にすらなる状況となったのである。超長期債の投資家は、特に保有銘柄の発行体の信用状況変化に留意しなければならない。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/2~7/6

7月に入ると、起債市場の要素は一変する。株主総会の集中する時期を越えて、しかも、年度の第2四半期に入ったのである。四半期の頭というタイミングで、様々な業態の起債が動き出す。典型的な発行体としては、財投機関、電力、ノンバンク、銀行といったところであるが、7月の5日6日の二日間で、この業種が全て動いている。しかも、総合商社や鉄道も動いたのだから、なかなかの起債ラッシュ感が出ている。

電力で動いたのは、電源開発が10年債200億円及び20年債100億円、中国電力が5年債100億円及び10年債200億円、北陸電力が10年債200億円、九州電力が10年債200億円及び20年債100億円の計1,100億円となった。厳密な意味では電源開発債は電力債でないが、現在でも社債管理会社を設置している。10年債の国債対比スプレッドは九州電力以外が+32psで、九州電力が+35bps。20年債は電源開発が+21bpsで、九州電力が+24bpsであった。R&Iの格付けで九州電力のみがA格で1ノッチ低いことなどを、反映したものである。

ノンバンクでは、日立キャピタルが3年債250億円及び5年債と10年債が各100億円、三菱UFJリースが5年債200億円及び10年債100億円、NECキャピタルソリューションが5年債及び10年債各100億円と計950億円を募集している。格付けがR&IのA+格である日立キャピタルと三菱UFJリースの10年債は国債対比+32psと、電源開発や中国電力と同じスプレッド水準であった。NECキャピタルソリューションは、格付けがBBB+格と異なる水準であり、国債対比スプレッドは公表されていないが、クーポンは0.62%と、三菱UFJリースの10年債プラス27bpsあり、単純計算すると国債対比+59bpsということになる。なお、銀行では新生銀行が5年債100億円を募集している。

財投機関としては、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債各200億円と20年債100億円の計700億円を募集しており、四半期の頭を強く意識させる動きとなっている。10年債の国債対比スプレッドは+16.5bpsと電力やノンバンクよりも、タイトな水準である。この他、20年債のみを募集したのが、三井物産と京浜急行電鉄の2社というのも、今後の起債市場の展開を占う動きであった。R&IでAA-格の三井物産は、A格の九州電力に比べて1bpワイドなスプレッドで募集されている。電力債の一般担保効果もあるが、JCRでA+格の京浜急行電鉄は国債対比+20bpsと更にタイトなスプレッドになっており、投資家が利回りの絶対水準を求める傾向と、業種によって超長期債投資に対する姿勢の異なることがわかる。

国内起債市場を斬る 起債評価:6/25~6/29

株主総会の集中する28日を挟むと、起債市場は動きづらい。でも、集中日は3月決算企業のスケジュールであり、それ以外のタイミングが決算の企業は、逆に募集に適した期間とも言える。もっとも投資家の多くは3月決算であり、社債等の購入者側が動き難い可能性もあるのだが、基本は供給者である発行体の問題である。

この週に社債を募集したのは、イオンモールと東京都競馬の2社である。前者は2月末決算であり、後者は12月末決算である。前者が2月末決算であるのは、親会社であるイオンが小売業で、2月末決算を採用しており、それにタイミングを合わせているものと考えられる。小売業の多くが2月末決算としているのは、3月末が年度末で大きく商売が増えるタイミングであり、逆に2月・8月は気候的にも売上が少なくなるものが多いからである。極めて合理的であり、すべての企業が3月末決算を採用しなければならないというものではない。

いずれの社債も順調に消化された模様であるが、イオンモールの起債は年限構成が面白い。最終的に募集したのは、3年債150億円、7年債100億円、10年債200億円、20年債50億円の計500億円と巨額に上っている。3年債は日銀オペ見合いという特殊ニーズがあるとしても、それ以上の年限については、やや投資家側の判断は起債が少ない中で視力が鈍っているのではないかという危惧を感じさせる。特に、少ない額であるが、20年債の募集については、積極的に投資する理由を見出し難い。クーポンが1.05%と絶対水準の高さを確保しているとは言え、親会社のイオンにおける小売業の苦戦は否定できない。総合スーパーが既に時代遅れであるだけでなく、ミニストップはコンビニの中でのポジショニングに苦戦している。近年は金融等に事業を拡張しているものの、将来の限界が見えはじめている。特に、アマゾン等ネットショッピングに対する劣位は顕著である。

加えて、イオンモールの主なビジネスであるショッピングモール自体が廃れはじめている。地方では、イオン等の総合スーパーを中核とするショッピングモールが出店し、既存の商店街をシャッター閉鎖に追い込み、その後、人口動態の変化等を反映して撤退するという減少が散見されている。つまり、ショッピングモールのディベロッパーについては、明確な限界が見えはじめているのである。米国でのトイザラスの破綻は、ショッピングモールの一翼を担った重要小売店舗が、インターネットショッピングに勝てないことを示している。日本のような人口減少社会で地方の消滅が迫っているとされる中で、イオンモールの長期債や超長期債に投資することが正しいのだろうか。単なる利回りの問題ではないのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:6/18~6/22

社債等の募集はほとんど見られない。基本的には株主総会シーズンである。公的セクターは、民間企業の株主総会という影響はないが、市場全般の動きに乗った形と考えるべきである。もっとも財投機関債等の多くは四半期の頭に募集されることが多く、四半期末の6月には公的セクターも動きが鈍りがちである。この週に募集された起債で目立ったのは、グリーンボンド、ソーシャルボンドである。

まず、グリーンボンドを募集したのが、三菱地所である。5年債200億円が募集された。当初は100億円程度という募集観測であったが、最終的に200億円の募集となっている。常盤橋プロジェクトの資金として募集されたとのことである。株式におけるESG投資と同様に、債券における類似の投資としてグリーンボンド等の購入が注目を集めている。投資家のファッションという雰囲気もあるが、利回りが通常の社債と同水準であるのなら、グリーンボンドへの投資を喧伝(けんでん)する価値はあるかもしれない。しかも、すべての発行体が募集可能なものではなく、業種や事業内容によって制限されることになる。今回の募集も投資家からの強い人気が見られている。

ソーシャルボンドを募集したのは、国際協力機構である。過去にも起債経験があり、今回は10年債150億円と20年債100億円を募集している。10年債は100億円程度の募集とされていたが、150億円に増額されている。国債対比のスプレッドは、10年債が+17bpsで、20年債が+5.5bpsである。2週間前に募集された同じR&IのAA+格とS&PのA+格を取得している地方公共団体金融機構は、10年債+17bps、20年債+4.5bpsの国債対比スプレッドであった。クーポンも大きく異ならず、ほぼ同水準である。ソーシャルボンドだからと言って、タイトなスプレッドになる必要はないのである。国際協力機構のミッションは、ソーシャルボンドの認定を得るに適したものである。

中央の機関投資家の一部は、グリーンボンドやソーシャルボンドの購入を積極的に開示しているが、果たしてそれは収益獲得を目指す投資家としては必ずしも重要なことではないのかもしれない。実際には、すべての投資家が購入をメディアに対して表明しているものではない。グリーンボンドやソーシャルボンドがそれなりの頻度で募集されている中では、当然に、購入対象にするかどうかの判断が必要となる。需要超過で購入できないものもあるだろうが、投資対象から外すという判断を行っている場合もある。市場に投資判断の内容を知られないためには、安易に購入銘柄を公表すべきではないし、求められても拒否し答えないことも必要なのではないか。

国内起債市場を斬る 起債評価:6/11~6/15

株主総会シーズンが近付き、自然と起債の波は沈静化する。前週は起債金額が大きくなったが、打って変わって静かな市場である。決して日本銀行の金融政策決定会合を注視したというような展開ではない。民間の起債ではメーカーによるものが目立った。公的セクターでは、東日本高速道路が1年債をはじめて募集している。社債の歴史を振り返っても、珍しい年限選択である。償還年限に明確な理由のある際にしか募集されない。クーポンが0.001%で発行単価が100円00.1銭というオーバーパー発行であり、応募者利回りは0%となる。既に公的セクターの2年債ではこうした条件設定は珍しくないが、マイナス金利環境でしかお目にかかれない代物である。

メーカーの起債は、まず、三井化学が7年債100億円・10年債150億円・20年債100億円の計350億円を募集している。格付けはR&IのA-格とJCRのA格であり、あまり高過ぎないことが、人気を集める要素となっている。10年債と20年債は、当初の予定より増額されている。確かに、20年債のクーポンは0.9%であり、月初に募集された東北電力の20年債よりも高水準となっている。都市再生機構の30年債を越えるクーポン水準というのも、面白い条件設定である。

残りの2銘柄はいずれも5年債が募集されている。格付けは、花王がR&IのAA格と高水準で、YKKも同じくAA-格とほとんど負けていない水準である。前者は250億円で、後者は100億円を募集している。どちらも起債頻度は多くなく、前者が第5回債で後者が第12回債。YKKは非上場会社であるが、有価証券報告書を提出し、発行登録を利用して公募社債による資金調達を行っている。かつてはレアな存在であったが、近年は上場持株会社の傘下にある銀行等が公募社債を募集することも珍しくなく、非上場会社の社債も普通になった感がある。なお、YKKについては、株式非上場が方針であり、同社のサイトには” 現在、当社は、当社株式を証券取引所に上場する予定はありません。“と明記されている。

両社の5年債は、いずれも0.08%クーポンとされている。翌日に募集されたR&IのAA+格である東日本高速道路の5年債はクーポンが0.07%であり、あまり変わらない水準である。メーカー2社の社債は、同日に募集されたが、いずれも順調に投資家の需要を集め、問題なく消化されたようである。希少性のある銘柄が、タイミング良く募集された結果であろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:6/4~6/8

起債ラッシュというムードは出てこない。条件決定された本数を見ても決して多くはない。しかし、条件決定された金額を単純に合計すると、1兆円を越えてしまう。週単位の条件決定額が1兆円を超えるのは、それだけで大型起債があったと連想する。この週に関しても大型の条件決定があった。しかし、1兆円を越える金額のうち、個人向け社債が約5千億円と半分近くを占めているのが特徴である。もっとも、機関投資家向けの募集は財投機関債などを含めて、6千億円以上あるのだから、起債ラッシュを感じるべきなのかもしれない。特に、8日金曜日の案件集中度合いは強い。

個人投資家向け社債の条件決定の中で、金額の小さいものから挙げると、四国電力の3年債125億円と九州電力の3年債150億円がある。いずれも0.14%クーポンであり、銀行預金が年限を問わず、ほとんど利息が付かない中では、個人投資家にとって投資妙味のある条件であろう。しかも、電力の小売自由化が実施されたとは言え、依然として、発電の大手は地域電力である。新規参入した発電業者も、小売に参入した売電業者も、決して大きなシェアとはなっていない(それでも、ガスの小売自由化に比べると、電力の小売は自由化が進んでいるのだが)。しかも、他の多くの個人投資家向け社債と異なって、10万円から投資できる。

700億円を条件決定したのが、みずほフィナンシャルグループである。劣後債の形態であり、シニア債より回収順位が劣るのであるが、個人はその差をほとんど意識していないだろう(言い換えると、目論見書を渡されるだけで、営業から回収順位の説明を口頭で受けるケースは稀なケースと想像する)。公的資金が投入された場合には、元本が削減されることも、あまり意識されない可能性が高い。5年後の期限前償還条項が付されており、それを前提に5年物で0.4%クーポンもあれば、かなり高い利回りに見える。みずほ銀行やみずほ証券等の持株会社であるが、その構造的劣後性を意識する投資家も少ないだろう。”Too big to fail”であると誰もが想像する発行体なのである。しかも時間軸は5年であると考えられている。もし金融庁が期限前償還の不実行を容認するような状況になったら、日本の金融秩序のみならず、資本市場全体が大いに混乱しているのだろう。まさに想定外の事態でしかない。なお、社債の販売単位金額は、100万円である。

最大の4,100億円を条件決定したのは、ソフトバンクグループである。機関投資家向けの400億円と同時に、個人投資家向けの6年債を条件決定している。機関投資家向けのクーポンは1.569%と刻んでいるが、個人投資家向けの社債は1.57%クーポンである。最低投資額は100万円である。格付けはJCRのA-格であり、機関投資家向けは国債対比+164bpsと格付け対比明らかに分厚いスプレッドが付されている。同社の事業内容やM&A等の経営活動、創業者リスク等を考慮したものであり、機関投資家は相変わらず慎重な姿勢を崩していないが、個人投資家は馴染んだ携帯電話キャリアということで、問題なく消化されることだろう。特に、個人投資家は保有社債の時価変動を考慮しなくて済むのが強い。

国内起債市場を斬る 総会シーズン特別号:「悪名は無名に勝る」

「悪名は無名に勝る」というのは、政治の世界で良く言われる言葉である。古くは、渡辺美智雄元副総理(故人)や竹中平蔵氏がよく引用したいた名言である。清廉潔白で公明正大な政治家でも、そのことが十分に知られていなければ、有権者からの支持は得られない。もちろん犯罪行為に手を染めたり、倫理的に許されない行為が報道されたりでは、師事を失う可能性が高いものの、軽微な致命傷にならないような問題であれば、そのことが報道されることから、得票に繋がるという現象を指す。実は、日本の起債市場においても、同様の現象が確認されることもある。

社債投資に際して発行体の信用力評価は必須である。ただし、内部に十分なクレジットアナリシスの能力がない場合には、外部機関による格付けでそれを代替することが経済合理的である。ただし、信用評価のスプレシャリストである格付会社も、その評価材料は発行体から公表されているものに加えて、インタビュー等の内部資料、更には業界分析といったものに限られる。しかも、近年は、対外公表しない内部情報を格付会社のアナリストにだけ提供することには、抵抗感が強い。その結果、格付けの有効なタイムホライズンは発行体の中期経営計画対象年限を業界見通しによって数年伸ばす程度に限られる。

結局のところ、格付けを援用することとしても信用力評価に限界がある以上、投資判断において重要な要素となるのが発行体の知名度である。合議制の投資家であれば、聞いたことのない発行体に対する投資を稟議書で上に上げたり、投資判断を行う会議に付議することは相対的に容易でない。知名度があり一般的なイメージを共有できている発行体の方が、投資の社内承認を得ることが容易である。時として、それが“悪名は無名に勝る”という結果に繋がることがある。

B to Bの企業よりも、B to Cの展開を行っている企業の方が、身近であり投資対象になり易い。この週における最大額の社債募集を行ったファーストリテイリングは、まさに、そのような評価に則っているかもしれない。ファーストリテイリングという社名を知らなくても、ユニクロやGUの親会社であると聞けば、知らない人はいない。今回は、10年債1,000億円を含む、5年債・7年債・20年債で計2,500億円を募集している。格付けこそJCRのAA格ではあるが、格付会社にファーストリテイリングの20年後がイメージできるはずもなく、創業者の現代表取締役会長も89歳におなりになっている(スズキの3代目代表取締役会長は現在88歳だから、非現実的とは言えない・・・)。そもそも、近年の展開を見ても、青果や靴など失敗して撤退した事業があり、海外展開も成功と失敗を繰返している。一方でこの会社の強みは、失敗した際の撤退の判断が早い点、とも言われており評価も高い。しかし、10年、20年といった長期の与信を軽々に行ってよい投資先ではないと考えるのは普通であろう。日本における過去の社債デフォルト例で目立っているのは、建設と小売である。そのことを投資家は、忘れてはならない。

国内起債市場を斬る 起債評価:5/21~5/25

決算発表は終わったが、起債の動きは決してアクティブとは言い難い。まず目立ったのがノンバンク。三井住友ファイナンス&リースが5年債で、三菱UFJリースが2.5年債と7年債・10年債の3本立てを募集している。両社は格付けが、R&IのA+格及びJCRのAA-格で揃っており、どちらもメガバンク系と似たような位置付けである。今回の起債は年限が重ならず、おぼろげながらもイールドカーブが描ける。いずれも、問題なく消化された模様であり、特に三井住友ファイナンス&リースの5年債は、200億円の発行になっている。

次に、前週の民鉄ラッシュ(名鉄・南海・東武・東京メトロ)に遅れて、東京急行電鉄が10年債と20年債を募集している。格付けはR&IのA+格及びJCRのAA-格と、前述のノンバンクと同水準で、東京地下鉄を除く前週の鉄道会社より高水準である。同じ20年債の国債対比スプレッドを比べると、東急電鉄の+19bpsに対して、名鉄が+21bps、東武が+22bps、南海が+34bps、東京メトロが+10bpsという位置付けである。名鉄や東武と比べると、東急電鉄のスプレッドは格付け対比で厚く見える。ただし、スプレッド水準が相対的に厚くても、利回りの絶対水準が低いために、利回りの水準そのものを意識した投資家には好まれない結果ともなり得る。クーポンで見ると、東急電鉄は0.723%で、名鉄が0.748%、東武が0.758%、南海が0.878%、東京メトロが0.638%である。なお、東京メトロの20年債は消化に苦戦しており、東急電鉄も10年債より20年債が売れなかったのは、こうした構造の影響があるのだろう。

募集された金額という意味では、三菱UFJフィナンシャルグループの募集したバーゼルⅢ適格 Tier2債が、10年固定0.535%クーポンで400億円、10年NC5の期限前償還条項付当初0.37%クーポンで600億円の計1,000億円が、最大の貢献であった。

今後期待される起債の顔ぶれとしては、シャイアの買収に要した資金を社債で調達する(厳密には、金融機関からのブリッジローンで買収した後に、社債で固定する)と報じられている武田薬品の起債を待つまでもなく、間もなくファーストリテイリングの4本立て計2,500億円程度や、ソフトバンクの個人投資家向け4,100億円といった巨額の社債募集が予定されており、暫く大型起債によって高水準な募集金額になる展開が確実視されている。金余りの日本の金融市場には相応しいのかもしれない。

国内起債市場を斬る 起債評価:5/14~5/18

ようやく起債市場の動きが活発になってきた。公的セクター以外に、電力、運輸といった定番の他、メーカーの起債も見られるようになっている。しかし、何と言っても、運輸セクターの20年債が乱れ飛んだのが特徴だろう。運輸セクター以外の20年債は、中国電力の7年債との2本立て、九州電力の10年債との2本立て、日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債が募集されている。ただし、電力と道路機構であるから、運輸とは極めて近いセクターである。

運輸の20年債を含めた起債は、以下の通り募集されている。名古屋鉄道の100億円、南海電鉄の100億円、東武鉄道の100億円と、単体での募集が行われている。それ以外に、東京地下鉄は10年債・20年債・30年債・40年債を各100億円募集しているし、ANAホールディングスも100億円募集している。格付けで並べると、もっとも高いのが東京地下鉄のAA(R&I)及びAAA(JCR)格で、次がA(JCR)格の名古屋鉄道、続いて、A-(R&I)格の東武鉄道とANAホールディングス(ANAホールディングスはA(JCR)格も取得)があり、もっとも低いのがA-(JCR)格の南海電鉄となる。国債対比のスプレッドは、東京地下鉄が+10bpsで、名古屋鉄道が+21bps、東武鉄道が+22bps、ANAホールディングスが+28bps程度、南海電鉄が+34bpsとなる。概ね格付けの序列に沿った形になっているが、名古屋鉄道と比べると、東武鉄道がややタイトなように見える。

しかし、社債の売行きは格付けやスプレッドとは必ずしもリンクしなかったようである。運輸の20年債の中で順調に消化されたのは、名古屋鉄道、南海電鉄、東武鉄道で、やや苦戦したのが東京地下鉄とANAホールディングスである。売行きを左右したのは、信用力に見合ったスプレッドが付されていたかどうかであり、格付けは必ずしも信用力そのものを指し示す指標ではない。また、投資家も自らの発行体しの信用分析に自信を有しているとは限らない。格付会社が数年程度しか見通せない中で、投資家が20年もの信用度を評価することには当然限界が生じる。したがって、投資に際してのもう一つの判断基軸は、既発債の流通市場の実勢対比となる。東京地下鉄やANAホールディングスの20年債が、消化に苦戦したのは、明らかにセカンダリー対比で割高な募集を強行したからである。

それでも、運輸や電力といった業種は20年債の募集に適していると考えて良いのである。これが、一般的なメーカーの場合や、ビジネスの時間軸がより短いノンバンクである場合には、目先の利回りだけを考えて超長期の与信を行うのは怖い。途中で売却するのであれば良いが、信用力の変化や金利水準の変動を考えると、超長期の与信行為には慎重になるべきである。十分な覚悟を持たずして、超長期の与信を行うことは許されないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:5/7~5/11

引続き、起債市場の動きは鈍い。1年前を振り返っても、ゴールデンウィーク明けの木曜と金曜になって、ようやく四国電力の10年債及び20年債、電源開発の10年債、地方公共団体金融機構の10年債、日本高速道路保有・債務返済機構の20年債、それに住宅金融支援機構の5年債及び10年債が募集されただけである。今年の場合も同じタイミングになって、前年と同じ顔触れが、四国電力の10年債及び20年債、地方公共団体金融機構の10年債、住宅金融支援機構の5年債及び10年債と揃っている。それら以外にも、住宅金融支援機構は30年債を募集し、森ビルの20年債に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債及び15年債が募集されている。

結局のところ、前年と同じ年限を募集した銘柄は、住宅金融支援機構の5年債を除くと、いずれも10年債か20年債であり、2018年のみに募集された銘柄も、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の10年債以外は、すべて超長期債であった。日本銀行執行部が新体制になっても、イールドカーブコントロールの継続が明示されている。そもそもオーバーシュート型コミットメントにおいても、2%の物価安定の目標が安定的に持続するまで、強力な金融緩和を継続することが示されており、金利が上がらないのであれば、利回り確保を超長期債で狙うのは妥当な投資である。金利上昇が確実視されるならば、デュレーションの大きな超長期債は、例えクーポンが高くても、価格変動性の高さから忌避されるだろう。超長期債が売れるのは、投資家が金利上昇リスクを強く感じていないことの表れと考える。

超長期債の抱えるリスクは、単にデュレーションの大きさから来る価格変動リスクのみではない。発行体の信用力が毀損される信用リスクも、償還までのエクスポージャーが長ければ、それだけ大きなものになる。倒産確率の推移からは、信用力の低い銘柄は早期に消滅するために、超長期のリスクが低いと考えられることもあるが、それが誤りであることは自明であろう。信用リスクに晒される期間は短い方が良いに決まっている。超長期債の信用リスクは、償還年限の長さと連動しないが、むしろエクスポージャーという意味で、期間概念を伴うのである。多くの投資家は単なる理屈からだけでなく、信用リスクの構造を本質的に理解しているために、無闇な超長期債投資を行わないのである。

この週に募集された超長期債のうち、財投機関債については信用リスクを懸念する必要性は決して大きくない。通中に業務遂行されているならば何らの問題もないし、仮に収支構造が悪化したとしても、公的サービスとして必要な業務であるならば、国からのサポートが期待できる。つまり、国と一体視できるかどうかなのである。民間企業の場合にも、業務の重要性や国からのサポートなどが、超長期債投資に際しての重要な要素となる。そういう意味では、電力会社は不動産会社に勝るだろう。それでも、同じ20年債で四国電力の0.738%クーポンと森ビルの0.97%クーポンを並べると、決して後者が割安とは思うべきではないのではないか。