国内起債市場を斬る 起債評価:9/3~9/7

起債可能な時期は決して短いわけではない。しかし、週初めの月曜日はマーケットの状況確認や投資家のニーズ調査もあって、募集には向いていないとされる。また、国債の入札は火曜日や木曜日に設定されていることが多い。国債の募集は必ずしも社債等の募集に関係ないのであるが、募集される年限の入札が行なわれる時は、水準確認の意味もあって、社債等の募集は見送られることが普通である。また、日銀の量的質的金融緩和によって、証券会社の債券部門も近年は収益性が低下しているために人員を削られている。その結果、国債の入札に注力するため、入札日に社債の募集を躊躇する傾向が見られる。利付国債の年限が増え、流動性供給入札が毎月複数回行なわれており、日銀と財務省の双方から社債の募集日が圧迫されていると見ることができるのかもしれない。

この週に募集された社債(財投機関債を除く)を本数で見ると、火曜日が3本、水曜日が3本、木曜日はゼロ、金曜が14本と偏っている。一方で、募集金額で見ると、火曜日が1,000億円、水曜日が750億円、金曜日が2,080億円と偏りは是正される。これは火曜日に、日本たばこが3本で合計1,000億円募集したためである。もっとも一本で500億円募集した銘柄が、水曜日の三井トラストホールディングス、金曜日の東京電力パワーグリッドとあったために、金額の偏りが是正されている。1回号が100億円以下で募集された社債が、金曜日には9本もあり、本数と金額のアンバランスが生じている。

火曜日に3本で合計1,000億円募集した日本たばこの社債は、売れ残ったとされている。利回りの低い5年債を600億円としたこともあり、また、総額1,000億円という大型起債にしては全般的に利回りが足らなかったとされる。しかも、日本たばこの事業領域については、食品や薬品についての懸念は大きくないが、メインのタバコに関しては、先進国で軒並み抑制傾向が強くなる中、買収等で海外展開を強めていることは、リスク要因と考えられる。これから東京オリンピックに向けて、東京都内の飲食店におけるタバコ規制が強化されることが予定されており、日本たばこが活路を見出そうとしている電子タバコも、先行きは明るくない。昔ながらの一般担保付社債として募集されているが、それだけでは、投資家の懸念を払拭することは出来ないようである。電力会社のように、停電したら生活に大きな影響が出るような企業とは異なるのである。

因みに、日本たばこが毎年実施している喫煙者率調査によると、2017年の日本人の平均喫煙率は男性が28.2%、女性は9.0%だったそうで、男性の喫煙率はピーク時(1966年)の83.7%から半世紀を経て、約3分の1まで減少したが、世界的に見るとまだ決して低いとは言えない水準であり、WHOの「世界保健統計2016」では、日本の男性喫煙率は128カ国中60位で、G7各国の中では最も喫煙率が高かったとのことである。(2018年5月22日時事)

次の週末が三連休となることもあり、社債等の募集は9月10日の週に多く集まるようである。起債観測は、電力や運輸だけでなく、メーカーも幾つか上がっており、週後半に向けて盛り上がるようだ。なお、北海道電力の起債見送りは地震によるものであるが、それ以外にも、金利水準等の環境変化から起債を延期する動きが見られている。足元だけでなく、先行きの金利水準を慎重に見極めようとしているようである。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/27~8/31

上期末の起債ラッシュがはじまっている。特に、週後半の集中度合いは、なかなかのものである。金額面では、野村ホールディングスのTLAC債が1,000億円を募集しているが、本数ではノンバンクや電力、陸運が稼いでいる。

中でも、陸運は、鉄道中心であるが、やや長めの年限で多く募集されている。日立物流はレア物でありながら、7年債・10年債・20年債と各100億円を募集した。日立製作所という元々の親会社(現在の出資比率約3割)を盛っている強みに加え、佐川急便の持株会社であるSGホールディングスからも約3割の出資を受けており、また、福山通運とも提携していることで、決して日立グループ依存ではない。鉄道以外の陸運業で20年債というのは珍しい年限だが、事業基盤の強さが評価されたものと考えられる。

日立物流以外の陸運は、いずれも鉄道で、京成電鉄の10年債及び20年債各100億円、西日本鉄道が10年債100億円を募集しており、安定した業種特性が年限に強く反映されている。両社とも格付けはJCRのA+格であり、揃って募集した10年債は国債対比スプレッド+29bpsとクーポン0.395%で同じ水準になっている。

電力では、中国電力が10年債及び19年債各100億円と関西電力が5年債と10年債各300億円を募集している。東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故、原子力発電所の運転停止といった一連のイベントの影響を受けた電力会社に対するネガティブな評価は、徐々に薄らいで来ており、起債額が大きくなり、年限も超長期債の募集が可能になってきている。それでも、中国電力と関西電力の格付けは、R&IではA+格で横並びであるが、JCRではAA格とAA-格で1ノッチ差があり、10年債のクーポン及び国債対比スプレッドは7bpsほど関西電力が高くなっている。これは関西電力の原発依存度が高いことを反映したと考えられるが、募集金額の大きさも影響している可能性がある。

この週の社債募集は、割と業種で年限が揃っているように見える。業種によって、適切と考えられる調達年限が変わるためもあるが、本来的には既存債務の償還スケジュールなどから調達年限が異なる可能性も少なくない。この種に社債を募集したノンバンクはリコーリースとJA三井リースで、どちらもリース会社であり、募集年限は、3年債と5年債各100億円と同じであった。格付けが、リコーリースがAA-(JCR)格と高く、JA三井リースはA-(R&I)格及びA(JCR)格と2ノッチ低い評価であるが、3年債は同じ0.05%クーポンで募集され、5年債のクーポンは0.19%と0.2%で1bpしか差は付いていない。3年債は日本銀行による社債買い入れオペの対象となることが期待されており、そのために格付けの差がクーポンに反映されなかったと考えられる。これも強力な異次元の金融緩和によって生じた市場の副作用と見ることができよう。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/20~8/24

旧盆の休みが終わると、ここから9月中旬までは起債集中シーズンとなる。3月決算企業の決算発表等イベントがなく、発行体の条件決定は比較的自由であり、投資家も上期末を意識しながら、ポジションの積上げや購入計画の遂行を図る時間帯である。需要と供給のマッチし易いタイミングと言って良いだろう。7月前後の市場にあった先行きの金利上昇懸念は、日銀によってイールドカーブコントロールが微修正されたために収束してしまった。実際のところ、8月中旬の10年国債利回りを見ても、ほぼ0.1%前後の水準で安定しており、0.1%を超えることがあるのは以前こそ異なるものの、結果として大きく超えることはない。市場の沈静化を受けて、投資家も社債を買い易くなっているだろうし、発行体も債券の募集をし易い環境なってきている。

既に17日から財投機関債の募集は開始されていたが、その後も22日には財投機関債の募集が行われている。これらはいずれも財投機関債というだけでなく、20年・30年・40年といった超長期債の募集であった。どんなに金利水準が欲しいと言っても、企業の寿命が30年程度(日本の企業の中には、千年単位のものもあるが)と見られている中では、超長期債の投資対象は自ずと限定される。自然な流れとしても財投機関債等の公的セクターは、超長期債の中でも投資し易いものとなる。この時期に再開された起債市場の募集が超長期の財投機関債からはじまるというのも、良くも悪くも象徴的である。

この週の起債は、その後、民間企業によるものに続くのであるが、典型的な業種と考えられるノンバンクや電力・ガス、鉄道だけでなく、メーカーまでが早々と募集に動いたのが珍しい。超長期債を募集できるのは、公共セクターを除くと実質的に電力・ガスに鉄道と業種が限られている。JR西日本は30年債と40年債の二本立てを募集しており、小田急電鉄も20年債、東邦ガスは30年債を募集している。一方、九州電力は5年債と10年債の二本立てで、メーカーなどと同じような年限を選択している。

これら以外では、東洋紡とニチレイが奇しくも同じ7年債を募集している。格付けはJCRによって同じA格を取得しているが、クーポンは東洋紡が0.29%とニチレイより4bps高い利回りになっている。確かに一般消費者に対する知名度といえば、ニチレイの方に馴染みがあると考えられるが、ニチレイはみずほ証券の事務主幹事、他三菱UFJモルガンスタンレー証券・野村證券・SMBC日興証券と3社幹事なのに対し、東洋紡がSMBC日興証券の単独主幹事という構造格差に起因するものもあるかもしれない。東急不動産ホールディングスも5年債と10年債という無難な二本立てであった。不動産業種という面では、これくらいの年限が適切なのかもしれない。

国内起債市場を斬る 夏季特別号:格付け変更の明暗

アベノミクス効果もあり、近年の企業業績は概ね良好である。先月公表された日銀短観を見ても、大企業製造業の業況DIは21で、非製造業のDIは24とまずまずの数値となっている。バブル経済崩壊以降で業況判断DIのピークを見ると、製造業では2004年9月調査の26、非製造業では2006年12月調査から2007年6月調査の22となっている。つまり、大企業にとって現在の業況は、ほぼ陽の極に近い状態となっている。消費者の生活実感からはかなり乖離があるが、少なくとも大企業にとってネガティブに感じる要素は多くないようである。

こうした良好な業況にあると、企業に対する格付けの変更は概ね格上げが中心となり、格下げは個別事情のある企業に限られるということになる。今年度に入ってからの企業発行体格付け変更を、まず、R&Iによるアクションから見て行こう。格上げになった企業はキッコーマン(A+へ)、西松建設(A-へ)、戸田建設(A-へ)、安藤・間(A-へ)、東芝(BB+へ)、プレス工業(BBB+へ)、マツモトキヨシ(Aへ)、三菱自動車工業(BBBへ)、五洋建設(A-へ)、アルフレッサHD(A+へ)、メディパルHD(A+へ)、オリンパス(Aへ)、ソニー(Aへ)、雪印メグミルク(A-へ)、JXTGHD(A+へ)、昭和シェル石油(Aへ)と計16社見られた。東芝を除いて、いずれも1ノッチの格上げであった。こういった環境での格下げは、京都銀行(Aへ)の1社のみでこの事象が目立っている。金利低下の中で積極的な基盤拡大を図っているため、収益力の改善に時間を要するというのが格下げの理由である。地方銀行の経営環境の厳しさは、単に金融庁からの指摘だけに留まらず、様々な角度から浮き彫りにされているようである。

次に、JCRのアクションを見ると、三十三FG(2018年4月2日三重県を本拠とする三重銀行と第三銀行が統合、A-へ)・第三銀行(A-へ)、東京TYFG(2018年5月1日東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京3行が合併して「きらぼし銀行」としてスタート、A-へ)、東京都民銀行(A-へ)・八千代銀行(A-へ)・新銀行東京(A-へ)、リンテック(A+へ)、オカムラ(Aへ)、タカラトミー(BBBへ)、清水建設(AA-pへ)、大林組(AA-へ)、大成建設(AA-へ)、新生証券(A-へ)、昭和リース(A-へ)、新生銀行(A-へ)、IBJL東芝リース(A-へ)、興銀リース(A-へ)、セゾン自動車火災(AAへ)、長谷工コーポレーション(Aへ)、ロイヤルHD(BBB+へ)、フェローテックHD(BBB-へ)、森永製菓(Aへ)、ダイキン工業(AAへ)、中部飼料(A-へ)と数多く見られた。ただし、お気づきのとおり経営統合によるものも少なくない。一方で格下げは、三十三FG設立による経営統合の影響で三重銀行(A-へ)がその憂き目に遭った。

実際に格上げの件数が圧倒的に多いことが確認されたが、業種としては建設関連が目立っており、これも足元の経済実態を反映しているように思える。R&Iによる京都銀行の格下げに端的に現れているように、また、JCRの格付けでも地銀の再編による変更が見られており、地域金融機関の経営の厳しさは顕著であり、今後もこれにつづくアクションが見られる可能性を秘めている。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/6~8/10

広島の原爆祈念日から旧盆休みに至るこの時期は、多くの起債は期待できない週である。それでも、前週に長期国債の入札が行われた後、公募地方債の条件決定が行われる期間であって、市場関係者も完全に休みとはならない時間帯である。週央からは財投機関債等公共セクターの募集が行われ、10日の金曜日には社債の募集が行われたのである。

募集された公共債は、定例の銘柄とそれ以外に分類できる。基本的に毎月募集されているのが、住宅金融支援機構と地方公共団体金融機構である。前者は、概ね5年債と10年債を中心に、それ以外の年限も月によって募集するといった形である。8月は、5年債・10年債に30年債を募集している。今年度のこれまでの実績を見ると、4月は5年債・10年債・20年債、5月は5年債・10年債・30年債、6月は5年債・10年債・15年債、7月は5年債・10年債・20年債といった履歴である。超長期の募集年限を月ごとに変えているというところか。一方、地方公共団体金融機構の場合は、10年債250億円のみを募集している。同機構は、FLIPに基づく起債を除くと、10年債を毎月募集し、それ以外に5年債・20年債・30年債が組み合わされることもあるという形になっている。

必ずしも毎月募集しない公共セクターで8月に債券を募集したのが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と都市再生機構である。前者は、基本的に2・5・8・11月と四半期に一回ほど複数年限の財投機関債を募集する発行体である。今回は、5年債・10年債・20年債の組み合わせで、計660億円とまとまった金額の募集となっている。また、後者も、四半期に一回2・6・8・11月に財投機関債を募集するのが過去のパターンであるが、今年度は発行予定額が増えたこともあって、5月に続いて40年債200億円を募集している。民営化がイメージされると、40年といった超長期の年限の与信は難しくなるが、足元では、復興支援等の観点から、かつて見られたような不要論は見られない。しかし、人口減少が進む中での都市再生機構の役割を考えると、事業内容の見直しは必須だろう。

社債を募集したのは、初ものの月島機械と森ビルである。いずれも10年債を募集しており、前者は50億円、後者は100億円と小額の募集である。一部の情報ベンダーでスプレッドの誤報も見られたが、単純な10年債同士なので、明らかであった。月島機械の格付けはBBB+(JCR)格であり、最初から10年債というのは、やや年限が長いか。一方で、森ビルは不動産業であり、ネガティブな見方も出来るが、人口減少の中での都心集約という意味では、都市再生機構よりも事業立地としては明るいかもしれない。それでも、もしもの時の公的支援は期待できないだろう。

国内起債市場を斬る 夏季特別号:日銀のYCC修正と起債市場

日本銀行は、7月終わりの金融政策決定会合で、既存の長短金利操作付量的質的金融緩和(YCC)の微修正を決定した。公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」とされており、引続きの金融緩和姿勢を示している一方で、10年国債利回りの変動幅を「概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動し得ることを念頭に置く」としており、市場では金利上昇を容認したものと解している。現時点での理解はそれでよいと思われるが、一方で、変動幅を倍にしたことから、状況によっては、10年国債利回りがマイナス0.2%にまで下がることを認めているものと考えることができる。今年の後半以降、グローバルな景気後退等から再度の金融緩和が求められた際に、利下げ幅の存在する米国や、資産買入れの再拡大が可能な欧州と異なって、日本の場合には金融緩和の更なる余地は困難であった。それが、金利変動容認幅を拡大したことで、金融緩和の強化可能性を確保したのである。

今回の微修正では、10年国債利回りの変動幅拡大の他に、政策金利のフォワードガイダンス、政策金利残高の見直し、ETFの銘柄別買入れ額の見直しなどが決められており、社債の買入れについては、現在の買入ペースを維持するとする。しかし、今回行われたYCCの微修正が金融市場の副作用を意識したものであるならば、社債の買入れについても、見直してしかるべきだったのではないか。

日銀による社債の買入れは、残存3年以内の銘柄を流通市場から買入れることとしており、格付けはBBB以上とされている。その結果、新発の3年債のプライシングが明らかな異常水準になっているのである。特に、日銀はマイナス利回りでも社債を国債と同様に買入れるために、3年の新発社債のクーポンは0.001%などの極めて低廉な水準に設定される物が増えている。それらは一旦、引受けた証券会社から投資家に売却されるものの、すぐに証券会社によって買い戻され、証券会社は日銀オペに入れるのである。こうして投資家は社債を投資ではなく短期売買の対象にしているのである。思い起こせば、1985年前後の新規上場の公募転換社債を思い起こす。新規発行の転換社債を、傷んでいる特定金銭信託で購入して頂き、上場後他の特金と何度も媒介を交わして、暗黙の利益確保と売買高競争を公然と仕組んできた。現在行われているフローを見ても本来の社債投資でなく、日銀のオペが社債のディーリングを促しているのである。これを副作用と言わずとして何とする。

日銀は2%の安定的な物価上昇が実現できない限り、現在の枠組みでは、金融緩和を後退させることが容易でない。今回のYCCの微修正にしても、かつて大本営が撤退を転進と言い換えたと同じような表現変更であり、本音と建前の使い分けに腐心している。社債オペの見直しも直ぐに行われることはないだろう。果たしてその先に健全な社債市場はあるのだろうか。仮に2%の安定的な物価上昇が実現できても、社債市場のみならず、国債市場や株式市場を大きく歪めてしまっては、残った副作用が大き過ぎると考えられる。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/23~7/27

本州以西の酷暑、西に向かう台風など、気象状況は例年と大きく異なるが、起債市場はあまり例年と変わるものがない。日銀の金融緩和見直しが意識されるために、10年国債利回りが不安定化し、日銀が指値オペで封じ込める展開であるが、一般債の募集には直接の影響が見られない。スプレッドプライシングのベースとなる利回りが上昇することで、起債コストは上昇したが、スプレッドの拡大ではないために、発行体の責任とはされないからである。あくまでも「市場の変動」によるためである。日本企業で一般的な、責任を問われないことが重要なのである。

起債市場の顔触れは、ノンバンクと財投機関債などの公的セクターである。後者は格付けが日本国債と同水準の物ばかりであり、消化に対する不安は小さい。特に、年限が短い場合には、国債を購入してもマイナス利回りしか得られないのに、高格付け債でもプラスもしくは出来上がりでゼロ%の債券となっているから、投資家は購入し易い。日本政策金融公庫の財投機関債は、2年債も3年債もクーポンは同じ0.001%である。発行単価が100.002円か100.001円かの違いである。もちろん資金使途が、2年債は国民一般向けであるのに対し、3年債は農林水産業者向けであるという違いはある。しかし、公庫の中で部門が異なるとは言っても、外部の債権者には対抗できない。対抗できるならば、財投改革は単なる数合わせによる特殊法人の統合でしかなくなってしまう。

ノンバンクの起債は、昭和リース5年債と三井住友ファイナンス&リースの4年債及び10年債である。前者は協和銀行傘下で設立され、現在は新生銀行グループに属す。後者は、沿革としては住友商事や住友銀行系のリース会社がスタートであるが、途中でさくら銀行系のリース会社も統合しており、こちらは三井住友銀行系と理解される。つまり、両社とも、銀行系リース会社である。事業環境や今後の日本経済の成長性を考えると、なかなか長期の与信は容易でないが、いざと言うときには銀行の支援が期待できることで、信用力の下支えを期待することができる。昭和リースの5年債のクーポンは0.25%であり、一方、前述の日本政策金融公庫の10年債は0.255%クーポンとほぼ同じ水準、後者の三井住友ファイナンス&リースの4年債は0.110%、10年債は0.410クーポンである。どちらがより魅力的な投資対象であろうか。

いよいよ今週は8月に入り、全ての小中学校も概ね夏休み、第100回全国高校野球選手権記念大会の代表校も出揃い、2日抽選、5日開幕となる。起債市場もほぼ案件が出尽くしており、そのまま旧盆の休みに突入するというのが例年のスケジュールである。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/17~7/20

23日(月)大暑の今日、埼玉県熊谷市では国内観測史上最高気温となる41.1度を記録、岐阜県多治見市でも40.7度を記録し、各地で猛烈な暑さとなった。これまでの国内の過去最高は2013年8月の高知県四万十市の江川崎で観測した41.0度。 東京都内の過去最高は、2004年7月に東京都心と練馬区で観測した39.5度だった。 気象庁によると、太平洋高気圧の上にチベット高気圧が重なり、気温が高い状態が続いている、とのことだ。地球温暖化やその原因等に対し異論を主張する組織や学者も、こう暑いと声も小さくなる。
過去、熱中症による死亡数の年次推移を見ると、2010年に1,731人、2013年に1,077人が亡くなっている(厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室発表)。

起債市場も熱い展開が続いている。前週のみずほフィナンシャルグループのような超大型起債はないものの、東京電力パワーグリッドの2本立て計1,000億円の他に、地方公共団体金融機構がFLIP債11本で計650億円を募集しており、金額・本数ともに大きな数字となっている。

もっとも売行きの良かったのは、東京電力パワーグリッドの2本立てだろうか。5年債は0.43%クーポン、12年債は0.89%クーポンである。格付けはBBB+(R&I)格及びA(JCR)格と2ノッチのスプリットがあるため、投資家は格付符号を鵜呑みにせず自らが評価を慎重に行うべき発行体である。5年債のクーポン0.43%は、2日後に募集された近鉄グループホールディングスの0.2%と比べると、圧倒的に分厚い水準である。近鉄グループホールディングスの格付けは、BBB(R&I)格及びBBB+(JCR)格と東京電力パワーグリッドを下回る水準である。その他に、この週に募集された5年債のクーポンを見ると、サントリー食品インターナショナルの0.07%や興銀リースの0.2%は、小さい水準である。唯一、初めて社債募集を行ったマクロミルは、R&IのBBB+格で東京電力パワーグリッドと同じ格付けであり、クーポンは0.45%とほぼ同水準である。しかし、安定した基盤を有する東京電力パワーグリッドと、ネットリサーチ会社というITに依拠したマクロミルが同程度の格付け・クーポンというのは、隔世の感がある。

一方、東京電力パワーグリッドの12年債は0.89%クーポンと、得難い高水準の利回りになっている。何しろこの週で募集された社債等の中でも、この水準を上回るのは、近鉄グループホールディングスの20年債の0.955%だけであり、日本碍子の20年債0.86%がそれ次ぐ水準である。日本碍子の格付けは、R&IのA+格と東京電力パワーグリッドより3ノッチ高く、年限の差があって、ようやく3bpsの利回り差となっている。東日本大震災の処理過程を見ると、投資家は時価評価の必要がなければ、東京電力パワーグリッド債を持ち切りで保有する効果は高いものと想像できる。未だにすべての投資家が購入に殺到する銘柄とはなっていないが、高利回りの期待できる投資対象として多くから評価されているのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/9~7/13

関東甲信の例年にない早い梅雨明けから、西日本を中心とした広い範囲の豪雨被害と、7月に入って季節感は夏が強まっている。多くの公立学校は、三連休明けの1週間が終わると夏休みに突入する。一方で、起債市場は夏休み感がないどころか、夏休みに入る前にしっかり起債をしておきたいという動きで賑やかである。起債市場の夏休みは、例年だと8月の第2週あたりからであり、7月は四半期頭の起債も多く見られ、華々しい展開になるところである。

相変わらず日銀の強力な金融緩和が、社債の起債条件をも支配している。代表的な一つが、3年債の募集である。この年限は、現在の国債イールドカーブではマイナス利回りに沈んでいるものの、一般債のマイナス利回りは持ちきりの投資家には不向きである。ところが、日銀の社債買入れオペに適格な起債は、0.01%や0.001%といったギリギリの低クーポン(必要な場合には、オーバーパー発行)で募集し、セカンダリーはマイナス利回りで日銀に持ち込むのである。前週の日立キャピタル3年債250億円に加え、豊田自動織機の3年債300億円も、同様の起債である。100億円単位でなく、少しまとまった額で募集されるのが特徴である。信用スプレッドを潰(つぶ)(つぶ)し、発行体の起債条件を有利にするのが目的の社債買入れであるが、既に市場のゆがみをもたらすモノでしかなくなっている。ところが、政策目標である2%の物価上昇を実現できてないために、緩和手段の縮小ができない矛盾に晒(さら)(さら)されているのである。

もう一つの金融緩和による影響が超長期債の募集である。イールドカーブを寝かせ、信用スプレッドをタイトにした結果、投資家が利回り水準を求めるためには、より年限を長期に伸ばすしかなくなったのである。前代未聞の低金利であるから、発行体側には超長期の資金ニーズが存在する。しかし、その中には、この企業に超長期の与信をして大丈夫か、投資家は十分な信用評価を行ったのか、超長期の信用評価をどのように行ったら購入判断を導き出せるのか判断さえしきれないというものも、珍しくない。この週の超長期での社債募集は、永久劣後債を除くと、京阪神ビルディングの15年債、東レの20年債、京阪ホールディングスの20年債、関西電力の20年債、東京ガスの20年・30年・40年債といった顔触れになる。

伝統的には、超長期の起債が相応しいとされる業種は、鉄道や電力・ガスといった公益企業であり、特に、料金に対して公的機関の介入があるものが安全とされて来た。しかし、近年の金融環境では、そういった状況が崩れている。投資家が利回りを求めるために、業種に関してある程度の柔軟性が高まっている。メーカーや不動産の超長期債が募集される背景には、投資家からの利回りニーズがある。だが、将来に金融環境が変化した際に、デュレーションが大きく、価格変動性の高い超長期社債は脆弱である。東日本大震災の後、東京電力の超長期債は単価を大きく下げたために、取得コストによっては減損の対象にすらなる状況となったのである。超長期債の投資家は、特に保有銘柄の発行体の信用状況変化に留意しなければならない。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/2~7/6

7月に入ると、起債市場の要素は一変する。株主総会の集中する時期を越えて、しかも、年度の第2四半期に入ったのである。四半期の頭というタイミングで、様々な業態の起債が動き出す。典型的な発行体としては、財投機関、電力、ノンバンク、銀行といったところであるが、7月の5日6日の二日間で、この業種が全て動いている。しかも、総合商社や鉄道も動いたのだから、なかなかの起債ラッシュ感が出ている。

電力で動いたのは、電源開発が10年債200億円及び20年債100億円、中国電力が5年債100億円及び10年債200億円、北陸電力が10年債200億円、九州電力が10年債200億円及び20年債100億円の計1,100億円となった。厳密な意味では電源開発債は電力債でないが、現在でも社債管理会社を設置している。10年債の国債対比スプレッドは九州電力以外が+32psで、九州電力が+35bps。20年債は電源開発が+21bpsで、九州電力が+24bpsであった。R&Iの格付けで九州電力のみがA格で1ノッチ低いことなどを、反映したものである。

ノンバンクでは、日立キャピタルが3年債250億円及び5年債と10年債が各100億円、三菱UFJリースが5年債200億円及び10年債100億円、NECキャピタルソリューションが5年債及び10年債各100億円と計950億円を募集している。格付けがR&IのA+格である日立キャピタルと三菱UFJリースの10年債は国債対比+32psと、電源開発や中国電力と同じスプレッド水準であった。NECキャピタルソリューションは、格付けがBBB+格と異なる水準であり、国債対比スプレッドは公表されていないが、クーポンは0.62%と、三菱UFJリースの10年債プラス27bpsあり、単純計算すると国債対比+59bpsということになる。なお、銀行では新生銀行が5年債100億円を募集している。

財投機関としては、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債各200億円と20年債100億円の計700億円を募集しており、四半期の頭を強く意識させる動きとなっている。10年債の国債対比スプレッドは+16.5bpsと電力やノンバンクよりも、タイトな水準である。この他、20年債のみを募集したのが、三井物産と京浜急行電鉄の2社というのも、今後の起債市場の展開を占う動きであった。R&IでAA-格の三井物産は、A格の九州電力に比べて1bpワイドなスプレッドで募集されている。電力債の一般担保効果もあるが、JCRでA+格の京浜急行電鉄は国債対比+20bpsと更にタイトなスプレッドになっており、投資家が利回りの絶対水準を求める傾向と、業種によって超長期債投資に対する姿勢の異なることがわかる。