国内起債市場を斬る 令和2年度末特別号-2:2021年度の起債市場を予想する

既に2021年度の起債市場は動きはじめている。4月2日に中国電力が10年債を募集した。引続き、四半期初めの起債市場を、電力会社やノンバンク、財投機関債がリードするという構造は変わらないだろう。それに、鉄道や銀行が加わり、おもむろにメーカーが動くというのが恒例のパターンと考えられる。メーカーによる起債の多くはM&A絡みであり、金額が大きくなることも珍しくない。M&A絡みで発行金額が大きくなるのは、メーカーに限らず、他の業態でも同様である。金余りが基本となっている現在の金融環境で、巨額の資金調達ニーズが生じるのは、業態を問わずM&A関連である可能性が高い。

本年度の起債市場を見通すと、昨年度から状況が大きくは変わらないだろうと結論付けざるを得ない。発行金額自体は、M&Aの多寡によって影響がある他、満期償還を迎える債券やローンの借換えニーズに左右されることとなろう。先行きの金利上昇期待が、米国国債ですら2023年と言われる中で、日本でより強く感じられることはない。金利上昇を意識し慌てて資金調達意欲が高まるといったことはないだろう。日本銀行は社債等買入れオペについて特に大きな政策変更を打ち出していないため、引続き、日銀の買い入れる5年以内の社債による調達が見込まれるとともに、利回りの絶対水準を求める投資家のニーズに対応する観点から、超長期債の募集も多くなるだろう。

利回りを求めるという観点からは、超長期債の一種と考えられなくもないが、発行体による期限前償還が可能な劣後債の募集が、発行体及び投資家双方のニーズにマッチしており、引続き相応の募集金額となる可能性は高い。ほとんど破綻することがない日本の社債発行企業に関しては、期限前償還されることを前提とした投資家による投資判断が一般化している。しかし、劣後債の保有に関する規制の変更や格付会社による資本性認定基準の見直し等外部要因による影響に左右されることは不可避だろう。

もう一つ起債市場で焦点になるのは、SDGs債の募集だろう。既に日本の公的年金はESG投資の対象を国内の株式だけではなく、すべての投資対象資産としている。当然に、不動産やインフラ投資だけでなく、社債や債券一般も含まれる。財投機関債や地方債のようにコンセプト面からは、当然にソーシャルやサステナビリティの要素を持っている発行体の債券は、基準に合致した体裁を作ることで、容易にSDGs債を発行することができるだろう。そうなれば、ほとんどすべての債券がSDGs債になってしまい、一部の特定業種の発行体による社債のみが非SDGs債として、スプレッドの上乗せを要求される状態になるかもしれない。これまでの日本の起債状況を見ても、空運会社のトレーニングセンターが二酸化炭素排出を抑制しているからとグリーンボンド認定を受けたり、ガソリン燃焼自動車の売上が過半を占める自動車メーカーがサステナビリティボンドを募集したりもしている。発行体の努力を否定する気はないが、基準の設定次第では、すべての債券がSDGs債となってしまい、認定を受けることの意味合いが低下してしまう可能性もあろう。第三者の認定機関の任命など、より適切な運営が望まれる。

これらの着目点は、いずれも前年度以前から継続している物ばかりである。果たして新年度は、新しいトピックが起債市場の話題になることがあるだろうか。楽しみは、尽きない。

国内起債市場を斬る 令和2年度末特別号-1:サステナビリティ・リンク債

2020年度の起債市場で注目を集めた起債の種類の一つが、SDGs債であることは言うまでもない。SDGs債は日証協の作った広範な概念であり、その中には、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドといった複数の類型を含むが、新しく日本の公募社債市場で見かけることになったのが、サステナビリティ・リンク・ボンドである。公募普通社債で確認されたのは、12月18日に募集された芙蓉総合リースの第27回債、3月12日に募集された高松コンストラクショングループ第2回債、3月19日に募集された野村総合研究所の第8回債といったところである。なお、高松コンストラクショングループ第2回債はグリーンボンドとしての特質も有しているし、野村総合研究所の第8回債は後述するように期限前償還条項が付されている。

この3つのサステナビリティ・リンク債は、其々が異なる仕組みを採用している。黎明期の債券種類であり色々な試行錯誤の最中であって、どのような仕組みが最終的に市場における慣行として定着するかは、現時点では読めない。いずれも「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット」(以下、SPTと略す)を設定するところまでは同様であるが、達成の有無による影響が異なる。そこで、今回はそれぞれの社債の特徴を分析してみたい。なお、SPTについての細かい定義は各々で異なっているが、概ね再生可能エネルギー使用率等であり、高松コンストラクショングループ債のみが後述のように、その他の要素も考慮するものとなっている。

まず、芙蓉総合リース債は、当初4年間は固定の0.38%クーポンであるが、その後3年間の償還までは、発行体がSPTを達成した場合にはクーポン水準が変更されず、未達成に留まった場合にはクーポンが0.48%と10bps跳ね上がる仕組みとなっている。

次に、高松コンストラクショングループ債は、5年間のクーポンが固定されており、SPTが達成できていない場合には、償還時に金額100円あたり0.50円のプレミアムを支払うものとしている。あくまでも償還時点での1度のプレミアム支払いであるが、5年の保有期間に均すと10bpsの上乗せ効果である。芙蓉総合リースの後半3年間と同等の利回り上乗せ結果であるが、償還時点での保有者しか受取ることができないため、発行体がSPTを達成できるかどうかの見通し次第では、社債の売却を抑制する効果が生じてしまう。そもそも、日本の社債は多くがバイアンドホールドの対象であり、殊更に売却を抑制する効果が生じるかどうかは発行体次第であろう。
高松コンストラクショングループ債のSPTは、SDGs貢献売上高の絶対額で定義されている。その中には、耐震補強工事の出来高やマンション等の大規模リフォーム工事の出来高、社寺建築及び埋蔵文化財発掘事業の出来高等をも含んでおり、必ずしもSDGs貢献というラベルに相応しいもののみとは見えない。この社債の狙うサステナビリティとは、社会のサステナビリティではなく、発行体の企業としてのサステナビリティなのではないかと疑ってしまう。投資家は、単なるラベルに惑わされることなく、サステナビリティ・リンク債の中身をしっかり吟味する必要があるだろう。

最後に、野村総合研究所債は、当初10.5年間は0.355%クーポンであり、SPTを達成した場合には、発行体の選択で期限前償還を可能とする。しかし、SPTを達成していない場合には、残りの1.5年は0.811%クーポンとステップアップした利息を支払うこととしている。つまり、SPTを達成すると見る投資家からは10.5年債であるが、あくまでも期限前償還を可能とする条項であって、発行体の判断でコールをスキップされる可能性は残っている。

これらの仕組みを概観すると、大きく二点の課題を指摘することが可能である。まず、発行体にとってはSPTを達成することによって、利息の支払を抑制したいというインセンティブがあるものの、投資家からすれば経済的な意味からはSPTを達成できない方が望ましい。つまり、投資家と発行体の利害が真っ向から対立する可能性があるということなのである。確かに企業がSDGsに即した経営目標を設定することは現代の潮流であるが、SPTの設定次第では緊張感のない基準となっている可能性がある。また、SPTの達成についても、発行体が自ら判定することは、お手盛りになる可能性がある。SPT目標の設定や達成の判定に関しては、第三者による厳格な認定と判定を求めることが必須と考えるべきであろう。

次に、いずれのサステナビリティ・リンク債も、発行体は超過的な利息支払いを回避できるように、SPT達成に向けた努力を行うと期待されるが、その一方で、発行体による買入消却がいつでも可能と規定されている。そのため、時価であれば、いつでも買取りが可能である。つまり、金利が上昇してしまっていたり発行体の信用状況が大きく棄損されているようであれば、アンダーパーでの買取りが可能である。結局、そういう状況では、買入消却によってサステナビリティ・リンクの効果を生じさせなくすることができる。信用状況が悪化している場合には、SDGsへの配慮をかなぐり捨てて、利益獲得に邁進する方向に誘導しそうである。歴史的には、発行体が財政状況の悪化を喧伝して安値で既発行の社債を買入消却し、有利子負債を減少させることで経営を立て直した企業も存在する。サステナビリティ・リンク債については、発行体が買入消却を行わない旨の宣言が必要ではないいだろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/15~3/19

毎年のことではあるが、起債市場の動きが終焉するタイミングは何とも寂しい。カレンダーを見て物理的にそろそろ終わりだろうと思いつつも、細々ながら条件決定の動きがあると安堵するし、一方で、4月以降の起債観測が多く聞こえてて来るようになると、年度内の動きが終結に向かっていることを実感させられる。そもそも、3月末の区切りは、発行体や投資家の会計サイクルの切れ目であるだけで、法人としての事業は継続しているのだから、年度末が近づいたら社債等を募集しないというのは単なるカレンダー要因でしかない。毎年同じような状況を繰り返しているのだから進歩がないと言うこともできるが、変わることを要しないと言うことも出来よう。将来的に債券発行の手続きが更に電子化されても、会計サイクルといったテクニカルな要因によって起債に向けた動きが休止する期間は、なくならないものなのだろう。

年度末に向けた起債のピークは前の週までであったかもしれないが、この週も細々と募集は行われている。日本銀行は、この週に開催される金融政策決定会合までに金融緩和政策の手段に関する点検を行うとしていたが、市場参加者は社債買入れオペに関して全面的な見直しを想定していなかった。日銀が5年以内の社債を購入することで、オペ見合いの歪んだ起債慣行があることは認知されているものの、企業の資金調達を容易にし信用リスクの拡大を抑制するという目標からは、金額面で見直しがあるとしても、枠組みの見直しはないと予想していたのである。実際に、オペの上限について金額面での変更はあったものの、社債買入れオペの位置づけは、他の政策手段のように見直しを強く求められるものではなかった。今回の金融政策決定が社債発行市場に与える影響は軽微なものに留まろう。

この週に実際に募集された案件としては、名古屋鉄道の5年債、王子ホールディングスの5年債及び10年債、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく6年債、野村総合研究所の期限前償還条項付12年債といった程度の散発的な動きであった。金額面では、王子ホールディングの2本立て計350億円の募集が最大となった。また、野村総合研究所の12年債は、サステナビリティ・リンク・ボンドを選択している。

先週号でも少し触れたが、国内の起債市場では乏しい中で、グローバルドル債市場で、トヨタ自動車が前週の国内債券市場での募集に続き、Woven Planet債と称するサステナビリティ・ボンドを募集している。3年債12.5億ドル、5年債10億ドル、10年債5億ドルの3本立てで計27.5億ドル(1ドル=108円換算で約3,000億円)と決して巨額ではないが、総額では5千億円を越える大型の調達となっている。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/8~3/12

起債市場の動きが例年の同時期と比べてやや低調である。トヨタ自動車の3本計2,300億円の条件決定は見られたものの、それ以外は、数百億円規模の案件は幾つか見られるだけであった。金額面ではあまり目立たない一方で、募集方法や仕組み等で注目される案件が幾つか見られた。

まず、引続き、劣後債の募集が続いたことを指摘できる。オリックスは期限前償還が5年目以降で可能なものと10年目以降で可能になる60年物劣後債を計500億円募集している。もっとも、マーケティング開始時点では計600億円の募集予定とされており、発行額を抑えた背景には、投資家からスプレッドと発行体の信用リスクのバランスについて、必ずしも妥当だと評価されなかったことを示している。第一生命ホールディングスは、10年経過で期限前償還可能となる永久劣後債を600億円募集している。金融庁の監督下で期限前償還は確実なものと期待される中で、10年債として評価すれば当初クーポンの1.124%は魅力的な存在に映るだろう。NTNの劣後債を募集している。我々には「洋ベア」の方が耳慣れているが、社名変更して30余年が経つ。同社の劣後債は30年債で期限前償還が5年で可能になるが、格付けはR&IのBBB-格と、いわゆる投資適格の最下限である。格下げがなく予定通りに期限前償還されるならば、5年債で2.5%クーポンはとても魅力的な水準に見えるが、もしもの事は考慮すべきである。

次に、レア物ないし新規募集の社債が少なくないことがある。国際石油開発帝石は、5年債と10年債各100億円で初の公募普通社債を募集している。飯野海運の3年債は、第2回のグリーンボンドである。もっとも資金使途は海運業でなく、不動産業に関するものである。中央日本土地建物グループは合併後初の公募普通社債募集である。高松コンストラクショングループは、高松建設等を抱える建設関連の持株会社で、第1回の10年債と第2回の5年物サステナビリティ・リンク・グリーンボンドを募集している。不動産や建設といったセクターの持株会社による初の起債は、ややきな臭いものを感じなくもない。

最後に、トヨタ自動車の大規模起債についても触れざるを得ないだろう。5年物個人投資家向け1,000億円と、機関投資家向け5年債700億円及び10年債600億円を条件決定している。事前に報道されていた同社の提唱するWoven Planetへの取組みに向けた資金調達であり、SDGsに係る幅広い取組みに当てるものであるが、個人投資家向けはICMA(国際資本市場協会)のガイドラインに適合しないため、サステナビリティボンドとされていない。機関投資家向けの1,300億円はICMAのガイドラインに適合したサステナビリティボンドとなっている。なお、同じ5年債でありながら、個人投資家向けのクーポンが0.1%であるのに対し、機関投資家向けのクーポンは0.05%と半分である。純粋の金融理論からは疑問視されるプライシングであるが、レクサスを乗って頂く個人投資家を優遇したものと解されるし、Woven Planetへの賛同に対する感謝を含むものと考えるべきなのだろう。

同社公式HPより:「Woven」とは「織り込む」という意味で、その由来は、創業者・豊田佐吉が自動織機を発明したときの原動力である「母親の仕事を楽にしたい」という想い、創業の精神を継承し続けることにあります。また、自動運転やモビリティサービスの開発・実装を支えるために絶対に必要になる「道」を「織り込む」ことも意味しています。人を中心に、ソフトウェアやコネクティッド技術により、モノ・情報・街をつなげ、新しいサービスや商品を創出することを目指しています。
「Planet」には、ホームタウン、ホームカントリーと同じように、地球単位の視点「ホームプラネット」という考え方で、この地球に住む人が未来に貢献することで次の世代に美しい故郷を残したいという想いが込められています。誰かと対立するのでなく、「ただ自分の強みを誰かの役に立たせたい」という想いで、各々が力を出し合えば、SDGsに貢献することにつながると考えます。(2021年3月2日)

国内起債市場を斬る 起債評価:3/1~3/5

2021年は、3月に入っても募集される社債の数が増えない。ノンバンクや銀行劣後債の募集等はあるが、大型起債も見られないし、「金曜日、20本集中起債」ということもない。と言っても、5日の金曜日には12本の募集が集中したという状況を見ると、社債等に全く動きがないと言うのでもない。単に、例年ほど年度末に向けて急いで起債するといった動きが、感じられないというのが正直な感想である。

大型起債がないと言っても、アサヒグループホールディングスは3年債と5年債を500億円ずつ計1,000億円の社債を募集している。しかし、いずれも日銀による社債買入れオペの対象年限であるため、投資家の視点からは大型起債とは言い難い。年度内の引受手数料を稼ぐ証券会社からすれば、最終投資家が機関投資家か日本銀行かは、どうでも良いことだろう。3年債のクーポンは0.001%と最低水準であり、500億円の発行総額でも利息の支払負担は大した金額にならない。

この週で目立ったものとしては、初登場も含めて回号の若い起債が多かったことが上げられる。社債発行体の裾野が拡大していると見れば良いことなのだが、知名度や格付けの水準を考えると、必ずしも手放しで喜んでもいられないようだ。まず、北國銀行のB3T2劣後債(バーゼルⅢ適格Tier2証券)は第2回となっている。これは特約の種類が異なるために若い回号となっているものであり、昨年7月以来の劣後債募集であって、必ずしもレアな発行体ではないように感じられる。

第2回から第4回債を募集した昭和産業(JCRのA-格)や、第2回債を募集したプレミアムウォーターホールディングス(R&IのBBB-格)、第1回債を募集した東祥(JCRのBBB+格)、第1回債及び第2回債を募集したTOYO TIRE(JCRのA-格)といったところが、レア銘柄と言って良いだろう。いずれも格付けは、公募普通社債として必ずしも高い水準にはない。なお、TOYO TIREは2019年に東洋ゴム工業から社名変更したものであるが、タイヤのブランド名はTOYO TIRESと複数形で、法人名は単数形と使い分けている。

オリックス銀行の第1回債が登場している。母体企業はフリークエントイシュアーであるが、銀行子会社による社債募集は初めてとなる。発行登録を用いず、有価証券届出書での募集であった。オリックスの100%子会社であって、格付けは同じくAA-(R&I)格と高水準である。募集された社債のクーポンは0.16%で、JCRから同じ符号のAA-格を取得しR&IからはA+格を取得しているアサヒグループホールディングスの5年債に比べると、2倍の高い水準である。銀行という業態の特性や、やや変動性の高い親会社のオリックスの業態を意識したものと思われるが、投資家が、嗜好品主体のアサヒグループホールディングスなら、安定した発行体と言い切ることが正しい判断なのか、疑問は残る。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/22~2/26

今年は、恒例の「年度末起債ラッシュ」がないのかもしれない。例年であれば、3月中旬に向けて最後の資金調達の動きがあるのだが、10年以上の年限について金利の先高感が生じており、日銀の金融政策決定会合で金融緩和の見直しが行われる可能性もあって、3月の社債募集は少なめになる可能性がある。起債観測は色々と上がっているが、大型案件と言えるものはオリックスの劣後債くらいなものだろう。近年の大型起債はM&A関連のものが多く、新型コロナ感染症の影響で、M&Aの動きはあまり見られなくなっている。そのため、年度末の大型起債は期待し難い状況である。

この週に募集された社債等は決して多くない。丸紅の劣後債は750億円と大型案件の部類に入る。60年債であるが、5年経過以降の早期償還が可能で、クーポンがステップアップする典型的な仕組みである。5年債として考えると、0.82%クーポンは高い利回りである。しかし、R&IのBBB+格という劣後債評価を考えると、十分に高い利回りとも言えない。総合商社の変動性が高いビジネスを考えると、早期償還してくれないと困る債券でもあろう。

条件決定したクレディセゾンの6年債は、個人投資家向けの社債である。ボーナスシーズンでもないのに、個人投資家向けの社債が募集されることは珍しいが、投資単位を10万円と設定していることで個人の小額資金をも対象にしている。0.24%というクーポンは、銀行預金等一般的な貯蓄手段より遥かに高い利回りが獲得できる。問題は、クレディセゾンという発行体の信用力評価だろう。格付けはR&IのA+格と高いが、ノンバンクビジネスの将来性はどうか。特に、みずほフィナンシャルグループとの提携を解消して、「セゾンカード」はどこに向かおうとしているのか。6年のタイムスパンは、悩ましいところである。

三井金属鉱業は5年債100億円を募集した。JCRのA-格とやや低めの格付けであり、0.16%クーポンは必ずしも高い利回りではない。レア銘柄でなかったら、消化は容易でなかった可能性が高い。もっとも三井グループの中でも古株の企業であり、デフォルトとの距離は遠い可能性が高い。

中国電力は23年債という端数年限での社債を募集している。国債のイールドカーブが引けていれば、新発国債の発行年限でなくても、スプレッド評価は可能である。そもそも国債利回りの低下を受けて利回りの絶対値でプライシングされることが多くなっており、投資家側も国債対比での評価を自らで行うことに習熟していることだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/15~2/19

ようやく年度末に向けた民間企業の起債がはじまった。少し長期から超長期の年限については、新型コロナウイルス感染の拡大が落着き、ワクチンの接種開始、株高といった諸要因から、金利水準の変化が見られるものの、10年の国債利回りを日銀がコントロールしていることもあって、顕著な先高感はない。発行体側から見て、慌てて起債する必要もないという感覚なのだろう。例年と比較しても、やや淡々とした年度末に向けた起債の動きである。

この週の起債の特徴としては、まず、サステナビリティボンドを挙げることが出来よう。日証協はSDGs債として、グリーンボンドやソーシャルボンド等と括る動きであるが、様々な基準が乱立している感は否めない。グリーンボンドは環境、気候など外部からも見え易い要素であるのに対し、ソーシャルボンドはややカバーされる対象が広く曖昧なところがある。それらに対し、逆に開き直った感のあるサステナビリティボンドは、国連のSDGs目標と連携して理解しやすいものでもある。しかも、国連によって17個の目標が設定されていることもあって、グリーンやソーシャルを含む広い範囲を包含できる可能性がある。そもそもがラベルを貼ることによって、投資家も発行体も引受証券もがWin-Winになるための取組みであるから、基準を統一するというよりは、様々な基準とラベルが乱立している方が望ましいのだろう。

この週に募集されたのは、野村不動産ホールディングスと日本ハムの10年債各100億円であった。ちなみに、日本ハムの10年債がサステナビリティボンドの認定を得たのは資金使途が、傘下の日本ハムファイターズが予定する北広島市での新球場建設資金である。確かにSDGsの目標に適ったものではあるが、これでサステナビリティボンドとなるのであれば、認定されない資金使途は少ないのではないか。そもそも、お金に色がない以上、借入れやCP、社債の借換資金だって何らかの理由を付けることが可能であろう。

サステナビリティボンド以外では、阪急阪神ホールディングスが5年債・10年債・20年債の3本立てで計500億円を募集している。CPと社債の償還資金に充当するとされているが、資金使途を甲子園球場の整備等阪神タイガース関連と主張してしまえば、サステナビリティボンドとしての認定を受ける余地はあろう。同社はサステナブル経営を宣言しており、無関心な発行体ではない。認定を受けるのに必要な手数料を惜しんだか。そもそも社債で調達した資金使途が、募集時の追補目論見書通りであるかどうか外部から検証する方法はない。

なお、これら一般の公募普通社債以外に、ヤンマーホールディングスがプロボンド市場で5年債50億円を募集している。国内の民間企業の利用としては、市場の胴元である日本証券取引所グループ以来の利用例となるが、1億円単位で機関投資家しか購入できないほとんどの公募普通社債は、開示等の面からもプロボンド市場の活用を考えて良いのではないか。代表的な市場インデックスに算入されないという欠点はあるものの、そのことは社債の消化に際して致命的な欠陥とはならないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/8~2/12

この週も引続き、民間企業による通常の社債募集は見られない。募集されたのは、いわゆる公共債ばかりである。まず、地方公共団体金融機構が10年債を募集している。定例の毎月行われる募集という感はあるが、他の月は20年債や時に5年債などと同時に募集されることが多いため、10年債が単独で募集されるのを珍しく感じる。1月に募集された第140回の10年債が0.125%クーポンであったのと比べると、今月の第141回債は0.15%クーポンとわずかながら利回りが上昇している。地方公共団体金融機構債は、厳密な意味での財投機関債ではなく、むしろ地方公共団体が共同で設立した機構の発行するスーパー地方債ともいうべき存在である。共同発行地方債と異なるのは、全都道府県及び市町村が関与した機構による募集であるというくらいか。地方公共団体金融機構は、定例の債券募集の他に、外債やFLIPに基づく随時の債券発行、地方公務員共済組合関連の投資家向け縁故債と幅広い債券発行のバリエーションを有しているのも強みである。

残りの公共債は、道路関係の債券ばかりである。高速道路運営会社で債券を募集したのは、阪神高速道路の4年債300億円と、首都高速道路の5年債200億円である。いずれも日本高速道路保有・債務返済機構による併存的債務返済条項が付されており、結局のところは、財投機関である日本高速道路保有・債務返済機構が連帯して債務を負担するために、同機構の信用力に帰するものである。なお、いずれも大都市圏での高速道路運営会社であるが、阪神高速道路はR&IのAA+格しか取得していないのに、首都高速道路はR&IのAA+格の他、ムーディースのA1格とJCRのAAA格を取得している。東日本高速道路や、中日本高速道路、西日本高速道路と同じような格付取得形態であり、特にJCRからのAAA格取得は、一部の投資家にとって意味がある。

高速道路の保有主体である日本高速道路保有・債務返済機構は、31年物の財投機関債を募集している。利子一括払いという同機構では、おなじみの債券形態である。期間損益を認識する企業会計を採用している投資家には意味ある利息収入であるが、償還と同時の利息支払時点までは未収利息であるため、現実のインカムをキャッシュで受け取りたい投資家にとっては、不向きな債券である。31年債と言っても、クーポンは0.934%と決して高水準でなく、通常の利払いを受けたとしても決して大きな金額にはならないが。こうした債券も、発行体が現金主義を意識していれば、償還と利払時点まで資金流出がないのであり、投資家と発行体との重視する会計方針の違いをうまく利用した起債と言えなくもない。1千万円という投資単位からも当然であるが、個人投資家が購入することはできず、投資家は指定金融機関等に限定されている。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/1~2/5

民間企業による通常の社債募集は見られない。この週で募集されたのは、公共債と劣後債のみである。公共債で募集されたのは、都市再生機構の40年債、西日本高速道路の5年債、中部国際空港の5年債及び10年債、大学改革支援・学位授与機構の5年債、住宅金融支援機構の15年債といった顔触れであった。

同じ5年債であっても、株式会社形態の発行体である西日本高速道路と中部国際空港の債券は0.06%クーポンであるのに対し、大学改革支援・学位授与機構の債券は0.03%クーポンと半分の水準である。もっとも大学改革支援・学位授与機構が債券を募集する頻度は年に1回程度であり、今回は85億円と小額の募集である。文部科学省傘下の団体や学校法人等の購入で十分に消化できる規模であろう。一方、西日本高速道路の5年債は、800億円と大型の起債であった。

都市再生機構は40年債を募集し、住宅金融支援機構は15年債と、いずれも超長期年限の債券を募集している。ほぼ1年前にR&Iの格付けがAA+格と国債と同水準になった都市再生機構は、40年債のクーポンが0.862%と1%を下回る。決して投資妙味が高いとは言えない水準であるが、ある程度の水準の利回りを得るためには、こういった債券の購入も必要だろう。しかし、今後40年間に都市再生機構の業務内容が見直され、位置付けが変わることはないのだろうか。住宅金融支援機構の15年という年限ですら、同様の懸念を免れない。格付けは決して超長期の体制や役割の変更を保証してくれるものではない。

劣後債で募集されたのは、三井住友海上火災保険の60年債と東京建物の40年債である。いずれも10年経過以降に期限前償還が可能となる。期限前償還を前提として10年債として比較すると、R&IのA+格である三井住友海上火災保険は1.02%クーポンで、JCRのBBB格である東京建物は1.13%クーポンである。格付水準と比較しても、また、発行体の事業特性に基づく期限前償還の確実性から考えても、三井住友海上火災の劣後債の方が有用だろう。発行額は三井住友海上火災保険の1,000億円に対し、東京建物は400億円と小さい。東京建物の劣後債は、サステナビリティボンドの認定を得ているが、そのことは決して信用力を向上させるものではない。

都市再生機構の40年債はソーシャルボンドの認定を得ており、住宅金融支援機構の15年債はグリーンボンドとなっている。いわゆるSDGs債に含まれる債券には色々な種類があるが、民間企業の社債で起債観測の上がっているものは、サステナビリティボンドの認定を予定しているものが増えている。未だにグリーンボンドだソーシャルボンドだと言って募集している公的セクターの取組みは、やや時代遅れなのかもしれない。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/26~1/29

相変わらず、起債市場はノンバンクと劣後債が、募集の多くを占めている。ノンバンクで募集されたのは、日立キャピタルの3年債とイオンフィナンシャルサービスの3年債及び5年債である。いずれも日銀買入れの適格年限のみの募集であって、前者は日立の名前を残しているものの、既に三菱UFJフィナンシャルグループの傘下であり、後者はイオングループに属している。結局のところ、オリックス等幾つかの例外を除いて、ほとんどのノンバンクは何らかの母体企業もしくはグループに所属していないと、安定したビジネス基盤を確保できないようである。もっとも、新型コロナウイルス感染症の影響による業績低下の影響が、母体企業やグループ企業の所属業種に大きく及ぶ場合には、関連ノンバンクも無傷ではいられない。そういう観点からも、中期年限の社債しか募集できないのかもしれない。

劣後債を募集したのは、三菱地所とソフトバンクグループである。どちらも過去に発行した劣後債をリプレイスする目的の起債で、新顔の発行体ではない。三菱地所が募集したのは、最終償還60年債が2本で、800億円の一つは5年経過時点以降に期限前償還が可能になり、350億円の方は12年経過時点以降に期限前償還が可能になる。変動利付になってからのクーポンはいずれもステップアップが予定されており、期限前償還のインセンティブが担保されている。しかし、期限前償還を前提にすることと、劣後債に資本性を認めることは、矛盾を孕んでいる。そのため、今回のように同様の劣後性調達によってリプレースすることが求められるのである。

ソフトバンクグループの劣後債は、1,770億円と巨額の募集である。最終償還35年債で、5年経過時点以降に期限前償還が可能になる。変動利付になってからは、財務省の公表する国債金利情報に連動して上乗せが決められることになっており、Libor金利廃止へに向けた一つの対応策を示している。前述の三菱地所債の変動金利は、Liborへの上乗せで規定されており、Libor廃止に対応したクーポン決定に関する詳細な規定が付随している。果たしてどちらが投資家にとって理解し易いだろうか。必ず期限前償還するのであれば、適用されずに終わってしまうものなのだが。

ノンバンクと劣後債以外の社債では、光通信が5年債・10年債・15年債の3本立てを募集した他、いすゞ自動車が5年債と7年債とを募集している。光通信は、以前より随分と格付けを回復しており、R&IのA-格及びJCRのA格という評価である。果たして15年後の光通信という会社がどうなっているかイメージできるだろうか。15年債のクーポンは1.38%であり、三菱地所の期限前償還12年債の当初クーポン0.97%を大きく上回る。利回りの高さは投資対象として魅力的に映るが、発行体の将来性に疑問がない訳ではない。格付けの有効期間を3~5年と考えるならば、投資家の持つ業界及び個社に対する鑑識眼が問われることになる。