国内起債市場を斬る 起債評価:1/17~1/21

四半期頭の起債市場で起債の本数を稼ぐのは、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債がもっとも顕著である。この週も、第647回債から第659回債と様々な年限で計13本を募集している。金額も第648回の9年債が200億円と大きいものの、それ以外の多くが30億円という最小金額で設定されているため、総額では計665億円にしかならない。一方で、ソフトバンクの個人向け劣後債は5,500億円の募集条件を決定しているのだから、大型起債によるインパクトをまざまざと感じさせられる。

個人投資家向けに劣後債5,500億円の募集を開始したソフトバンクグループと、機関投資家向けに7年債と10年債各150億円を募集したソフトバンクは、持株会社と事業子会社との関係にあるが、投資判断という意味では、両極端の位置づけにあるとしても過言ではない。持株会社は、様々な事業子会社や投資ファンドを傘下に抱えており、安定した信用力の推移を期待することは容易でない。子会社やファンドの買収や売却によって信用力自体が大きく変動する可能性は、7年という投資期間の長さを考えると否定できるものではない。決してデフォルトに瀕すると予想されるものではないが、アップサイドもダウンサイドも十分に有り得ると考えるべきである。そういった信用力の不安定さを抱えている劣後債を個人投資家に販売することをどのように考えるべきだろうか。確かにクーポンは2.48%と米ドル建ての米国10年国債よりも高い水準にある。引受証券会社に支払う手数料も発行額100円あたり1円50銭と高額であって、証券会社にとっては大きな収益源である。発行体である持株会社がデフォルトしなければ、投資家にとっても引受証券会社にとっても美味しいいディールである。高額な利子と手数料を払って利益を損なわれたのは、株主なのであるが。

一方、通信事業子会社であるソフトバンクは、事業基盤の安定性を期待できることから、相対的に高い信用度を確保している。持株会社の劣後債が取得した格付けはJCRのBBB+格であるが、ソフトバンクの社債が取得した格付けはR&IのA+格及びJCRのAA-格と十分に高い水準である。持株会社の信用力変動の影響を全く受けないものではないが、総務省の監督対象となっている通信事業については、国民生活の安定を考えると万が一にも破綻処理を行われる可能性は低い。何らかの形で新規もしくは既存の受皿会社に事業譲渡を行わせることが十分に期待できるし、その際に債務も移管されることが期待できる。何しろ携帯電話やPHS等の移動通信全体を見た時に、ソフトバンクの契約数シェアは2割を超えており、同社のMVNO回線を利用したキャリアを加えると約4分の1を占める存在である。スマホなしでは生活に支障が生じかねない現代において、ソフトバンクを破綻処理することを現実的なものとは考えられない。しかも、ソフトバンクの募集した今回の社債はサステナビリティボンドとしての認証も得ており、機関投資家からの投資を誘引する材料ともなっている。

このように両者を比較すると、リスクを保守的に認識する機関投資家向けをサステナビリティボンドとし、リスクより利回りを重視するとともに発行体の知名度を意識しがちな個人投資家には持株会社の劣後債とすることが、極めて理に適っているいると考えられる。劣後債のリスクが個人投資家に的確に認識されていると思えないため、7年間に何もないことを祈るしかないが、機関投資家と異なり時価評価を求められない個人投資家から見れば、元利払いさえ予定通りに行われれば、M&Aや格下げの信用力に関するイベントが投資スタンスに大きく影響することはないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/11~1/14

新年の起債市場は、正月三が日の曜日次第でもあるが、成人の日が移動祝日になって以来、実質的には三連休明けから募集開始ということになる。今年の最初の10年長期国債の入札は1月5日に行われており、10年物の全国型市場公募地方債は翌日以降に募集され始めているが、民間企業等の起債に向けた動きは鈍くなる。市中消化に向けた投資家へのヒアリング等手順を踏んでいると、どうしても募集は三連休明けになるし、休日明けてすぐに社債等を募集しない日程からは、14日の金曜日に募集が集中するのもごく自然なことだろう。

それでも、12日の水曜日には地方公共団体金融機構が10年債及び20年債を募集し、13日の木曜日にはJERAが3年債及び19年債を募集している。これらが先駆けとなったものの、14日の案件集中はすさまじい。それでも先行した二つの発行体と共通する特徴として、公共セクターと電力が目立つことである。1月は2021年度最終四半期の頭であり、当然、募集される社債等も多い。中でも、公共セクターと電力関連が中心になるのは、当然予想された通りである。銀行やノンバンクは追って出て来るものと考えられる。

14日に募集された公共セクターと電力関連の社債等を羅列するだけでも、日本政策投資銀行、東日本高速道路、日本学生支援機構、住宅金融支援機構といった公共セクターに加えて、東北電力、九州電力、電源開発、四国電力、中国電力と電力関連の社債発行会社の半数近くを挙げることが出来る。既に前日に社債を募集していたJERAを除くと、残っているのは、北海道電力・東京電力パワーグリッド・中部電力・北陸電力・関西電力・沖縄電力といったところだけである。

公共セクター及び電力関連の社債等の中においても、東日本高速道路の5年債・7年債・10年債の全年限はソーシャルボンドの認定を得ているし、日本学生支援機構の2年債もソーシャルボンドである。住宅金融支援機構の募集したうち10年債はグリーンボンドになっている。電力関連の社債の中でも、電源開発が募集した10年債はグリーンボンドになっているし、他に、東日本旅客鉄道の募集した10年債はサステナビリティボンドの認定を得ている。

このように、引続き、SDGs債の募集が多く見られており、起債観測の上がっている銘柄の中でもグリーンボンドやサステナビリティボンドを準備しているというものが少なくない。結局のところ、多くの投資家は社債等を購入する際に、単純な利回りの高低だけではなく、付加されているストーリーを欲しているのである。購入の判断において、最後の一押しとなる材料があるかないかは、起債が受け入れられるかどうかの大きな差となっているのかもしれない。

国内起債市場を斬る 新春特別号:2022年度の起債市場-その2

年末に続いて、2022年度の起債市場の状況について考えてみる。まず、国債について思い返してみると、新型コロナ感染症対策で割引短期国債を中心に引続き大きな金額の発行が予定されている。国債の借換えルールを考慮すると、当面割引国債の巨額発行は継続されることになるが、物価上昇の兆しがあった場合に、日銀による短期金利のコントロールがなければ、まず短期金利が上昇してしまうことから、一気に国債の利払負担が増加することになってしまう。そういう意味でも、日銀によるマイナスからゼロ金利政策の見直しが早期に行われるとは考え難い。中期的に、国債の市中消化額は高止まりしよう。

一方、公募地方債の発行予定額は、全国型のみで6.6兆円と2021年度対比約1兆円の減少が見込まれている。住民参加型市場公募債(いわゆるミニ公募地方債)については、中期年限の金利が日銀のイールドカーブコントロールによってほぼ機能しておらず、個人の投資ニーズにほとんど合致しないため、2021年度発行予定額300億円から150億円と半減する計画になっている。とは言っても大勢には影響を及ぼす額ではない。年限別に見ると、市場環境の変化に柔軟に対応するため、年限等を定めないフレックス枠として設定されている金額が増えているものの、他の年限はいずれも減少する計画になっている。実質的に利回りがほとんど付されない10年以内の国債や政府保証債と比べて、わずかでも利回りの乗っている財投機関債や地方債に対する投資家のニーズは根強い。特に、信用リスクをほとんど負わないという評価が可能なため、元本の毀損をほぼ懸念しないで済むことが財団法人等にとって国債に代わる投資対象として人気になっている模様である。

地方債の発行額が減少する背景には、借換債がわずかながらも減少したことに加えて、臨時財政対策債の発行が大きく減少したことによって、民間資金への依存度が大きく減少したものと見られる。また、企業等の収入増によって地方税収が増加する見通しや国からの地方交付税等交付金の増加も寄与しているようである。借換債を含まないベースでの資金面の地方債計画においては銀行等引受債による消化額も1兆円以上の減少となっており、2022年度は地方債の供給減少が一つの注目の的になるのかもしれない。

民間企業による社債の発行額については、影響する幾つかの要素がある。まず、金利上昇の懸念による駆け込み調達ニーズがあるか、である。更には、根本として、社債での資金調達ニーズがあるかどうかも大きな要素があり、中でも大型M&A等の資金ニーズが生じるかどうかか大きい。また、公共債と同様に、既存社債等の借換債が募集されるかも大きい。日本の金融慣行においては、銀行等金融機関からの借入れと社債発行は注射器に例えるとインターチェンジャブルな資金調達手段であり、借入金を返済するための社債発行という選択肢がない訳でもない。加えて、技術的な要素としては、日銀による社債買入オペの運営も起債額に影響する可能性がある。3年以上5年のゾーンについては、既に買入れ額は減少傾向にあるが、新型コロナ対策以前から取組まれている3年以内の社債購入については、惰性的に継続して取組まれるものと思われる。官僚的な組織では、従来からの取組みを停止するには、正当性の担保や当初発案者を傷付けない説明が求められる等相応のエネルギーが必要だからである。

現状では、今年度の民間企業による公募普通社債発行額は15兆円を下回る規模と想定されており、大きなM&Aニーズがないとすれば、2022年度も同程度となる可能性が高いと思われる。日銀の買入れオペの運営見直しが行われると、高格付け債では利回り0%で募集できている3年債の募集が減額される可能性もあり、更に下回る可能性も否定できない。地方債と同様に、民間企業の社債についても、引続き、市場での品薄感は払拭できないものと考えられる。その結果、スプレッドはタイトな水準が維持されるため、投資妙味の乏しい状況は今年も続くのであろう。このブログを18年間つづけている筆者としては、希望する景色からは程遠いい。(本稿終わり)

国内起債市場を斬る 年末特別号:2022年度の起債市場-その1

年末年始を挟んで、2022年度の起債市場について考えてみたい。まず、年末の前半では、金利水準を占う上で重要な国債と財投機関債等の発行計画について考察する。国債、政府保証債、財投機関債及び次回に触れる予定の地方債については、発行額が政府の年度予算と一体の形で計画されており、その後に修正されることはあるものの、概ね閣議決定した予算案で概要が判明している。もっとも、近年は新型コロナ感染症対応で補正予算の規模が大型化しており、2020年度のように国債の発行計画が大きく変更されることもある。

まず、国債の発行計画を見てみよう。2021年度の国債のカレンダーベース市中発行額は、当初予算の221.4兆円から補正予算で212.2兆円に修正された。これは税収の増加等によって当初予算から減額されたものであり、2020年度補正予算後の212.3兆円とほぼ同程度の水準である。前述のように、2020年度の補正予算で一旦大きく増額されたものであるから、修正後でも決して少ない金額ではない。特に、割引短期国債の計画額は、2020年度補正で82.5兆円と大きく膨張したものを、2021年度当初予算で83.2兆円と概ね規模を維持し、何とか補正予算で74兆円に圧縮出来たに過ぎない。2022年度予算に基づくカレンダーベース市中発行額の総額は198.6兆円と引続き減額傾向にあるように見られるが、割引短期国債の金額を60.4兆円に減らしたものであって、利付国債の発行予定額は、2年短期国債のみ2021年度補正対比で減っている以外は、すべて同額ないし増額である。国債の増発は、基本的に、金利水準を押し上げる要素である。

国債発行とと同時に考慮する必要があるのが、日銀による国債の買入であるが、毎年度の残高が80兆円程度増加するように国債を購入するとした文言は存置されているが、市場での国債買入れペースは大きく低下している。国債発行計画で2年債や割引短期国債を多少減額しても、日銀のイールドカーブコントロールが強く影響している年限であり、利回りの高騰があり得ないからこそ、増額や減額が可能になっているものである。2021年度補正と対比して、2022年度に利付国債が増額となったのは、10年債と40年債である。10年債は、同様に直接の日銀によるイールドカーブコントロールの対象年限であり、40年債は市場参加者に対するヒアリング等の場において、消化余地がまだ大きいとされた年限である。更なる増発は、金利水準に影響を与える可能性を否定できない。

政府保証債については、国債とほぼ同等の信用力を有していると解されており、クレジットという意味で社債と競合する可能性があるのは、”暗黙の政府保証”しか有さない財投機関債である。外債を含む政府保証債の発行計画額は2021年度対比で約1.5兆円減少の3.3兆円規模となり、中でも国内市場での発行額は1.1兆円へと大きく減少するため、市場に不安を抱かせるようなことはない。もっとも一部の機関投資家には、国債と政府保証債しか購入しないといった方針を有している場合も存在するのだが。政府保証債の発行計画額が大きく減少しているのは、日本政策金融公庫や預金保険機構、地方公共団体金融機構といった大口発行体の大幅減額によるものである。

財投機関債の発行計画額は、総額3.9兆円と約3千億円の減少となっている。大きく減少するのは、住宅金融支援機構による貸付担保債であり、早期償還が行われ、一種の証券化商品もしくはカバードボンドと考えられる商品であることから、通常の財投機関債や公募普通社債と競合する関係にはない債券と考えられるものである。その他に、国際協力機構がソーシャルボンドを減額するようである一方、大学ファンドを運用する科学技術振興機構が新規に200億円の財投機関債発行を追加する等によって、財調機関債合計では金額に大きな変更がないため、新年度の公募普通社債市場を圧迫するような状況にはならないだろう。(本稿続く)

国内起債市場を斬る 起債評価:12/13~12/17

この前の週までで、ほとんどの社債等の募集は終わっているはずなのだが、ギリギリまで頑張る発行体がいてもおかしくはない。結果として、この週にまで募集を引き延ばした銘柄は、何らかの特徴を持った社債ばかりとなった。

まずは、劣後債で、しかも、金融関係持株会社の劣後債であって、期限前償還の確実性が高いと考えられるものである。一つは三井住友トラストホールディングスのいわゆるB3T2債と呼ばれる、バーゼルⅢ規制に対応しTierⅡにカウントされるタイプの劣後債200億円である。10年債であるが、5年経過時以降に期限前償還が可能になるため、実質的には5年債と考える投資家は少なくないだろう。当初5年の固定クーポンは0.4%であり、R&IでA格とJCRでA+格という格付水準から考えると、劣後プレミアムが乗っている分、利回りは高く見える。ただし、もう1週前に募集された格付けの低い5年債を見ると、R&IとJCRの双方で1ノッチ下の評価である楽天カード債のクーポンは0.62%であり、R&IでBBB+格であったGMOインターネットは0.77%クーポンであった。信用リスクを取るか劣後リスクを取るか、比較した二社の事業内容を考えると、三井住友トラストホールディングスの劣後リスクの方が、相対的に取り易いと感じる投資家も少なくないだろう。

もう一つの劣後債は、第一生命ホールディングスの永久劣後債800億円である。当初クーポンは0.9%で、10年経過以降に期限前償還が可能となる。JCRでA-格の10年債と考えれば、比較対象は月初に募集されたジャックスの0.45%クーポンくらいしかないが、ちょうど倍の利回りを付した形である。ノンバンクの10年債と保険持株会社の実質10年劣後債とでは、保険持株会社に対する投資の方が安全と考えられかねないが、株式を公開し海外の保険会社を積極的に買収している姿勢を見ると、全くの低リスクとも言えないのではなかろうか。

特徴のもう一つがSDGs債である。具体的には、日本碍子が7年グリーンボンド100億円を募集している。調達資金の使途は、”グリーンボンド・フレームワークの適格プロジェクト(電池関連、次世代パワー半導体関連、CCU/CCS及び水素/アンモニア関連、クリーンエネルギーの利活用関連、製造プロセスの省エネ化関連)に係る設備資金、研究開発資金および運転資金に充当する予定”としている。格付けはR&IのA+格と高い水準であり、クーポンは0.18%と低い。12月10日に募集されたR&IでA格を取得している名古屋鉄道の7年サステナビリティボンドが0.2%クーポンであったから、バランスが取れているようにも見えるが、鉄道事業の安定性を考えると、やや日本碍子の0.18%クーポンは物足りないかもしれない。

国内起債市場を斬る 起債評価:12/6~12/10

相変わらずSDGs債の募集が多い。投資家にとっては、債券の購入の背中を押してくれる動機であり、発行体にとっては、資金調達を行う大義名分が立つ。引受証券会社にとっても、双方の顔を立てやすいのであるから、まさに三方一両良しというのがSDGs債に対する人気を支えている。この週も、岩谷産業の5年及び7年グリーンボンド、みずほリースの5年グリーンボンド、清水建設の5年サステナビリティボンド、名古屋鉄道の7年サステナビリティボンドと多くが募集された。しかし、これらのSDGs債は資金使途が特定され、債券の発行後も状況をフォローして開示することが求められるため、大きな金額を募集することは容易でない。この週の各案件も最大で100億円の募集となっている。

SDGs債と対極にあるのが、複数本立てでの大型起債である。この週には4本立ての社債が二組募集されている。まず、一組目が楽天カードである。業種としては、ノンバンクに分類されるが、親会社である楽天グループ傘下の様々な事業を含めて評価する必要がある。格付けは、R&IのA-格とJCRのA格である。募集したのは、3年債300億円・5年債140億円・7年債50億円・10年債110億円の計600億円である。必ずしも高格付けとは言い難い信用力であるため、3年債の利回りは0.3%と普通の社債利回りであり、10年債のクーポンは1.07%と1%を越える水準である。信用評価としては、楽天グループに対して多くの与信を行っていなければ、通常のA格の社債として評価して良いかもしれない。

もう一組が、東日本旅客鉄道である。300億円400億円・30年債100億円・40年債100億円・50年債200億円の計800億円を募集している。日銀の社債オペ見合いの短期債と、超長期債の組み合わせという年限設定である。R&IのAA+格と日本国債並みの高格付け銘柄であるから、3年債の応募者利回りは0%になっている。また、40年債のクーポンですら、0.993%と1%の絶対水準を越えていない。ようやく50年債で、1.179%クーポンとなっている。

楽天カードの10年債とJR東日本の40年債と利回りはいずれも1%前後であるが、投資家としてどちらを選ぶかは悩ましいところだろう。JR東日本の社債がデフォルトするという可能性は極めて低い。運賃の認可もしくは届出制が採用されている以上、本業のみでの破綻は考え難い。よほどの人口減少や首都圏の鉄道網崩壊とかがなければ、鉄道事業は大丈夫と考えられる。しかし、周辺事業は、百貨店でも不動産でも、過去のバブル崩壊の歴史を繰り返さなければ良いがと願われるところであろう。一方、楽天グループの10年後を見通すのは、決して容易でない。グループの主力であるECビジネスの先行きが不透明であるし、銀行・保険といった金融セクターへの進出も決して将来性が高いとは言い難い。インターネット利用ビジネスの発展可能性次第の要素も濃いと思われるが、足元は携帯電話ビジネスの設備投資負担が大きくなっている。携帯電話ビジネスは、新規ユーザーの獲得に成功したものの、2年目以降の顧客定着が必ずしも確実視できない。もっとも競争の激しい業界の一つであるために、そこにベットしていることで大きなリスクが存在していることを忘れてはならないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/29~12/3

相変わらず、社債等の募集は金曜日への集中が著しい。12月に入った途端、年末に向けてのラスト・スパートがはじまったかのようであったが、12月1日の水曜日に募集されたのは東洋紡の7年ソーシャルボンドのみで、翌2日には中部電力の二本立て、東京センチュリーの二本立て(7年債は個人向け)、阪急阪神ホールディングスの5年サステナビリティボンド、エクシオグループの5年グリーンボンド、北海道電力の個人向け3年債の条件決定と、単純な機関投資家向けの債券募集は少なく、SDGs債か個人向け債が主力といった感じであった。しかし、3日の金曜日になると、一気に案件が噴出する。

3日に募集された社債等をすべて挙げるのは、意味がないだろう。シニア社債、劣後債、財投機関債など様々であるが、少しグループ分けしてみたい。いずれのグループにも入らない案件もあるし、複数のグループに分類可能なものもあるが、足元の起債市場の特徴を端的に表すことが出来るだろう。

【グループ1:3年~5年債】
海外金利の上昇やクレジット市場の落ち着きから、日銀による社債買入れオペの停止や見直しを要望する声は少なくなく、特に、5年債まで拡大した対象は早急に収束されるべきであろう。やや慌てて募集しているという感もあるが、3年債と5年債の募集が目立っている。本来、5年債は起債市場の主軸の年限であったが、5年の国債金利水準を大きく押し下げ、結果として社債等の投資妙味を失わせているのは、日銀による強力な金融緩和である。関西電力の5年債300億円、ホンダファイナンスの0%利回り3年債100億円及び5年債200億円、ジャックスの5年グリーンボンド100億円、DM三井精糖ホールディングスの5年債100億円、旭化成の0%利回り3年債100億円及び5年債200億円、西日本高速道路のソーシャルボンドが0%利回り2年700億円及び5年800億円、東京都競馬の5年債100億円、高島屋の5年グリーンボンド100億円、大成建設の5年グリーンボンド100億円、北陸電力の個人投資家向け4年債100億円、東急の個人投資家向け5年債100億円、JR九州の0%利回り3年債100億円、四国電力の個人投資家向け3年債125億円、水資源機構の0%利回り3年サステナビリティボンド50億円と銘柄数も金額も多い。

【グループ2:SDGs債】
2020年度から増えて来たSDGs債の募集も、既にこの週は木曜の募集の多くがSDGs債であっただけでなく、金曜での募集も数が多い。5年債以内のものはグループ1で挙げたが、それ以外の長めの年限でも、北陸電力の10年グリーンボンド100億円、東急の10年サステナビリティボンド100億円、都市再生機構のソーシャルボンドが20年及び40年各100億円と募集されている。ICMAが原則やガイドラインを提示しているカテゴリーの中で、サステナビリティリンクボンド以外の物は、すべてがこの週に募集された形である。相変わらず、投資家のSDGs債に対する需要が強いだけでなく、発行体の興味も高いことがわかる。

【グループ3:超長期債】
機関投資家が利回りを求める方向としては、低格付けに向かうか、超長期に向かうかしかないが、より好まれるのは、信用力の高い発行体による超長期の債券であろう。超長期債で募集されたのは、グループ2で触れたSDGs債以外では、R&IでAA-格の九州旅客鉄道の20年債100億円、R&IでAA格等を取得している新関西国際空港の20年債100億円及び30年債180億円が見られている。
低格付けの超長期債というのは、この週でも劣後債での募集例は見られるが、早期償還が行われるならば、それらは超長期債でなくなる。劣後債で募集されたのは、10年経過以降償還可能な中国電力の劣後債1,000億円及び5年経過以降償還可能なサントリーホールディングスの劣後債420億円である。劣後プレミアムが乗っているために、同じ格付けのシニア社債より利回りが高くなり、募集金額も大きくなっている。

12月の社債等の募集は、13日の週の半ばくらいまでになるものと思われる。最大でもその週の金曜日でギリギリだろう。起債観測の上がっている銘柄もまだ多く残っており、もう暫く忙しい日々が続きそうだ。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/22~11/26

民間企業の社債発行が増えて来たように見えたものの、火曜日に勤労感謝の日として休日が入ると、実質的に社債等を募集できるのは、木曜と金曜の2営業日に限られてしまう。木曜の25日に社債を募集されたのは、三菱HCキャピタルの3本立て計800億円、日産フィナンシャルサービスの2本立て計900億円に、NECキャピタルソリューションの100億円とノンバンクによる起債ばかりとなったが、金曜の26日は大型起債も含めて、様々な業種の案件が多種多様に登場した。

金曜日の起債の中では、TDKによる3本立ての中の7年債とアシックスの5年債はSPT未達の場合に寄付を行うタイプのサステナビリティリンクボンドであり、大東建託の10年債と北海道電力の起債のうち10年債はグリーンボンドの認定を得ての募集となった。引続きSDGs債券の募集が続いており、起債市場でも完全に定着しているように見える。一般の社債対比での割高感を測定し難いが、こういった起債が増えて来ること自体は、否定的に考えなくて良いだろう。どのような形であっても、多様な新発債が増えることは市場の活性化に通じるし、募集された利回りが適切かどうかを意識し吟味することで、クレジット投資のセンスも養うことが出来るだろう。

この週の起債の中では、前述したTDKが、7年債の他に5年債と10年債を募集して、計1,000億円の大型起債となっており、また、昭和電工も3年債・5年債・7年債・10年債の4本立て計1,000億円の募集で追随した。これらを更に大きく上回る金額を募集したのが、楽天グループによる6本立ての起債であった。年限構成は、3年債750億円・5年債450億円・7年債100億円・10年債850億円・12年債400億円・15年債450億円で、総計3,000億円と稀に見る超大型起債となった。

楽天グループの取得した格付けはJCRのA格であって、必ずしも高格付けとは言い難い。グループで営むビジネスはEC事業の楽天市場に限られず、トラベル、証券、生命保険、損害保険、銀行、カード、野球とネット利用を中核にして多様化している。ECビジネスだけであれば小売業と考えるのが適切であるが、現在では、金融関連を含めインターネットをプラットフォームとしたコングロマリット企業グループであり、今回の起債によって調達した資金の使途は、楽天モバイルによる5G対応に向けた設備投資資金である。

グループの先行きを占うポイントは、楽天モバイルが第4の携帯キャリアーとして定着出来るかどうかであろう。中でも、1年間の基本料金無料をキャンペーンとして提供して来たRakuten UN-LIMITプランは、2020年4月から2021年4月頭までに申込んだ顧客に適用されて来ており、基本無料だから許容されて来た繋がりの悪さも、契約を継続するかどうかに大きく影響することになろう。また、au回線を利用してのローミングサービス提供を、2023年3月末までに順次終了する計画となっている地域も多く、これも契約の継続可否に影響するだろう。

まさに、楽天グループにとっては、モバイル事業で三大キャリアと比肩できるようになるかどうかの瀬戸際にあり、失敗すれば、送料無料基準の強制化で強い反発を受け元々薄利の楽天市場、特典改悪の著しい楽天カードなど、決して好意的な受け止められ方をしていない他事業への影響を無視し得ない。果たして、10年以上の超長期の今回の起債が適切なのかどうか。超長期年限になると、三木谷社長の後継問題も考えねばならない時間帯に入る。格付け対比での利回りは厚いように見えるが、一般的認識よりさらに慎重なスタンスで構えるのが適切ではなかろうか。1%を越える高い利回りは、何らかの棘(とげ)を含んでいると考えておいた方が良いだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/15~11/19

やや発行体業種に偏りがあるものの、漸く民間企業の社債発行が増えてきた。前の週と同様に、公的セクターと電力、SDGs債という三つのキーワードでかなり多くが説明できてしまう。

公的セクターとしては、地方公共団体金融機構がFLIPに基づく5年債を60億円募集した他、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が10年債150億円および20年債90億円の財投機関債を募集し、更に、東日本高速道路が5年債200億円・7年債200億円・10年債300億円の計700億円の社債を募集した。東日本高速道路の募集する社債は、財政投融資計画と直接リンクしないため社債に分類されるものの、日本高速道路保有・債務返済機構の併存的債務引受条項が付されており、結局は財投機関債発行団体である日本高速道路保有・債務返済機構の信用リスクとなるため、実質的には財投機関債と同程度の信用力を有すると考えられることから、公的セクターに含めて扱われることに異論はないだろう。公的セクターの募集する債券は、いずれも国債対比のスプレッドは薄い。

この鉄道建設・運輸施設整備支援機構の募集した債券は、いずれもサステナビリティボンドとしての認証を得ており、それ以外にも、荒川化学工業の5年債50億円およびイオンモールの募集した債券のうち5年債200億円が、サステナビリティリンクボンドとされている。サステナビリティリンクボンドは、いずれも、予め設定されたサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)を未達成に終わった場合、所定(元本額の0.2%もしくは0.3%相当)の寄付を発行体が約束するものである。サステナビリティリンクボンドの形態は、概ねSPT未達の場合に発行体が寄付を約束する形のものが定番になって来たようだ。寄付を実行しなかった場合の具体的なサンクションは不明であるが、資本市場における信用を失墜することになるのだろう。投資家は発行体に対してサステナビリティを意識した経営の実行を求めるものの、固定利付である債券の特性を考えると、SPT未達の場合にクーポンがステップアップする等投資家に直接のメリットがなくても構わない。むしろ管理上は、クーポンや償還元本が購入当初から変更される方が、面倒かもしれない。

最後の特徴が電力関連の起債である。前週に中部電力が半端な17年債を募集していたが、この週は東北電力が10年債200億円および20年債100億円を募集し、一般担保条項を付すことができないものの、火力発電、再生可能エネルギー、ガス・LNGを事業とし、東京電力フュエル&パワーと中部電力が半分ずつ出資している株式会社JERAが5年債400億円及び10年債300億円を募集している。50%ずつの出資というだけであれば、親会社から切り離し子会社だけ倒産処理を行うことが法的には可能かもしれないが、東京電力ホールディングス及び中部電力の傘下にある全火力発電所を保有し運営している発電会社であるために、JERAなくして電力の送電も小売も成り立たない。JERAの格付けは、R&IでA+格と中部電力と同水準であり、JCRでAA-格と中部電力を1ノッチ下回る。なお、東京電力フュエル&パワーは格付けを取得していないが、持株会社である東京電力ホールディングスの100%子会社であり、持株会社の格付けはR&IのA-格及びJCRのA格である。基本的に信用力が高い方の親会社に引っ張られていると見て良いだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:11/8~11/12

引続き、民間企業による社債発行の動きは鈍い。起債観測は色々と聞こえて来ているので、発行体側の資金調達意欲が低下していることはなく、また、米国の金利上昇懸念はあるものの、日本において日本銀行が管理している10年以内の金利水準に見直しは想定されないため、急いで資金調達に走る動きがないものと考えられる。決算発表を乗越え、12月に向けて徐々に社債等の募集が増えて来るものと考えられる。この週では、淡々と公的セクターによる債券募集は続く中で、それ以外の民間企業による社債もようやく募集が始まっている。

まず、公共セクターでは、前週に引続き、地方公共団体金融機構が債券を募集している。前週の30年債は年間の募集回数が限られた年限であり、この週に募集されたのは、同様に募集回数の少ない5年債150億円と毎月募集される10年債300億円である。「スーパー地方債」とも呼ばれる同機構債は、地方公共団体の減債殺基金や地方公務員関連の共済組合等安定的な消化先が少なくなく、デフォルトとなる可能性が低いことから持ち切り運用に適した対象と考えられている。純粋な財投機関債としては、住宅金融支援機構が10年債300億円・15年債100億円・20年債150億円・30年債300億円の計850億円を募集している。20年債のみグリーンボンドの認証を得ているが、機構の果たす役割や期待されるミッションを考えると、認定を取って全体をソーシャルボンドとすることに違和感はないだろう。既に、都市再生機構は2020年8月のソーシャルファイナンス認定取得以降の起債をソーシャルボンドとしており、見習っても良いのではないか。

公共セクターと民間との中間的な発行体で社債を募集したのが、東京臨海高速鉄道である。お台場へのアクセスを提供する第三セクターの鉄道運営会社であり、東京都の出資比率は91.32%とほとんどで、他に品川区も1.77%を保有しているために、実質的に地方債に近い位置づけと考えて良いだろう。もっとも株式会社形態であるために、純粋な地方債とは言えないし、東京都や品川区以外にJR東日本や銀行・保険会社等民間の出資も受けて入れている。それでも、信用力という意味では十分に高い水準にあり、格付けはJCRのAA格と高い。その他に社債を募集したのが、中部電力の17年債120億円というレア年限であり、三井住友海上火災保険の5年債は1,500億円と巨額の募集であった。他に社債等の募集が多くないため、こういった起債が可能になったものだろう。

なお、日本の証券市場で大きなシェアを占めているSMBC日興証券が相場操縦の疑いで証券取引等監視委員会から調査されていることが明らかになり、主幹事や引受証券から外す動きが見られはじめている。業務に関連する不祥事を確認された場合に、投資家は暫時当該会社との取引を見送るのが通例であり、発行体側も同様の行動に出るのは当然だろう。現状では、罪状等が確定しているものではないが、報道されたことで相当程度何らかの処分が下される可能性は高い。刑事訴訟手続きのような「疑わしきは容疑者の利益に」というものではなく、法令違反等のなかったことが確認されたり、処分後に業務改善計画が受領されたりしなければ、当面、取引を自粛することが一般的になるだろう。考えてみれば、金融商品取引法違反であれば、当然、ガバナンスの問題を懸念されるのであり、同社がいわゆるESG関連の債券募集に従事するのは、ブラックユーモアに見えて来るだろう。