国内起債市場を斬る 起債評価:5/29~6/2

一つ前の週は、三菱UFJフィナンシャルグループのAT1債およびTLAC債の総計5,700億円という巨額の募集があったために社債等の金額は大きく膨らんでいたが、この週も起債の本数や発行体の多様さは負けていない。月末月初というタイミングのため、公共セクターの動きは乏しいが、その分、民間企業が様々な起債を行ったと評して良いだろう。

特徴的な起債群を幾つかにまとめてみると、まず、相変わらず金融セクターの起債が目立つことを指摘できる。銀行に限っても、三井住友信託銀行の10年債100億円、りそなホールディングスの5年債250億円、三井住友フィナンシャルグループのTLAC債計1,300億円がある。更に、SBIホールディングスが中期債を計1,500億円募集している他、ノンバンクでもクレディセゾンが5年債300億円、芙蓉総合リースが3年債と5年債各200億円、NECキャピタルソリューションが3年債100億円、みずほリースが3年債と7年債各100億円と本数が多く、かき集めた全体の金額は決して小さくはない。

引き続き、電力関連は多いが、やや小粒の案件が多かったか。再生可能エネルギーを売りにした小売業者のイーレックスは60億円と小額を募集し、東北電力と四国電力が100億円規模の個人投資家向け社債を条件決定している。また、原発問題の影響が少ない沖縄電力も5年債100億円を募集している。

不動産も、三井不動産が5年債と10年債で計1,300億円を募集し、住友不動産も7年債と10年債で300億円を募集している。両社の案件はいずれもグリーンボンドの認定を取得している。2022年度まではノンバンクによるグリーンボンドの募集も散見されていたが、分別した資金管理と情報開示を求められる手間などから、こうした不動産関連の銘柄の方がグリーンボンドとしてはわかり易いのではないか。両社とも都心の案件関連が、具体的な資金使途として予定されている。

起債スケジュールが進んだ頃におもむろに動き出すのが、メーカーである。この週も、サッポロホールディングスの5年債200億円、AGC(2018年に旭硝子株式会社から社名変更)の10年債300億円、トプコン(1989年に東京光学機械株式会社から変更)の3年債および5年債各100億円、YKKの5年債200億円、神戸製鋼所の5年債および10年債の計200億円と、バラエティに富んだ発行体の動きが確認されている。その他の業種としては、建設に区分される積水ハウスが5年債300億円、情報・通信業のマクロミルが3年債81億円と5年債19億円の計100億円と、多様な発行体が観察されており、週後半に募集された本数の多さは際立っている。

6月後半の株主総会シーズンに入るまで、社債等を募集する動きは続くものと予想されており、この週は不動産の限定的なグリーンボンドしか確認されなかったが、さらにグリーンボンドやサステナビリティボンド等の募集が多く見られる予定である。これらのSDGs債については、発行体も投資家も関与したことを表明するところに意義があるため、事前に起債観測を報じられることが多い。そのため、起債観測の多くがSDGs債で占められる傾向になるものと推定される。

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