国内起債市場を斬る 起債評価:7/25~7/29

引続き、起債案件の動きは少ない。こうなると、特定の金曜日に案件を集中させなければ良かったのではないかとすら思えてしまう。しかし、皆の起債が一日に集中すると、右見て、左見て妥当な水準を見出し、あとは一種のノリノリで進められる方が無難と感じるのかもしれない。引受証券も投資家も、ネチネチと細かく条件を吟味できる時間がないというのも実態なのである。ある程度の案件がコンスタントに募集されるのが理想ではあるが、決算発表が四半期毎になり、GWや夏休み、上期末に年末と、募集に不適切な時間帯を考えると、案件の集中もやむを得ないのだろう。

発行金額では、損害保険ジャパン日本興亜の劣後債が大きい。そもそも社名にジャパンと日本が並ぶ、何とも不自然な命名の合併会社であるが、これは三菱UFJフィナンシャルグループという持株会社名でも同様で、UFJのFはフィナンシャルであり(設立時の由来)、和製英語で誤魔化した合併新会社命名の悲しいサガなのであろう。損害保険ジャパン日本興亜については、源流の主要損保の一つに日本火災があり、一方で安田火災が日産火災等の統合後に損害保険ジャパンという社名にしたため、意地でも日本を削れないのであろう。この点だけは、「みずほ」の取組みがスマートに見える。
劣後債は、10年経過後の期限前償還が可能な個人向け30年債と機関投資家向け60年債である。保険会社に公的資金が投入できるようになっており、利払繰延条項の適用はあるかもしれないが、劣後特約が効力を持つ可能性はあまり高くないのだろう。期限前償還を前提にし10年債で0.84%クーポンと理解して投資判断を行うのが一般的であろうが、オプションプレミアムの存在を考えると、その判断は誤りである。

一方で、日本政策金融公庫の2年物財投機関債が、極限に近い発行条件で600億円募集されている。既に国債利回りがマイナスに沈んで久しい2年であるが、新発一般債はまだマイナス利回りにならない。クーポンは0.001%とシステム上の下限に設定されている一方、発行単価は100.001円とオーバーパーになっているのである。この条件を応用すると、オーバーパーの幅を拡大することで、マイナス利回りの債券を募集することは十分可能である。もっとも機関投資家が一般債をマイナス利回りまで突っ込んで購入しないようならば、引受証券は更なる利回り低下局面で売り逃げるか、引受手数料を吐き出して投資利回りをプラスにする必要がある。前者は相場変動のリスクを負う行為であって、とことん在庫リスクを嫌う証券会社では容易でない。後者も正当な収益である引受手数料の放棄であり、株主に対する受託者責任の観点からは問題のある行動とされ、日頃からデッド・オリジネーションのバンカーの弱い立場を、一層脆弱にしてしまうことになる。マイナス金利の長期化は、ますます奥深い問題を雪だるま式に抱え込んでいるのである。

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