国内起債市場を斬る 起債評価:8/1~8/5

梅雨が明け十日特有の酷暑となった起債市場は、動きが鈍い。旧盆の休みがあることや、6月末決算の発表等もあり、学校も夏休みに入ったことで、起債市場全般はお休みに近いモードにある。それでも、公的な発行体は5日の金曜日に債券を募集しているのだから、なかなか息が抜けない。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、3本立ての財投機関債を募集している。4年物100億円、10年物80億円、20年物120億円の計300億円である。例年7月最後の週が募集のタイミングであったと記憶しているのだが、今年は8月に入ってからの募集となったようだ。日銀の金融政策決定会合による市場の混乱発生を敬遠したのかもしれない。4年債は相変わらず0.001%と低クーポンであるが、10年債は0.06%であり、20年債は0.327%クーポンとなっている。7月に募集された財投機関債等と比較してみると、12日に募集された日本政策投資銀行や地方公共団体金融機構の10年債は0.06%クーポンで同じであり、同一水準が維持されている。計算上の国債利回り対比のスプレッドは低下したと言って良いだろう。一方、20年債は12日に地方公共団体金融機構が0.18%クーポンで募集しており、利回りの絶対水準も向上している。これは、7月前半に見られた超長期国債利回りの低下が、その後反転したことに影響されたものと見ることができる。

もう一つの発行体が成田国際空港である。募集したのは10年債50億円と20年債100億円である。株式会社形態を取り、既に財政投融資計画から外れている発行体であることから、100%の株主が政府からなる特殊な株式会社によって発行された社債であっても、リスクウェイトの差が考慮されてしまう。10年債のクーポンは0.105%で、20年債のクーポンは0.427%と、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の財投機関債を大きく上回る水準に設定されている。自己資本比率規制に基づくリスクウェイトを意識しなくて済む投資家であれば、全額政府出資の成田国際空港の発行する社債の方が利回りが高いことに魅力を感じるだろう。しかし、将来における民営化や運営の変更等についての検討は必要である。公的セクターに属するからと言って、投資の前提にある信用力分析は必要であり、公的機関の場合には、政策変更による影響も念頭に置いておかなければならない。

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