国内起債市場を斬る 起債評価:10/24~10/28

引続き、起債市場の動きは鈍い。これは、決して発行体や引受証券が消極的だったからではない。もし投資家に強い資金の投資需要があるなら、数少ない案件に人気が集中して、需要過多になるはずである。ところが、この週の起債案件は、総じて良好な売行きとはならなかったのである。

事業債として募集されたのは2案件のみで、クレディセゾンと三井住友ファイナンス&リースといういずれもノンバンクが、5年債を100億円ずつ募集したのである。いずれもR&Iの格付けはA+格で並んでいるが、クーポンはクレディセゾンの0.08%に対して、三井住友ファイナンス&リースは0.06%と差が付いている。後者は、三井住友銀行系ノンバンクを統合した会社であり、メガバンクとの距離感の近さが評価されたものである。

クレディセゾンは、前の週に15年債を募集し、その直後であったために売行きが不調になったと考えられなくもないが、もう一つの要素としては、5年という年限の問題があるのかもしれない。かつては、5年は事業債の募集年限としては、中心的な存在であった。一般的に企業の中期計画が3~5年の期間で策定されることもあって、投資年限として望ましい長さだったのである。加えて、投資家の中でも、損害保険会社や年金にとっては、もっとも馴染み易い年限と考えられていたのである。

ところが、最近の金融環境では、5年はもっとも売れない起債年限になり下がっているのである。前の週に募集されたクレディセゾン債のように、超長期年限であれば、ある程度の水準の利回りを得られるため、投資家は手を伸ばし易い。クレディセゾンの15年債は0.77%クーポンと、5年債の9倍を上回る水準だったのである。いかんせん、5年の国債利回りがマイナス水準に沈み込んでいるために、投資妙味の乏しい利回りしか付されないのである。クレディセゾンも、事前に証券会社から年限によって社債の売行きが異なる結果になることを聞かされていたと想像できるが、ここまで顕著な差となることは想定しなかったのではなかろうか。

これが3年債で、すぐにでも日銀による社債買い入れの対象となることが想定されるのであれば、3年債は飛ぶように消化された可能性が高い。実際に、この10月の起債においても、トヨタファイナンスや日産フィナンシャルサービスの3年債と5年債の二本立ての募集で、いずれも3年債の方が良好に消化されたのは記憶にも新しい。結局のところ、今は日銀のオペによって人為的に作られたプライマリー市場であって、5年債より3年債が好まれる環境は、当面続くのであろう。

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