国内起債市場を斬る 起債評価:12/5~12/9

12月の起債可能期間は短い。ほとんどは12日の週央までで終わってしまう。条件決定と募集からおよそ1週間後が払込と考えると、必然的に12日の週がほぼ最後になる。しかも、今年は23日の金曜日は天皇誕生日で祝日であり、三連休明けは消化試合状態となることが予想される。当社に一番近い大手投資銀行の役員も、12日から来年まで休暇に入ってしまった。外資系機関投資家や引受業者は、クリスチャンでなくてもクリスマス休暇はとり、年末年始の正月休に入るので、今年の起債市場もラストスパートである。

前週ほど金曜日に募集の集中した感はないが、本数では9日の金曜日が多く、7日の水曜日と8日の木曜日に案件が分散したため、金曜日の突出感が薄れているだけであろう。起債に見られる特徴は、引続き、超長期債とレア物を中心とした中期債の募集であろう。トランプ・ショックの影響から長期金利の上昇が続いており、10年国債利回りが安定してプラスになった他、超長期国債の利回りも上昇基調にある。国債対比でのスプレッドプライシングを行うのか、マイナス金利下のような絶対金利でのプライシングを行うのか。国債対比のスプレッドの居所が探り難くなっているために、プライシングは決して容易でないが、投資家の購入意欲が引続き高いことに支えられているようである。

超長期債の顔触れとしては、公共セクターを除くと、10年債(100億)の他に20年債(100億)及び40年債(200億)を募集したJR西日本、ノンバンクなのに20年債を募集した三菱UFJリース(100億;R&I:A+/JCR:AA-)、10年債(100億)とともに20年債(100億)を募集した九州電力、不動産業でありながら15年債(100億)を募集したダイビル(JCR:A)、一般担保付で10年債(100億)と20年債(100億)を募集した成田国際空港、そして5年債(100億)と20年債(100億)というダンベルポジションの起債を行った阪急阪神ホールディングス(R&I:A/JCR:A+)がある。伝統的に超長期の起債に相応しいのは、鉄道や電力といったところであるが、東日本大震災で信頼を失った電力の超長期債は、ノンバンクや不動産と同じように、十分なスプレッドが付されているかどうかの検証が必須である。

レア物の起債としては、大陽日酸の5年債(第13回150億;R&I:A/JCR:A)及び10年債(第14回150億))や、三和ホールディングス10年債(第13回100億;JCR:A+)、愛知製鋼5年債(第3回200億;JCR:A)、荒川化学工業(第3回50億;JCR:A-)、東急不動産ホールディングス5年債(第8回100億;JCR:A-)、SCSK5年債(第5回100億;JCR:A)、宇部興産10年債(第12回100億;R&I:A-/JCR:A-)、エクセディ10年債(第4回100億;JCR;A+)といったところがある。また、オリエントコーポレーション(R&I:BBB+/JCR:A-)は、3年債・5年債・7年債(各年限100億)と小刻みな年限分割で起債を行っており、回号も第10回から第12回と若い。前述の三菱UFJリースの20年債よりも、よほど投資妙味は高いかもしれない。これらのほとんどは順調に消化されたようであるが、年限と利回りのバランスを失した銘柄の一部で苦戦した事例もあったようだ。

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